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伝えたい言葉

「突然会いたいなんて言ってごめんなさい」

紗世の声が緊張で震える。


わたしたち付き合ってるんだからー。


何度も何度も自分を励ました。

何度も何度も自分に言い聞かせた。それでもいつもどこかで彼に遠慮してしまう自分がいる。

時田が年上だからなのか会社の先輩だからなのか。もしくは真実を知るのがこわいからなのかはわからない。ただ踏み込んだ話ができない。


彼には友達や知り合いがたくさんいる。紗世の知らないところでいろんな人と繋がっている。そのせいかいつも予定が詰まっている。

頼られることが多い人だし、相談をもちかけられることもしばしばだ。

それは彼の魅力であって、紗世の好きなところでもある。

頭ではわかっているはず…だけれど不安に襲われる。

彼の友達や同僚に嫉妬しそうになることもある。


一度彼に尋ねたことがあった。

どうしていつもそんなに予定がいっぱいなのかと。好きな人となるべく一緒にいたいと思うわたしの気持ちは間違っているのかと…。

彼の答えは曖昧で紗世の望んでいるものではなかった。ただわかったのは彼がライフスタイルを変える気がないこと。


好きだから許してきたこと。好きだから我慢してきたこと。

たくさんあった。

でも今回だけは…。


聞かなきゃと思うほど焦って言葉に詰まる。


「時田さん…あの…うまく言えないんですけど…わたし時田さんが好きです。時田さんのこと信じています。だからこの間のこと説明してほしいんです。あの雨の日…どうして佐田さんと一緒だったのか聞きたいです」

やっとの思いで口にする。

時田が呆れたような少々めんどくさそうな口調で答える。

「あの日…家が近いからたまたま一緒にいただけだって言っただろう。何度も同じこと聞くな。お前は俺の言うことだけ信じていればいいんだよ…」

それっきり会話は途切れた。


対等じゃない立場。


それでももう一度勇気をだして口を開く。

「時田さん!わたし時田さんが信じてっていうなら信じます」

真剣な顔で時田を見つめる。

時田は今度は優しい口調でそっとささやいた。

「信じて大丈夫だよ」

紗世の肩の力が一気に抜ける。緊張がとけて笑顔になる。


「もう一度彼を信じよう」

そう決めて、ふと鏡に目をやる。そのよこに何か光るものがおいてあるのが見えた。

何だろう?


それは見覚えのあるダイヤのピアスだった。



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