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世界に一つの魔宝石を ~ハンドメイド作家と異世界の魔法使い~  作者: 采火
サンライズ・サンキャッチャー

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閑話*文化祭の楽しみ方

 年に一回の文化祭。

 夏休み前から準備を始めて、夏休み明けもがっつり準備をするうちの高校の文化祭は結構規模が大きいほうだとか。


 文化祭本番は土日含めて三日間あるし、外部の人もくるからそりゃ気合も入るよね! ってことで。


「ラチイさん、他にどこか行きたいところある?」

「ふむ……せっかくなので展示は全部めぐってみたいですね。ステージ発表も見たいんですが、見始めたらずっと見てしまいそうな出し物ばかりで、迷ってしまいます」


 生徒会が配布している文化祭のリーフレットを見ながら目を細めるラチイさん。日本の学生のこういう催しは初めてだそうで、興味は色々と惹かれているみたい!


 本気で迷っている様子のラチイさんに、それじゃあと助け舟を出してみる。


「このまま北舎を上まで見て、連絡通路を通って南舎行こっか。時間あれば体育館のステージを見に行こう!」

「この武道場のけいおんライブというのは?」

「軽音部のライブ! これも行こっか」


 あれもこれも気になってしょうがないらしいラチイさん。ふふふ、私がラチイさんを案内してあげられるなんて、わくわくしちゃうね!


 というわけで、文化祭巡りスタート!




◯科学部のスライム体験(in化学実験室)


 北舎の二階にある科学部では、スライム作り体験ができるみたい。


 ラチイさんが日本にもスライムがいるんですね? と興味をひかれたみたいなので、せっかくなのでスライムを作ってみることに。


 ただ、初手からラチイさんと私とでスライムの齟齬があったみたいで、受付で材料をもらったラチイさんは首をしきりにかしげ始めちゃった。


「スライムを……作る?」

「そうだよ」

「狩ったのを見るのではなく?」

「違うよ?」

「スライムを交配させるのではなく?」

「それも違うよ!?」


 そもそも日本のスライムは生き物じゃないです!


 空いているテーブルに行くと、科学部員の男子生徒が材料から道具から、懇切丁寧に解説してくれた。で、手順通りに材料をビーカーにいれて、ぐるぐる混ぜて。


 途中、着色と言われたラチイさんが魔力をぶちこもうとしたのを阻止しつつ、青色の絵の具をビーカーにいれたりとかして。


 綺麗な水色のスライムができました!


「すごいですね。たしかに触感はスライムに非常に近いです。人工スライムと言えるでしょう。これは乾燥させると固まるのでしょうか? 保存はどれくらいできるのでしょう?」

「固まりますが、雑菌が増殖するので長時間保存はあんまりよくないですねー」

「ふむ……材料や保存の手間を考えると野生のスライムを狩るほうが合理的……? あまり整形にも向いていないような……絵の具での着色で透明度も下がりますし」

「野生のスライム……?」


 科学部員の子が困ってる。

 お仕事モードに入っちゃったラチイさんの独り言を聞き流しながら、私はもにょもにょと水色スライムで遊ぶ。


 日本には野生のスライムなんていないからね。

 最近慣れてきちゃってたけど、ラチイさんはファンタジー世界の住人さんなのです。




◯図書委員の栞作り体験(in図書室)


 図書室ではラミネートを使った栞作り体験ができるみたい! 文豪作品とか、古典の名言がプリントされたカードに、マスキングテープや切り絵やペンで飾りつけをするんだって。


 記念になるから、ラチイさんと一枚作ってみることにしたんだけど。


「なんで平家物語?」

「智華さんの国の漢字ってかっこいいじゃないですか。なので、この漢字がたくさんあるものを」


 ラチイさんが選んだのは「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり」。


 なるほど、たしかにこの漢字の羅列は格好良い。わかる。わかるけれど、意外も意外すぎて、意外なチョイスでは?


「智華さんのはなんの作品のですか?」

「川端康成の『雪国』!」


 トンネルを抜けると雪国でしたの原文!


「意外ですね。智華さんならこちらを選ぶかと思ったのですが」


 差し出されたのは夏目漱石の『吾輩は猫である』。

 うん、ラチイさんの中での私のイメージがなんとなく伝わってきたよ!


 でもね、私がしたかったはですね……。

 私はペンを持つと、カードに書かれた雪国の文字にバッテンを書く。


 その下に文字を書き足して。


「私ならこう!」

「おや」


 ラチイさんが私の手もとをのぞき込んで、くすりと笑った。


 トンネルを抜けたら雪国じゃなくて、異世界のほうが楽しいでしょ!




