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世界に一つの魔宝石を ~ハンドメイド作家と異世界の魔法使い~  作者: 采火
サンライズ・サンキャッチャー

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52/105

ハンドメイド作家と魔法使いの制服

 つやつやしてて、きらきらしてて、太陽の光を反射してきらめく宝石は、いつだって私の胸をときめかす。


 ときめかすけど、そろそろ宝石を輝かせるその太陽の光は、落ちついてほしいかな!


 八月もラストスパート。

 夏の暑さがまだまだ残る中、新学期があける前からせっせと学校に通っては、私は文化祭に向けて最後の大詰めをしていましたとさ!


「布足りない〜! 誰か買い出し行こ〜!」

「使ってないミシンあるー?」

「あっつい! クーラー効いてないんじゃない、この部屋!」

「きゃー! 針どこ!? みんな動かないで怪我する〜!」


 文化祭に向けてみんなも作業に力が入ってる〜!


 今週が最後の夏休み。

 来週は始業式があって、さらにその再来週末には文化祭がある。


 自由にできる時間ももう少なくなってきて、まだ作品が仕上がっていない家庭科部員は大忙し!


「智華ちゃん、ビーズこぼれてる」

「あっ、麻理子ありがとー!」

「どういたしまして」


 麻理子が小さなビーズを拾って、パレットに戻してくれた。ありがと〜! こんなに小さくても、踏んづけたら痛いからね!


 私はビーズを透明なテグスに通す。二種類のビーズを細やかに通して、テグスを絡めてきゅっと引けば、ビーズのお花が一輪咲いた。うんうん、いい感じ!


 今年の文化祭、私は家庭科部の展示班になった。

 うちの部活、手芸部と料理部が混ざった部活だから、展示もステージ発表も模擬店もする欲張り仕様。とはいえ、私は派手な衣装も料理もしない、小さなアクセサリーがメインだから、展示版に自動振り分けされただけなんだけどね!


 その展示用の作品づくりも、ようやく本番作業にまでこぎつけたところ。白と金のビーズで土台を作って、メインは青いレジンで作った薔薇を添えたヘッドドレスを作るつもり。


 夏休み、色々とあって忙しかったからね!

 宿題もおおよそやっつけて、ようやく文化祭に向けて本腰いれているのです!


 麻理子と並んでちまちまとビーズをテグスに通していく。隣の麻理子も沢山の布にせっせと針を通している。


 騒がしい部室で、二人で黙々と作業してたんだけど。


「智華ちゃんは文化祭、誰とまわるの?」


 ふと、麻理子が声をかけてくる。

 次にテグスへ通すビーズを選んでいた私は、きょとんとした。


「考えてなかったや」

「コンドラチイさんとじゃないの?」

「ラチイさん!?」


 誘うなんて毛頭にもなかった!

 ビーズを選ぶ手を止めて、ちょっと考える。


 コンドラチイさんは、私がバイトでお世話になっている人。とってもかっこよくて、物腰も柔らかで、レディファーストで、紳士な人なんだけど……異世界の魔法使いさんなんだよね。


 そんな人を、いち高校生の文化祭に呼んでもいいものか……。忙しいだろうし、そのために異世界から魔法を使って転移してきてもらうのも大変だし……。うーん、誘ったら来てくれるのかなぁ?


「そういう麻理子はジローとまわるの?」

「うん」


 ジローは麻理子の彼氏。彼氏なんだけど、私は最近、色々と隠しごとの多いダメ犬だと知ったばかり。


 はにかむ麻理子には悪いけれど、私はあのダメ犬のことが嫌いだったり。ジローは麻理子と結婚するっていつも言い張っているけれど、あんなヘタレ犬に大切な親友を渡せるものですか!


「麻理子、ジローから連絡きた?」

「うん。この間、みんなで海に行ったでしょう? それまでずっと帰省してたから、連絡取れなくてごめんって謝ってくれたよ」

「そっか。ならいいけど」


 そう、この夏。私は麻理子も知らないジローの秘密を知ってしまったのです。


 なんとジローはラチイさんと同じ異世界人! しかも普通の異世界人じゃなくて、狼男みたいに本当は犬耳犬尻尾を持った赤狼族という獣人なのだそう!


