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絵空から落ちた流星  作者: 夢七
第一章
1/14

プロローグ

 今殺されていた。

 痛みのない身体と冷えた頭が、(ささ)やかに人生の終わりを告げていた。

 深呼吸をする。血が絡まって大きく()き込んだ。

 血は顔を近づけていた少女に被せられ、心苦しく感じた。


 何をしていた?体を揺すられる。少女が何か叫んでいる。


 考えがまとまらない、瞼が重い。

 周りに人だかりができている。全員が何かを叫んでいる。


 不意に自身の(しゅっ)(せい)想起(そうき)された。

 記憶は連綿(れんめん)と続き、果てには、なぜ死ぬのかまで思い返された。


 目をつぶる。体の揺れが幅を増したがすぐに収まった。

 もはや身体に感覚はなく、死は隣人の装いを見せていた。

 しかし、と考える。


 死出(しで)の門出を盛大に惜しんでもらえるのであれば、そう悪くない人生であったと。




「君には才能がある」


 俺がそういうと、少女は嬉しそうに顔をほころばせた。

「本当に」と聞き返され、目線を合わせてうなずく。


「けどね、もっとできるの。緊張してうまく魔力がまとまらないの」


「そうなのか、すごいな」


 世辞ではない。心からの一言だ。


「でもいいの、お兄さん。こーいうのってみんな、内緒にしてるよ」


「大丈夫。教える人はちゃんと選んでるから。君みたいな優秀な子だけに教えてるんだ」


 少女は顔を輝かせる。

 もう1度魔法を見てほしいといい、再び詠唱を始めた。


水漏蛇(みろた)に思ひ惚る泥濘(でいねい)