◯お化け屋敷


「お化け屋敷……ですか」

「ラチイさんはお化け知ってる?」

「ええ。ラゼテジュにも、死者の魂に由来した幽霊騒動はありますからね。ただ、そのほとんどが妖精のいたずらですが」


 苦笑するラチイさんの手を引っ張りながら、私はそそくさとお化け屋敷の催しをしている教室の前を通り過ぎようとしたのだけれど。


「智華さん? 入らないんですか?」

「え?」

「入りませんか?」

「言い直した!」


 くっ、そんな良い笑顔で言われちゃうと断れないよぅ!

 しくしく泣きながらお化け屋敷の教室に入ることに。

 ええ、そうですとも。

 私、お化け屋敷ダメです!


「ひぎゃぁああ!」

「智華さん、悲鳴がひどい」

「△#〜〃\&ゞ@!!」

「日本の妖怪という文化は面白いですね」


 私が半泣きなのに、ラチイさんはじっくりとお化け役の生徒とにらめっこ! ちょっと狼男が困ってるよ!


「獣人も日本だと妖怪なんですか?」

「狼男は海外から入ってきたからちょっと違うと思うよ!」

「ではこちらの白い女性は?」

「貞子さんですかねこんばんはさようなら日本の古き良き伝統!」


 はやくっ、お願いだから先に行こう!?

 そう思って、暗くて視界もままならない中、ラチイさんの左手を取ったんだけど。


「この作り物も面白いですね。傘のお化けですか。日本の傘は紙でできているのですね」


 え、待って。

 ラチイさん、右手側の唐傘お化け見てるの?

 え、じゃあ、私が掴んだこの手は?

 見ちゃいけない。

 見ちゃいけないと、分かってるのに。


「ひぃやぁあああああああああああああ!?」


 顔面血だらけゾンビ男と至近距離ー!

 ラチイさんごめんねゆっくり見てきていいよ私は先に出ているからー!


 今日一番の悲鳴とともに、最速ダッシュでお化け屋敷を脱出しました。




◯コスプレ喫茶(in教室)


「智華さん、すみません。そんなにお化けが駄目だとは……」

「いや、うん、いいの、私も言わなかったし……」


 お化け屋敷から私が脱出した直後、ラチイさんも私を追いかけてすぐに出てきてくれた。うーん、せっかく楽しんでいたのに、ごめんね!


 メンタルダメージが大きくてぐったりしちゃったので、ラチイさんが近くにある喫茶店の教室に連れて行ってくれる。


 さすがラチイさん、喫茶店みたいに人がゆったりとするようなスペースになると、そのイケメンっぷりで視線を独り占めしちゃいますね! 一緒にいる私も見られているせいで、あんまり落ちつかないんですが!


「お待たせしました、アイスコーヒーとアイスココア、それからシフォンケーキになりま〜す」


 給仕してくれてるのはめちゃくちゃ際どいミニスカメイドさん! さすが文化祭! ここ、コスプレ喫茶でございます! あっちには執事コスプレのイケメンくんがいるけど、ラチイさんのせいで存在が霞んじゃったらしく、心が折れかけているのを裏方のクラスメートたちに慰められている模様!


「それにしてもここの女性の方々、露出が少し……」

「ラチイさん、セクハラ注意」

「えっ」


 日本はセクハラに厳しいからね!

 それに日本の女子高生は絶対領域を武器にしてるんです! 見えそうで見えない! ゆえの勝負!(なんの)


「ここを出たら、次はどこに行きましょうか」

「うーん、お腹空いてきたからな〜。あっ、外出て、校門のほうに並んでる屋台に行ってみるのは!」

「いいですよ。ではそうしましょうか」


 ラチイさんからオッケーでました!

 よーしそれならこのシフォンケーキもさくっと食べちゃおう!




◯屋台(in校門前)


 校門前にはいくつかのクラスや部活が屋台を出してる。


 食べ物がメインだけど、野球部の的あてとかバスケ部の水風船釣りみたいなのもちらほら!


「来たときもにぎやかだと思いましたが、いっそうにぎやかになってますね」

「お昼だからかなぁ? 教室の模擬店はカフェ系が多いから、がっつり食べたいならこっちに出てくるんだと思う!」


 私たちみたいにね!

 さぁて、何を食べようかなぁって思ったんですが、ラチイさんがふと足を止めた屋台がある。視線の先をみたら……あ、イカ焼きの店だ。


「ラチイさん、イカ焼き食べる?」

「イカ焼き……食欲をそそる香りなのですが、あの輪切りの食材と……あの細長いぷつぷつは一体何なのかと思いまして」

「あれがイカだよ。ぷつぷつはゲソって言ってイカの足」

「足? あの細い脚で歩くのですか?」


 もしかしてラチイさん、イカを食べたことないどころか、見たことない?


 私はポケットからスマホを出すと、ちょっとイカの画像検索をする。それをラチイさんに見せて。


「イカ焼き買う?」

「クラーケンじゃないですか!? 日本人はクラーケン食べるんですか!?」

「ちょ、ラチイさん、声大きい!」


 ラチイさんが大きな声を出すから視線集まってるんですけど!?


