新たな誘惑
「めずらしいお客さんだな。女の子に待たれるのは悪くないけどね!で、何か俺に用事?」
新藤が会社に戻ると外で涼子が自分を待っていた。
「ここで話すのもなんだからどこかゆっくり話せるところにでもいくか。お腹すいてる?近くにうまい寿司屋があるんだ」
慣れた感じで車を手配する。
「素敵なお店…」
素直な感想だった。さすが生まれながらのお金持ちは違うなと涼子は感心した。
「で、俺を待ってた理由は?」
王子さまの笑顔で問いかける。
「無理を承知でお願いします。わたしを新藤さんの会社で雇ってもらえませんか?」
「どうしてうちの会社?俺は専務だけど人事のことに関わってないから」
「そこをなんとかお願いできませんか?わたし新藤さんと働きたいんです」
「ごめん。力になれなくて。どうしてもっていうなら中途採用に応募して面接を勝ち抜いてもらうしかないな」
「そうですか。わかりました。無理言ってごめんなさい。わたし新藤さんが働いてるのを見てこういう人と働けたらなって思ったんです。憧れっていうか!」
「それはありがと。でもうちの会社はそんなに甘くないよ。努力しない人は採用しない」
涼子の眉がぴくりとあがる。
「わたしなんでもやります!努力しないだなんてひどい」
泣きそうな顔で新藤を見つめる。
「じゃあ。ひとつ質問するけど…どうして会社を辞めたの?」
涼子は思いきったように口をひらく。
「失恋です。大好きだった人に裏切られました。尊敬していた先輩に彼氏をとられました。顔を見るのがツライから辞めたんです」
我慢できないといった風に涙をこぼす。
「残念だけど俺に涙は通じないよ。それなりにモテてきたんで。女の涙にはなれてるんだ。いろんな人みてきたからね。嘘はすぐわかる」
「嘘だなんて…」
「あと品のない女の子はだめだな」
涼子は演技を続けようとしたが新藤相手にこれ以上は無駄だと判断した。
くすくす笑いながら話す。
「さすが新藤さん。王子さまは違いますねぇ。今日会いにきた本当の理由はあなたに会いたかったから。隠しても意味がなさそうだから単刀直入にいいます。わたしあなたとセックスがしたいの。あなたに興味があるの」
「へぇ」
「さっき言ったこと半分は本当よ。わたし失恋したの。 大嫌いな女から最愛の人をとってやろうと思ったけど失敗したの…。その女。なんでも持ってるんだもん。ひとつくらいわたしにくれないかなって思って」
「もらってどうするの?」
「別に」
「そういう生き方疲れない?キミの考えや行動にとやかく言うつもりはないけどこのままでは一生満たされないと思うよ」
「お説教?そんなの聞きたくない。わたしのことは放っておいてよ。いろんな男と付き合って何が悪いの?何もしらないお嬢さまに世間の厳しさを教えてあげるのは間違ってる?」
「さぁ?どうかな」
新藤のこのスマートな態度が涼子の心を火をつけた。
なんとしてでも。どんな手を使ってでもこの男を手に入れる。
涼子が再び動きだした。