 (よな)げる(じん)(ちょう)の光

 (たへ)なる水 ()(じょく)()い潰し

 (うつし)()慈雨(じう)(たた)えん』


 詠唱が終わると、城ほどもある水球が頭上に現れた。

 並の術師が操る万倍の規模である。


 数刻の後、影が消えた。


「どう、お兄さん。私すごい?」


「今まで見た誰よりもすごいよ。でも、さっきみたいにモンスターとの戦いに使おうとしないこと。実践だと、」


 先ほどのことだ。俺は村の子供たち全員に魔法を教えた。

 その最中、(あふ)れる才を放った彼女を誉めすぎてしまう。

 結果他の子の指導の間に、彼女は一人離れて独自に魔法の練習を始める。

 モンスターに襲われていた彼女を助け出せたのは幸運であった。


 説教臭くなったと思い、俺は自身にとって最大級の褒め言葉を贈る。


「そうすれば君は将来英雄になって、歴史に名を残せるかもしれない」


 少女は笑みをこぼすと俺の手を握った。

 そして自分の頭に俺の手を持ってきて左右に揺らした。


「でも私英雄なんて嫌。本を読んで静かに暮らしたいわ」


「そうかい、せっかくの才能なのになぁ」


 俺はされるがままだった手を放し、一際大きな家屋を見る。

 相棒が行っている、村長との交渉は終わっていないようだ。


「ミュウは英雄になりたいの?」


「うん、父さんが色んな話を聞かせるもんだから憧れてね。だから旅をして人助けをしてるんだ」


「すごいなぁ。私だったら怖くて外に出れないや」


「沢山モンスターがいるからね。でも、一人じゃないから……ほら」


 村長との談合を終えて<ミクロス・コピィ>が戻ってきた。

 にやけている。結果は上々のようだ。


「村長自ら自宅を貸してくれるらしい。その代わりに子供たちに魔法を教えてほしいと」


 少女が俺の手をつかみ目を見開く。

 俺の手を巻き込んだまま大きく振った。


「やった! これで明日も一緒だね! 今日は私の部屋で一緒に寝よう!」


 苦笑交じりに釘を刺しておく。


「さすがにそれは悪いからごめんね、君が眠るまでだったら村長にお願いしてみるけど」


「私からもお願いしてみる」といい、少女は大きな家へ駆けだした。

 俺はその場に腰を下ろしコピィに礼を言った。

 彼も同じように腰を落ち着ける。


「お前が最初にあの女の子を助けたからうまくいったんだ。村長の娘をな」


「たまたまだよ。……村長は俺たちのこと知ってた?」


「全く、やっぱまだ英雄には遠いな」


 かねてより思っていたことを口にする。


「<星に願いを(ステララム)>って団名カッコつけすぎかな。深夜のテンションで決めたし」


「いや、すげーいい感じだと思う。ステララムって響きはかっこいいよ」


「うーむ信用できない。お前カッコつけでセンスがアレだし」


 てめー、と肩を小突かれる。

 俺は空を見たまま笑っていた。


 不意に碧天(へきてん)が陰った。

 二頭の竜が大翼(だいよく)をなびかせ、近くの森へと降り立つ。

 俺たちはそれを見て立ち上がり、村長の家へ駆けた。




「私たちを助けて下さい」


 村長が頭を机に打ち付けた。

 日が沈んでも竜は飛び立つ様子はなかった。

 それは目的が、束の間の羽休めでないことを意味している。


「討伐は無理にしても、あの竜を追い払うことはできないでしょうか。このままでは、村を捨てなければなりません」


 村長が床に頭をつけようとしていた。

 俺はそれをさえぎり問い(ただ)した。


「領主様に兵を派遣してもらうことはできませんか? 歎願(たんがん)が聞き入れられれば、派兵されると思いますが」


「駄目ですよ! お(かみ)の仕事は遅すぎる! つい先日も1つ村がモンスターにやられました!! 待っている間に村を捨てないと、全員死んじまう! 村を捨ててもお先真っ暗だ!!」


 分かっていた答えだ。

 調査、兵の編成、移動時間なども加味すると、最低でも数カ月は討伐に要するだろう。

 その間に村は荒らされ、人は死ぬ。


「だけど俺たちだけじゃどうしようもないですよ。せめて戦士が200人必要です。この村に若い男は何人いますか?」


「……戦えそうなのは30人だ。あとは女子供か年寄りしかいない。子供たちに教えた魔法は使えないですか?」


「無理ですね。1日2日では実践に使えません。村長の娘なら別ですが」


 少女が隣の部屋から、不安気に見守っている。

 コピィが机の下で俺の体を2回つついた。

 星に願いを(ステララム)の符号で「俺に任せろ」を意味する。


「そうですか。では足りない人数を補うためにも、助けを呼んできます。」


「おい、それは!」


 思わず口を()き、コピィが俺の膝を叩く。

 それは、と村長が()(ごう)したが溜息をついて椅子に座った。


「分かりました……、ではまたお会いできることを祈っています」


 そういうと村長は村の者と話し合うと残し、家を出た。

 コピィが荷物をまとめて俺に話しかける。


「とりあえず家を出るぞ。子供の前では話しにくいこともある。さよならだ、子猫(キティ)ちゃん」


「分かったよ。元気でな嬢ちゃん」


 少女が目を潤ませて何か言いたげにしている。

 無理もない、俺たちが村を見捨てて逃げ出すと思ったのだろう。

 家を出ようとすると、彼女は戸口の前に立ちふさがった。


 幾ばくかの逡巡(しゅんじゅん)の後、彼女はハンカチを渡してきた。


「あの、これ」


 荒い縫い方だったが清潔で良い香りがした。


「私が初めてぬったの。ミュウさんに貸してあげる。だから、また返してほしいな」


 手巾を渡すとき彼女はこちらの顔を見なかった。泣いているのだ。

 (とし)()も行かぬ子供にこのような顔をさせたこと、小賢しい真似をさせてしまった自分を嫌悪した。

 俺は預かったハンカチで少女の涙を拭った。


「必ずまた来るよ」といい、村長の家を後にした。




「どうするよ」


 俺はなおざりに尋ねた。俺たちは既に村を出ていた。

 村人たちの恨みがましい目が心残りであった。


「逃げるしかねーだろ、夫婦(めおと)竜なんざ300人兵士が必要だ。そんで戦っても兵は半分死ぬぜ?素人30人でどうにかしようなんざ無理な話だ」


「でも追い返すぐらいはできるかもしれない」


「竜はしつこいよ」


 コピィは食いつくように語り始めた。


「竜はとんでもなくプライドが高い。あいつら人間が徒党を組んで襲っても、飛んで逃げたりしねぇんだ。最後の1人を殺すまで戦い続けて、自分の居場所を守る。1度巣を決めた以上、殺すか殺されるかだ」


