嫉妬
ちょうどいい感じで煮物の味が整った時
ピンポーン
玄関のチャイムがなった。
「はーい」
ドアをあけると新藤が立っていた。
「ごめん。携帯に電話したけどでなかったから。ここまできちゃった」
「携帯?!あっ!カバンの中に入れっぱなしだ」
慌てる紗世を見てつい笑ってしまう。
「飯塚ってさ。完璧そうなのに何か抜けてるんだよな。そこがかわいいけど」
「ごめんなさい。普通連絡くるってわかってたら携帯近くに置いておきますよね」
「いいよ。ごはんどうする?車できたからどこでもいけるけど」
「うーん。もし嫌じゃなかったら家で食べませんか?明日の朝ごはんをと思って買い出しにいったらついつい色々欲しくなっちゃって。こっちの野菜もあっちのお肉も〜って買い込んじゃったの。車は家の前の駐車場にとめて大丈夫です。管理人さんにとめていいよって言われてるから!」
「じゃ、お言葉に甘えて。いま車まわしてくるよ」
5分くらいして新藤が戻ってきた。
「家けっこう広いね」
「妹が一緒に住んでるの。いまはちょっと留守なんだけど」
食卓にずらーっと料理が並ぶ。
「お口にあうかわかりませんが。今日の自信作はこれ!この豚の角煮です!先月テレビショッピングで買った鍋で作ったの!これがなかなかの優れものでね…」
にこにこ話す紗世を見て、新藤が笑う。
「なに?なんかおかしいですか?」
「会社で会うのとやっぱり違うね。ちょっと嬉しい。じゃあ…いただきます」
ドキドキしながら見ている紗世ににっこり笑って
「おいしいよ」
と言う。
一通り料理を堪能したあとに日本茶がでてきた。
「よかったらどうぞ」
「いたれりつくせりだな」
紗世は洗いものをしながら、彼はお茶を飲みながらたわいもない会話が続いていた。政治の話とか最近会った事件の話とか。それから会社のこと…。
突然会話がとまり紗世が息をのんで話はじめた。
「あの…新藤さん。わたし今日時田さんと話してきました。一緒に札幌へは行けないって伝えてきました」
「そう…」
なぜかこちらを見ようとしない新藤の近くまでいき
「どうしたの?」
と覗きこんだその時…
ガバッと抱きつかれた。
「新藤さん?!」
びっくりして反射的に腕から逃れようとしたが力がどんどん強くなっていってそれを許さない。
「ちょっと痛い…」
「会議室で飯塚が時田さんと一緒にいるとこ見て正直嫉妬した。付き合っているふたりにしかだせない雰囲気がでてる気がして…落ち着かなかった。ちゃんとケジメつけてきてくれたってわかってる。でもどこかでまだ彼のこと好きなんじゃないかって。俺、格好悪いな。ごめん。でもそれくらい飯塚に惚れてる。初めて会った時からずっと飯塚だけ見てる。だから飯塚も俺のこと見て…」
そっと優しく唇が重なり、次第に激しくなっていく。
パッと顔を離した彼女の顎をくいっもちあげ、もう一度キスする。
「紗世…好きだよ」
ぎゅっと抱きしめた。