表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/96

甘い誘惑

「しんどうさぁん。これみていただけます?」

甘ったるい声がオフィスに響く。

涼子から資料を受け取った新藤はその場でぱっと目を通す。

「企画書?明日までに見ておくよ。ありがとう」

できればもっと新藤と話していたかった。

が、いまは仕事がつまっているようでものすごく忙しそうだ。今回は諦めることにした。だが、決して最後の一言は忘れない。

新藤の肩にそっと両手をそえてささやいた。

「おつかれですね?大丈夫ですか?仕事をしてる男の人ってかっこいいけど…ちょっと心配だな」

覗きこむような形で話しかけてくる。

「じゃあ、企画書お願いしますね」

涼子が怪しく微笑む。

「なるほどね」

新藤がにやっと笑った。


涼子に言われるまで気づかなかったが仕事に熱中してランチも忘れていた。

「コーヒーでも飲むか」

席をたち、自動販売機に向かう。


佐田涼子か…。

彼女は確かに魅力的だ。

ものすごく美人だというわけではないが独特なオーラがある。そのオーラをひとことでいうと。

「エロス」

自分はハマるまい、だまされまいと思っている人ほどはまってしまう。

そんな蟻地獄のようなあぶなさをもっている。


新藤がそんなことを考えながら歩いていると紗世が目に入った。

紗世は涼子とは正反対かもしれない。

彼女も独特のオーラを持っている。まわりのもの全てを清めてしまうようなそんなオーラ。

涼子のそれに対して紗世のは

「清純」

といったところか。

彼女は花のように美しく、そして汚れない。


ハラハラハラ。

大量の資料を運んでいた彼女が資料を撒き散らしている。

焦って集めようとすると余計に散っていく。その姿が妙にかわいい。

「意外とドジだな」

くすくす笑いながら彼女のもとへ駆け寄ろうとした瞬間。新藤より先に彼女のもとへ走った男がいた。

「何やってるんだよ」

彼女の頭をコツンとたたいて、彼女を手伝う。

「ごめんなさい。ありがとう」

新藤が見たことのない少女のような笑顔で紗世が微笑んでいる。

あんな顔で笑うんだ…。

そのとき、彼女を泣かせた男は時田だったんだと新藤は確信した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