 コピィが俺の顔を正面から見据える。

 普段俺の前では見せない、余所行(よそゆ)きの真剣な表情だった。


「村を守りたいって気持ちもわかる、あの女の子との約束もある。だが行っても無駄だ。避難を手伝うくらいしかできない。俺たちは英雄に憧れていても無力なんだ」


「だけど」


 初めから腹は決まっていた。後はいつ切り出すかの話だった。

 こちらも負けじと見つめ返し、言葉をぶつける。


「ここで逃げたら、もうこんな旅は続けられないよ。星に願いを(ステララム)なんて名乗って人助けを続ける旅、生活だって楽じゃなかった。ここで人助けまで辞めたら旅を続ける意味がない。」


「言ってることもわかる、が。」


 コピィが目を逸らし黙り込む。

 元々が英雄に憧れて始めた旅だ、そのために組んだ相棒同士だ。

 ここで目的を見失えば、いずれ立ち行かなくなることは明白だった。

 一時を経てコピィはぽつりと話し始めた。


「死にたくないし、お前を死なせたくない。この旅も終わらせたくないよ。大体が、あの村を救うってのも村長の我儘(わがまま)だ。俺たちがどうこうする義理もない」


「その我儘を、どうしようもない願いをかなえるのが俺たちの願いだ」


 再びコピィがうつむいて黙り込んだ。

 しかしすぐに自らの頬を叩くと、奮起して立ち上がった。


「しょうがねえ! 英雄になるんならどのみち、生きるか死ぬかを経験するんだ! やってやるか、人助け!」


 俺たちは二手に分かれた。

 まず俺は夜明けを待ち、村へと戻る。性急に村人の避難を促すためだ。

 もし領主への使いを出していなければ、請け負うことも考えていた。


 一方でコピィは、俺たちが今まで助けた村や近隣の町から戦える人間を募る。

 こちらは寝食もせず、迅速に行動を開始した。

 自分を質に入れてでも人を集める、と息巻いていた。


 眠りから目覚めると空は白んでいた。

 村の上空に巨影が見える、竜だ。

 戦うしかないのか。


 白煙が浮かぶさまを見ると、襲撃から時間は経っていないようだ。

 俺は足を速めて村へ向かった。




 村は(ことごと)く焼かれていた。

 煙が目と鼻を刺す。熱気が肌を(むしば)む。

 既に村の若者は竜と交戦していた。


 一人の男が竜の牙に危機をさらしている。

 俺は男の腕を引いて助け、大声で尋ねた。


「何人戦える!」


 男は放心から(よみがえ)ると、20人と答えた。


星に願いを(ステララム)の<ミュウ・アクリ>助太刀に入る!」


 大振りの爪を盾で受け流す。

 口から吐くブレスは魔力の流れから事前に察知する。


「全員散開!」


 村の若者に指示を出しつつ時間を稼ぐ。

 村は次々に焼かれていく。つがいを呼ばれる危険性もあった。

 だが待つ他に作戦はなかった。


「竜が飛ぶぞ! 全員退避!」


 風圧で転倒しかける。

 若者たちは体勢を崩し倒れた。

 戦闘を続けられそうな人数を試算する。


 10人。魔法を唱える。少女にも教えた水球の魔法だ。

 服が焼けて転げまわっている村人へ向けて発射した。

 これで11人。


 竜が空から途切れなく魔法を吐く。

 余力のある村人は怪我人を連れて避難するよう指示を出した。

 俺は避難を邪魔されないよう、魔法で妨害しつつ竜の攻撃をかわす。


 俺の参入から数時間が経過していた。

 魔力は尽き、剣を握る力すらなくなっている。