 でもあの男、このことをまだ麻理子に隠しているようで。


 ちゃんと話しをしなよ! ってせっついてるんだけど、なかなかジローはその素振りを見せない。麻理子を嫁にするんだとか日頃から言ってるんだから、ちゃんとそういうのはしっかり話すべきだと思うんだけどね! あのヘタレ犬!


 ひそかにジロー憎しと思っていたら、隣の天使属性の麻理子が作業の手を止めてふにゃりと笑った。


「ジローともまわるけど、でも智華ちゃんともまわりたいな。二日目、どうかな」

「三日間もあるもんね! 一日くらいは一緒にまわろ!」


 親友のお願いを私が断るわけないじゃーん!

 麻理子のお誘いに、私は俄然、文化祭が楽しみになる。


 文化祭本番まであと、三週間。

 来週からは夏休みもあけるから、また忙しくなる。


 私はうきうきしながらビーズをテグスに通す。

 するとタイミングよく、机の上に置いていたスマホがピコンと鳴った。


 なんの通知だろうとのぞき込むと、噂をすればなんとやら!


「ラチイさんだ」


 麻理子も顔を上げてこちらを見ている。

 私は通知をタップするとそのメッセージを読んだ。


 突然のラチイさんからの通知になんだろうと思ったら、ちょっと異世界に遊びに来ませんかというお誘いだった。



   ◇   ◇   ◇



 基本的には日本にラチイさんが来てくれることが多いんだけど、そういうわけで今日はお呼ばれして異世界へ!


 長い銀の髪をゆるりと一つに結んで肩へと流し、綺麗な琥珀色の瞳が親しげにゆるんでいる人。異世界の魔法使いであるコンドラチイ・フォミナさんは、今日も水色のシャツに黒のスラックス、それから刺繍入りの黒のケープという制服姿。


 日本のサラリーマンと違って、ジャケットじゃなくてケープっていうのが、異世界っぽいよね!


 そんなイケメン魔法使いのラチイさんは転移魔法のスペシャリスト。今日も日本から異世界へ魔法で運んでもらいました!


「そろそろアレの視線にも慣れてきたかもしれない!」

「智華さんもこちらに来ることが増えましたからね」


 くすりと笑うラチイさんの腕の中、私は目がばちこんとあったレッド・ドラゴンの生首をひたりと見据える。


 爬虫類、苦手なんだけどね! 毎回転移するたびに、アイツと目が合うからね! なんというか、お隣さんの犬みたいな感じでちょっと慣れてきたかも!


 ラチイさんに微笑ましげにされながらも、私はするりとラチイさんの腕から抜け出す。今日のラチイさんもなかなかのフェミニストで、この距離感はレッド・ドラゴンの生首ほどまだ慣れてなかったり……!


 そんなお子ちゃまの私を置いて、ラチイさんは工房の作業台のほうへと私を呼ぶ。


 ひょっこりとラチイさんの横から作業台をのぞき込むと、そこには一つの包みが。


「どうぞ。開けてみてください」


 いいの? とラチイさんを見上げれば、ラチイさんはにっこりと微笑んだ。


 そうして促されて、紙に包まれた包みを開けてみる。包装紙の下からはしっかりとした箱が出てきて、その蓋をぱかりと開けてみれば。


「これ……!」


 水色のブラウスに、黒のプリーツスカート。それから刺繍が施された黒色のケープ。


 この黒色のケープ、めっちゃ見たことある! というかすぐそばにあるやつでは!?


「ラチイさんラチイさん、このケープ!」

「気づきましたか。第三魔研の制服ですよ」


 やっぱりー!?


