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世界に一つの魔宝石を ~ハンドメイド作家と異世界の魔法使い~  作者: 采火
バタフライ・イアーリング

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赤狼族の里【前編】

 オディロンさんとのデザイン画相談は話が弾みに弾んで、収集がつかなくなっちゃった。


 私のイメージを伝えて、オディロンさんがそれを緻密なデザイン画に起こしてくれる。オディロンさんはデザインをティターニアさんに似合うように調整する。でも、私の中でしっくりとした形には収まらない。


「うーん……アイディアとしてはいいと思ったんだけど……なんかなぁ」

「ティターニアに似合うとなると、やっぱり全く同じ模様の蝶だと違和感があるよ」

「そうなんだよねぇ」


 そう、そこ。ティターニアさんに贈るものだから、ティターニアさんに似合うもの前提で……って考えていたんだけど。


 ティターニアさんの頭の蝶々をモチーフにしてるからか、デザインかぶりしちゃって、あんまり似合うとは言い難い。


 でも、私が考えていた時のデザインよりは、ぐっと良くなっていて。


「デザイン、変えたほうがいいのかなぁ……」

「そうかもしれないねぇ。イヤリングはやめて、ペンダントとかはどうかな?」

「ペンダントかぁ」


 ジッとデザイン画を見つめる。

 このデザイン、とってもいいんだけどなぁ。


 何気にデザイン画から顔を上げてオディロンさんを見る。オディロンさんはちょっと疲れたように肩を回していた。


「お二人とも、そろそろ切り上げませんか。夕食の時間ですよ」

「え!? もうこんな時間!?」

「あぁ、集中していると、時間が経つのはあっという間だねぇ」


 ラチイさんに声をかけられて窓の外を見てみれば、もうすっかり太陽は沈みかけていてオレンジだ。オレンジどころか、薄暗くなってきてるし!


 オディロンさんも同じように窓の外を見ている。その横顔がとてもセンチメンタルで、まだ四十代だって聞いたのに、ぐっと老け込んでしまっているように見えた。


 この人にこんな顔させたくない。このままだと会えずじまいになりそう。オディロンさんを早く、ティターニアさんに会いに行けるようにしてあげられたらいいんだけど……。


「……あっ」

「智華さん?」


 小さく声を上げれば、ラチイさんが私の名前を呼んで、オディロンさんが私のほうを向く。


 私、気づいちゃった! 間違ってた!


「前提が違うよ! この魔宝石を使ってほしいのはティターニアさんじゃない! オディロンさんだ!」

「私かい?」


 オディロンさんがきょとんとする。

 ラチイさんは目を瞬くと、「あぁ」と頷いた。


「使用者の話ですね。確かに智華さんが込めたい魔法を使うのは、オディロン氏のほうになるでしょう」

「じゃあこれ、オディロンさんに似合うようにデザインするべきだよね! だからどれも納得いかないんだよ! やっと納得!」

「いやいやいや、待ってくれ。私が使ってしまったら、ティターニアへの贈り物にはならないんじゃないかね?」


 そう言われてしまうと、確かにそうだけども。


「ラチイさん……」

「はい」

「この場合、プレゼントはオディロンさんです! って妖精に通用する?」

「さて……フィール・フォール・リーに確認を取ってみないことには」


 でもそれがありなら、魔宝石の方向性はこれでいいよね!?


「ラチイさん、もしティターニアさんへの贈り物じゃなくなっても、オディロンさんのための魔宝石、作っていい?」

「いいですよ。思い合う二人の壁がなくなることは良いことですから。でも危険な魔法になってしまったら、封印処理しますからね?」

「ありがとう!」


 すんごい物騒!

 封印だとかの大事にならないように頑張ります!


「君たち……どうしてそこまでしてくれるんだい?」

「だって知っちゃったからには放っておけないんですもん」


 私もラチイさんもそんな性格だから、仕方ないよね!


「……ありがとう。私も頑張らなくては」

「とりあえず食事にして、明日また考えましょう。休むときには休まないと、いいアイディアは出ませんから」

「さんせーい!」


 じゃあ今日の夕食どうしよう、せっかくだからオディロンさんも、と話していると、不意に窓がカタカタと鳴った。


「え? 何?」

『こーんーどーらーちーいー!』

「えっ、フィール!?」


 窓の方を見れば、フィールが緑の羽をいっぱいに広げてガタガタと窓を揺らしていた。

 慌てて窓を開ければ、フィールが部屋の中に転がり込んでくる。


『フゥ、まったく、間の悪いオトコねン。ようやく見つけたワ』

「どうしたの、フィール。ラチイさんに用事?」

『ハァイ、チカ。そうよン、コンドラチイに約束を果たしに来たのン』


 約束?

