真っ直ぐな気持ち
きのうはなかなか眠れなかった。
少し寝不足なまま電車に乗り込む。
新藤さんってわたしのこと好きだったんだ…?
きのうからボーっと考えている。
全く気づかなかったといったら嘘になる。何度かそう思わせるような行動や言動があった。
でも…わたしは…。
時田さんは昨日のわたしのメールを見てどう思ったかな。
プロポーズしてくれたのは新藤なのに…気づいたら時田のことばかり考えている自分がいる。
強くなるって決めたんじゃなかったっけ…。
新藤にキスされた時も真っ先に時田の顔が浮かんだ。
時田以外の人とキスしてしまったことが苦しかった。
「結婚してほしい」と言われた時も時田に言われたかった言葉だと思ってしまった。
吹っ切ったと思っていたが実際は全然じゃない…。
強くなりたいと思ったけどまだまだ足りなかったみたい。
会社にはすでに新藤がいた。
「おはよう」
いつもと変わらず挨拶してくる。
「おはようございます」
紗世もいつも通り挨拶を返す。目を見ることができなくて少し不自然になってしまう。
そんな紗世を昨日にもまして真っ直ぐ見つめる。
「昨日いったこと本気だから。すぐに答えをくれとは言わない。ゆっくり考えてみて」
まわりの目を気にすることなく真っ直ぐ自分の気持ちを伝えてくる新藤。
わたしは自分の気持ちに正直になれている?
紗世と新藤は出先から帰る車の中にいた…。
うつむきながら紗世が話はじめる。
「あの…。新藤さん!さっきの…。あれ?きのうのかな?結婚してほしいっていう…あれ…」
真っ赤になりながら一生懸命言葉を続ける。
「わたし…好きな人がいるんです。付き合っている人が。でも彼には他にも付き合ってる人がいて。諦めなきゃってわかってるけど…好きな気持ちは抑えられなくて。まだ忘れられなくて。だからごめんなさい」
くすっと笑い新藤が言う。
「飯塚は真面目だね。大丈夫だよ。すぐ好きになってもらおうなんて思ってないから。長期戦覚悟だよ。ただ可能性があるなら諦めたくないんだ。好きな気持ちはかえられないし。本当はまだ気持ち伝えるつもりなかったんだ。ただ飯塚があまりにキレイだったから我慢できなくなって。焦りすぎた。俺もう気持ち抑えるつもりないよ。頑張ってダメだったらその時は諦めるから!」
そう言い切る新藤の潔さが頼もしかった。
そして紗世の肩をポンとたたく。
「仕事は仕事だからさ。意識しないで今まで通り頑張ろう。このプロジェクト絶対成功させような」
その言葉を聞いて少し安心した。
紗世は大きく頷いた。