「どういうこと、どういうこと!?」

「今後のことを考えて、智華さんの所属を明確にしておこうと思いまして。登城の際はそのケープがあれば第三魔研の所員だとわかりますから。特にケープのこの留め具の飾りは失くさないようにしてくださいね。身分証明になりますので」


 ラチイさんがケープの襟元にある留め具を指さす。

 銅色のピンバッジにはなんか複雑な紋章が描かれてる。お花のような模様は、王宮に出入りする人の所属を示す紋章なんだって! 色によって階級が分かれているのだとか。言われてラチイさんの襟元を見てみれば金色のピンバッチがある。


 これでラチイさんと一緒にお城に行くときに、面倒な手続きなしで行けるわけで。


「ラチイさんありがとう!」

「どういたしまして」


 何よりも、高校の制服より可愛くてドキドキしちゃう!


 満面の笑顔でラチイさんにお礼を言えば、ラチイさんもにっこりと微笑んでくれる。うーん、イケメンの笑顔はとっても眩しい!


 私はその眩しい笑顔に目をそらすようにして制服をたたむ。これは大事にしないとね!


「ラチイさん、用事ってこれだけ? このためだけに呼んでくれたの?」

「いいえ、まさか」


 ゆるりと頬をゆるめて微笑むラチイさん。

 ラチイさんは私から包みをさりげなく取り上げると、工房の扉に手をかける。


 私はそのうしろに続いて部屋を出たんだけど。

 工房から出た瞬間、パフっと私のお腹に何かがタックルしてきた!


「ふぎゃっ!?」

『チカ〜』


 タックルしてきたそれは大きいけど、とっても軽い。慌てて抱きとめると、のんびりと間延びした声が下から聞こえてきて。


 ほんわり白銀に輝く身体に、ベルスリープとワイドパンツみたいな近未来的服装の輪郭。左目だけ黒曜石をはめ込んだような男の子がにぱーっと笑って私を見上げていて。


「ムーン!」


 この子は月光と夜風の妖精さん。私がこの夏休みにうっかり契約してしまったらしい妖精なんだけど……燃費が悪いらしくて、契約してすぐに消えちゃったと思っていた。


 でも実は眠っただけだったみたいで。


「昨日の夜、気がついたらここに居まして。智華さんに会いたいとごねていたものですから」

「そうだったんだ」


 ふむふむと頷きながら、私のお腹に抱きついてぎゅうぎゅうしているムーンの頭を撫でてあげると、ムーンは『えへへ〜』とてれっとした。


 ん〜! めちゃくちゃ可愛い!


「満月の前後は月の力が強いので、月光から生まれたムーンの魔力が急激に上昇するんでしょうね。それで目が覚めたのかと。智華さんと契約したことで魂も安定しているようですから、妖精の魔法を使いさえしなければ、数日くらいは起きていられるかもしれません」


 そうなんだ!

 ということは……。


「しばらくはムーンと遊べるね!」

『ムーン。チカ。あそぶ』


 にこにこしてるムーン可愛い〜!

 えへへ、と二人でぎゅうぎゅうしていると、ラチイさんがそっと居間から出て、またもや工房に消えていく。


 なんだろうと首をかしげていると、工房から出てきたラチイさんの手にはリンデンの葉と敷布が。


「今日は天気も良いので、庭で過ごしてみるのはどうでしょう。せっかくなので今のうちに採取してみるのもおすすめです」


 ちゃっかりしているラチイさんに、私はムーンと顔を見合わせて。


 満面笑顔で手を上げた。


「しまーす!」

『しまーす!』


 ムーンも私の真似っこして手を上げてお返事。うーん、可愛い!


「第三魔研の制服は作業着としても便利なので、着替えてから採取しますか?」

「そうなの?」

「ケープの刺繍が防護魔法の魔法陣になっているんです。簡単な物理防御の魔法なので、汚れも弾いてくれるんですよ」


 へ〜! それは便利!

 それじゃあせっかくだし着替えてみてから作業しようかな!


 私はムーンにちょっと待っててねと伝えて、ラチイさんから包みを受け取る。いつも借りている部屋へゴー!


 お部屋は二階にあるので、私はパタパタと階段を登る。階段を登る私の顔はちょっぴりにやついていたり。


 真新しい制服に手を通す瞬間って、いつもドキドキしちゃうよね!


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