告白
「部長に許可はもらったから。支度ができたらデザイナーにあいにいくよ」
新藤の突然の命令に紗世がかたまる。
「え?あの…。どうしてわたしが?」
「飯塚さんはこの会社の秘書だよね?ここの会社はいま俺と仕事をしている。だからキミは俺の秘書でもある!それにキミはなかなかセンスがいいみたいだから」
新藤が男らしくびしっと言い切った。
「あの…。でも。じゃあ、普段やっているわたしの仕事は誰が?引き継ぎも何もしていません。わたし行けません。申し訳ありません」
紗世も自分の意見を曲げない。
新藤が困ったように笑う。
「そういうとこちょっとかわいくないなぁ。もっと甘え上手にならなきゃ。男は甘えてくれた方がうれしいんだよ」
紗世の顔が赤く染まる。新藤が何のことを言っているのかわからない。今の紗世の態度を見て何げなく言ったひとことなのかもしれない…。
でももしかしたらあの日の…あの雨の日のことを言っているのかもしれない。
時田のことを誰かに噂で聞いたんだろうか。紗世は理子にしか話していないが涼子が誰かに話して…それが新藤に伝わったのかも。
突然いろんなことが頭を駆けめぐる。
考えても仕方のないことなのに。
「ごめんなさい」
その場から立ち去ろうとする紗世の腕を新藤は強引につかまえた。
「キミを連れていくことは先週部長に言った。仕事のスケジュールの心配はないよ。だからもう逃げないで」
新藤の目があまりに真剣で紗世はその場から動けなくなってしまった。
「やっとつかまえた」
新藤が紗世を抱きしめた。