 うん、イカ焼きはやめようね、と屋台を素通り。ごめんね、イカ焼きの模擬店の人……!


 イカ焼き意外でがっつりとなると〜……あ、たこ焼きある! ちょうど人も並んでないからすぐ買えそう。


 というわけで、私はたこ焼きをゲット!

 ラチイさんはオム焼きそば買ってきたみたい。


「智華さんのそれは?」

「たこ焼きだよー」

「たこ……」


 タコにも首を傾げるラチイさん。

 うーん、デジャヴ!

 私はちょっと出店から離れた校舎の影に移動して、片手で画像検索。


「これがタコ……! オクトパスまで食べるのですか!?」

「日本人、ゲテモノ食いで有名な民族だからね」


 だいぶ日本に馴染んできたラチイさんでも、日本のゲテモノ食い文化はまだまだカルチャーショックだったようです。


 イカとかタコを食べる文化がない海外の国だと、宇宙人を見るみたいな顔されるって聞いたことあるしね!


「おいしいよ? イカ焼きと違って姿焼きじゃないし、タコもちょびっとしか入ってないし。食べてみる?」

「え……」


 そんな絶望したみたいな顔しなくても!


「まぁ、日本人の食文化は特殊なほうだからね〜。で、食べてみる?」

「……いただきます」


 無理にとは言わないけどって言う前に、私が差し出してたたこ焼きを一個、そのままパクリ。大きなひとくちに私の心臓が一瞬ばっくんしたけれど。


「っ、あっ、つ!」

「そりゃ熱いよ!? できたてだよ!?」


 できたてのたこ焼きの脅威を教えるの忘れてたー!

 あわあわと慌てて冷えたペットボトルのお茶をラチイさんに渡す。口もとを抑えていたラチイさんは一気にペットボトルを煽って。


「ち、智華さん、き、気をつけてください、それ、とても、あついです」

「知ってるから」


 大丈夫です、と言いながら、ラチイさんの飲みきったペットボトルを回収して口をつけてない私のペットボトルを差し出せば、大丈夫、と断られてしまった。


「熱かったですが……美味しいですね」

「でしょう? 日本人はたこ焼き好きだよ! 聖地は大阪!」


 グッジョブしながら笑えば、ラチイさんも笑って頷いてくれる。うんうん、なにごとも経験ということで!


 個人的にはラチイさんの普段見られない姿が見られて、ちょっと面白かったけどね!




◯軽音部のけいおんライブ!(in武道場)


 さて、腹ごなしがすんだらこのまま中庭を突っきって武道場へ! ラチイさんが気になっていた軽音部のライブをのぞきにきたよ!


「すごいにぎやかですね。この距離でも音が……」

「武道場入ったら、もっとすごいよー」


 もう武道場の入口でタイムテーブル表をもらう。ラチイさんに話しかけようとしても、音がすごすぎて話し声が全然聞こえない!


 とりあえず身振り手振りで中に入ろうと誘う。

 ベースの音にドラムの音。ギターの音にボーカルの声。音の暴力が全身を襲って、お腹の底をどしんをぶん殴ってくる。


 生バンドなんて初めて見るけどすっごい迫力!

 応援に来てる生徒たちもノリッノリでコールしてるし! これはわくわくが止まらない〜!


 ひとバンド分まるっとオンステージを楽しんで、ちょっと耳がしんどくなってきたあたりで外へ。


「すぅっごい音だったねー!」

「はー、圧巻されました。日本の音楽文化も少々嗜んでますが、生演奏というものは全然違いますね。あの迫力、実は名の知れた音楽家の方たちなのでしょうか」

「いや、高校生の部活バンドだよ?」


 歌ってたのは有名バンドのカバー曲だしね! 映画にも使われてたやつ!


 とはいえ、高校生バンドからメジャーデビューする人たちもいると聞くし。うちの高校からも、そういう人が出る可能性はなきにしもあらず?


「ぜひ、あの方たちには、もっと高みを目指してほしいですね」

「ラチイさん、なに目線なの〜」


 拳を握ってちょっと楽しそうに琥珀の瞳を煌めかせるラチイさん。

 こんなラチイさんも意外で、ちょっも面白くて笑っちゃった!






 そのあとも、ステージ発表見たり、屋台でおやつ食べたりして、ラチイさんを文化祭おもてなししたわけですが。


 一日目が終了したあと、帰りにラチイさんに本日のMVPをきいてみたところ。


「やはり、家庭部の作品展でしょうか。どれも素敵でしたが、やはり智華さんの作品が一番魅力的でしたね。俺の職人を見る目は確かだったようです」


 お世辞だって分かっていても嬉しくなっちゃって、どきどきが止まらなくなっちゃったのは、しょうがないよね?


 恥ずかしかったけど、ラチイさんを誘って良かった!


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