デートの誘い
「堀田くんに聞いたの。涼子来月末に退社するんだって」
理子に誘われひさびさにイタリアンレストランにきていた。なすとツナのトマトソースパスタはいつ食べてもおいしい!
理子は続ける。
「どうやら好きだった人に完全にふられたらしいよ。ハッキリとは聞かなかったけど『もうこの会社にいる意味ない』って投げ捨てるように言ってたんだって。相当荒れてたみたいよ。まったく会社に何しにきてるんだか…」
男と聞いて紗世はドキっとした。涼子には常に恋人がいたし、恋人以外の人との恋の噂も消えたことは一度もなかったから時田のこととは限らない。それでももしかしてと思ってしまう。
「彼氏は1人だけど遊ぶ人はたくさんいる。男は遊んで良くて女はダメなんて誰が決めたの?わたしはそういうの我慢しない!」なんて自慢気に話していた涼子を見かけたことがある。
男の人には「寂しがり屋だからひとりでいられない」と言い方をかえて伝えるらしいが…。
時田も遊びのうちのひとりだったんだろうか。そう考えると胸が苦しい。
それとも本気で…?
考えても仕方のないことが頭の中をかけめぐる。
最近の悪いくせだ。良くないことばかり考えてしまう。
頭の中を答えがでない方程式がグルグル渦をまきはじめた時ちょうど良いタイミングで携帯がなった。
誰だろう?
カバンから携帯をとりだす。電話は新藤からだった。仕事のトラブルだろうか。
少し緊張して電話にでる。
「おつかれさま。いま大丈夫?」
新藤の明るく優しい声が聞こえてきた。
「実は仕事のことで用事があったわけじゃないんだ。俺と飯塚が一緒に仕事できるのも今週で最後だろ?だから最後の日…つまり金曜日に一緒に食事でもどうかなって思って」
「食事?!ですか」
少し戸惑う。
今まで時田以外の人と食事にでかけたことはない。だから普通に受けていいものかわからない。
でも…。
行ってみてもいいのかな。
彼だって女の人とよく出かけてるし。
「あの…金曜日大丈夫です」
紗世は素直にそう答えた。
帰り道。
再び携帯がなる。
今度はメールだ。
「今週の金曜日。あけておいて。大事な話があるから」
時田からだった。