仲間
「ゆうすけ。こっちこっち!」
新藤の腕をとり、自分の席の隣に座らせる。
「もう!30分も待ったんだからね。お腹ぺこぺこだよ」
恵里が拗ねたような顔でふくれる。
恵里の頭をくしゃっとして謝る。
「恵里ごめん。みんなもごめんな」
学生時代の友人たちとの飲み会。忙しい合間をぬって今でも月に数回行われていた。
おいしいものを食べて飲んで、たわいもない話をして。
仕事が忙しい新藤にとってやすらげる時間であった。
「あ!月下。婚約おめでとう。奈々ちゃんもおめでとう」
新藤は持ってきたピンクの花束をそっと手渡す。
幼稚舎からの親友・月下峻が来月結婚することになった。
相手の奈々は新藤の会社の受付で、2人は新藤の紹介で付き合いだした。
「おめでとうございまー」
恵里はヴィンテージもののワインをプレゼントする。
せっかくだからと恵里のワインをあけて乾杯することになった。
いいカンジで酔っ払ってきた月下が新藤の肩に手をまわす。
「雄介〜。お前は結婚しないのか?いつまでも独りってわけにいかないだろ。恵里ちゃんと結婚しちゃえよ」
「結婚しちゃおうかっ!ゆうすけ」
ふざけて腕をからめる恵里を冷静に見つめる。
「恵里は俺にとって今までもこれからも妹みたいなものだよ。恵里は好きな人と幸せにならなきゃ」
恵里が不満いっぱいの顔でつぶやく。
「つまんないの」
「あれ?新藤さん」
ちょうどいま入ってきた客に目をやるとそこに理子がたっていた。
「お!理子ちゃん。ごはん?ひとり?」
「いえ。あ!きたきた」
「理子。待ってってば!あー疲れた」
息をきらしてお店に入ってきたのは紗世だった。
いつも会社で会う時とは印象がまるで違う。
着ている服のせいだろうか。さわやかなブルーのワンピースに白いミュール。
髪もアップにしている。
店の空気が一瞬とまる。
「うわ〜。美人」
月下が思わず口にだす。
新藤はひたすら紗世を見つめていた。