風のにおい
「飯塚。大丈夫か?ワイン飲みすぎた?」
心配そうに覗き込む新藤に紗世は笑ってこたえる。
「大丈夫です。ワインがすごくおいしくて調子にのって飲んじゃっただけ。わたしお酒弱くないんですけど。ワインはちょっとダメで。飲みすぎるとカーって熱くなる。でも本当においしかったな」
風にあたりながら目をとじる紗世を見て新藤はドキリとした。
お酒が入っているせいかいつも以上に艶っぽい。
お店の中では理子と酒井がイイカンジで盛り上がっていた。
「紗世ちゃん本当に美人だね。彼氏いるのかな?」
「あ!酒井さん。まさか紗世ねらいですか?紗世はわたしがこの人ならって思う人にしか渡せませんから。紗世を好きになるならまずわたし!わたしを倒してからですよ」
お酒のせいだろうか。理子はいつもよりテンションが高い。
「理子ちゃんは本当に紗世ちゃんが好きなんだね。理子ちゃんは?彼氏いるの?」
酒井の思いもよらない質問に一気に酔いがさめる。
「わたし!?」
何かを思い出したかのようにグビグビとワインを飲み干した。
「彼氏はいません。好きな人がいたけど…もう好きじゃありません。男ってどうしてあんなにバカなの!彼も。時田さんも…」
「荒れてるねぇ。ストレスは女の子の敵だよ。今度おいしいものでも食べにいこうかっっ!」
酒井がにっこり笑う。
「ゆうすけ〜。眠たくなってきた。送って!!」
恵里がテラスへやってきた。甘えるようにしなだれかかる。
「わかったよ。送るよ。でも俺も飲んでるからタクシーになるよ」
「いいの。雄介に送ってもらいたいの。雄介が好き〜」
「酔っ払いすぎだよ」
少々呆れ気味だが、優しい笑顔で恵里をみつめる。
「恵里さんと本当に仲良しなんですね。恵里さんって新藤さんの恋人?」
紗世がくすっと笑いながら言う。
「ちがっ。恵里は幼なじみだよ」
新藤が焦ったように答える。
「ムキになってかわいいな。王子さまだって恋していいじゃないですか。わたしも好きな人いるよ」
「悪いけど俺、飯塚の好きな人の話は聞けないや。ごめん」
そういって手をふって店の中に入っていった。