決戦の金曜日
金曜日。
今日は新藤が紗世のオフィスで働く最後の日。
最後といってももう会社に顔をださないわけではない。取引先でもあるのでこれからも仕事で関わることはあるだろう。
朝から各部署に挨拶まわりをしている新藤をたくさんの女子社員が眺めていた。
王子さまの笑顔も今日で見納めだ。ここぞとばかりにプレゼントやら花束を渡している。
そんな中。ひとり紗世は別のことを考えていた。
時田のいう「大事な話」とはなんだろう。あのメールをもらってから毎日考えている。
大事な話というくらいだからこれからの2人についてだろう。
将来のことを話すのか。はたまた別れ話なのか。
涼子が突然会社を辞めることにしたこととの関係も気になる。時田に失恋したから会社を辞めるのかもしれないし…もしかしたら時田と結婚するから辞めるのかもしれない。
グルグル意味のないことを頭に浮かべては打ち消していた。
結局メールの返信もだせずにいた。
そうこうしている間に新藤が紗世たちの部署にも挨拶にやってきた。全ての人が笑顔で別れを惜しんでいる。つくづく上にたつのに向いている人だなと思う。才能や地位・人脈パーフェクトに揃っている。
紗世にも挨拶をしにきた。その時にさりげなく小さなかみ切れを渡される。そこにはレストランの場所と時間が書かれていて「仕事が終わったら駐車場で待ってる」というメモも一緒だった。
なんとなくスッキリしないまま仕事を終えて新藤との待ち合わせ場所へ走る。
新藤の車を見つけかけよって頭を下げた。
「新藤さん!ごめんなさい。わたしやっぱりいけません。中途半端なままであなたと食事にいくことはできません。彼に…時田さんに会ってきます。きちんとケジメつけてきます。だからごめんなさい」
精一杯の気持ちだった。自分の気持ちをごまかして食事にいくのは何だか違う気がしていた。
もう一度頭を下げ、時田のところへ急いだ。自分の気持ちを確かめるために。