 なんのことかとラチイさんを見れば、ラチイさんは私の隣にやってきて。


「フィール・フォール・リー。約束とはもしかして」

『そうよン。銀色のお仲間さん、生まれそうなのン! ただ、とっても力が強いのに燃費が悪いカラ、今夜だけしかいられないかもン』


 銀色のお仲間さんってもしかして!?


「ラチイさん!」

「そうですね。行きましょう。行って、妖精の鱗粉を採取させていただかねば。それにしても一夜だけとは……妖精の寿命も、興味深い研究ができそうですね」


 学者肌のラチイさんが顔をのぞかせちゃったよ。

 そんなことよりラメ採取! ラメ採取!


「すみません、オディロン氏。夕食はまた今度ご一緒しましょう」

「いいよ。なにやら急いでいるんだろう? お行きなさい」

「ありがとうございます」


 私は慌てて散らかしたものを片付けようとして、オディロンさんに止められる。後はやっておくよ、と言ってもらえたから、お言葉に甘えてそのままにして、私たちはオディロンさんの部屋をでた。



   ◇   ◇   ◇



「フィール・フォール・リー、その銀の妖精の場所はどこです」

『ココから四つ隣の、獣人の国よン。ソコの赤狼族の里近くの森みたいン』

「赤狼族の里ですか……その近くの町までは転移で飛べますが……赤狼族の里までは、それでも転移先から距離があります」

『ショーガナイわねン。アッチについたら、ワタシたちが手助けしてアゲル』


 歩きながらもラチイさんとフィールは話を続けていて、私はその後ろをちょこちょこと着いていく。

 というか四つも向こうの国ってめちゃくちゃ遠いじゃん。どうするのかと思ったら、近くまではラチイさんが転移で行けるみたいで、そこからの移動手段の確保もできそうな感じ?


「採取用の道具を取りに行かないといけませんね……取りに行く時間はありますか?」

『まぁ大丈夫デショ。ハヤクハヤク、行きまショ!』


 大丈夫とか言う割にはめちゃくちゃ急かされる〜!

 ここからなら家に戻るよりも、王宮の第三魔研に寄ったほうが早いらしく、私たちはとにかく急いで採取に必要な道具を取りに行った。王宮の敷地内に入らないといけないので、許可証のない私は王宮の門の外で待機。ラチイさんにを待つ。


 門の外でフィールと待っていたら、門番さんと目があったので手を振ってみた。困惑気味の表情で手を振り返してもらえました。この人、いい人だね!


「お待たせしました。ついでに転移に必要な物も取ってきました」

「転移に必要なもの?」

「俺一人の転移なら問題はないんですが、智華さんやフィール・フォール・リーもとなると、少し道具が必要になります。これから使う転移魔法は、色々と限定している俺の家の魔法陣とは少し違うので」

「そうなんだ」


 難しいけど、行き先や人数が違うから、その調整も変わるってことなのかな?

 ラチイさんが巻物のように巻いてあった紙を広げた。すごい、魔法陣と文字が敷き詰まってる。


「これはスクロールと言って、魔法陣を保存しておく魔法道具になります。未完成なこの魔法陣に、必要な内容を書き足して魔力を流すことで、魔法が発動します」

「へぇ」

「これは俺が描いた転移魔法のスクロールです。人数と座標を指定すれば魔法陣が完成して、転移魔法が発動できます」


 そう言って、王宮の門からちょっと離れたラチイさんは、胸元に入れていたらしいペンを使ってちょこまかと魔法陣に模様を描き足した。うーん、どう見てもボールペンで笑うなぁ。


 魔法陣に必要な内容を描き終えたラチイさんが、私とフィールにこのスクロールに触るようにと言う。


「転移魔法を発動します。眩しいので、目をとじていてくださいね」


 ぱぁぁあと淡く紫に輝くスクロール。

 あんまりの眩しさに目を閉じる。

 次の瞬間には。


「わぁ……、………………………………ジロー?」

「は? 笠江?」


 頭に犬耳をはやしたジロー・山田・バルテレミーと目があった。


 なんで!?


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