 援軍は訪れない。狙っていた機会すら生まれない。


 竜が天を仰ぎ咆哮(ほうこう)する。耳をつんざく音に俺は身を固めた。

 今だ、と考えた(せつ)()巨大な雷が竜を貫く。

 後方を確認する。村長の娘がへたり込んで息を荒げている。


「最高のタイミングだ!」


 少女を誉めると嬉しそうに笑った。

 助太刀に訪れる途中、村長に無理を言って娘を連れださせてもらった。

 彼女が挙げてくれた功績は絶大だった。


 だが竜は倒れない。

 飛ぶ余力を失い、地に堕ちこそしたが未だ咆哮を続けていた。

 先ほどよりも甲高い声である。


 疲弊した体に鞭打ち、立ち上がる。

 戦いは終わらない。この竜を倒しても、つがいがいる。

 少女は咆哮で大勇を失い、村人は満身創(まんしんそう)()だった。

 竜が俺へと爪を振るう。


「ッしゃおらぁ!」


 突然皮鎧に身を包んだ男が俺を庇った。

 男は詰めの一撃を防いだ後、俺を連れて迅速に離脱した。

 礼を伝えると男は返事もそこそこに駆けていった。


 援軍が来た。コピィが寄越したのだろう。

 礼を言うためにコピィの姿を探すが見当たらない。

 援軍は80人ほどであった。これならば。


 俺は少女の元へ駆け寄り背中を優しく(さす)った。

 少女は意思を取り戻すと、再び詠唱を始めた。


燦然(さんぜん)(ちゅう)(てん)を焦がす

 ()()れに(ちゅう)(くう)(とぼ)

 干割(ひわ)れ (かじ)き ()(はつ)()(らい)にして(おこな)い!

 (くう)(またた)きに裂き ()(てん)()(びょう)にて(むす)べ!!』


「皆、離れろ!」


 詠唱が終わる5秒前に指示する。

 援軍は統率の取れた動きで竜から距離をとった。

 竜を再び(びゃく)(らい)が襲う。

 竜は地に伏せるとそのまま動かなくなった。


 わ、と俺たちを歓喜が包む。俺たちは竜を倒した。ドラゴンスレイヤーだ。

 少女が俺の手を握った、そのときだった。

 他方の竜が(きょう)(せい)(とどろ)かせた。

 最悪だ、と(ひと)()ち剣を握る。



「こっち見ろやぁ!!!デカブツゥ!!!!!」


 コピィが声を張り上げる。胸には人の頭部ほどもある、巨大な卵を抱えていた。

 竜が動きを止めこの場にいる全員が察した。

 あれは竜の卵だ、敵の子供だ。

 コピィは卵を頭上に掲げこちらへ歩いてきた。


「竜よ、話がある。卵を返すから俺たちを見逃せ。聞き入れなければ、お前の子と心中する」


 コピィと竜を援軍が囲む。

 魔法を唱え、コピィごと卵を破壊する備えをしていた。


 竜は翼を畳みその場に腰を落ち着けた。

 コピィは卵を地面に置き、緩慢(かんまん)に距離をとった。

 竜は卵を口に(くわ)え翼を広げる。

 そしてそのまま穏やかに地上から離れていった。

 風圧に再び体勢を崩す。


「コピィ!助かった!」


「おうよ!」


 コピィは俺に向かって親指を突き立てる。

 全身が汚れ、目の下にクマができていた。

 コピィが呟く。


「間に合ってよかったよ、相棒」


 竜が村を離れ飛び去って行く、誰もが安堵していた矢先であった。

 竜は仇の少女を狙い魔法を放った。

 俺は少女を抱き、あらん限りの力で()ん投げた。




「……体が」


 少女は()(えつ)で声にならない言葉を無理に吐き出した。

 俺の体は? チクショウ、左半分は失くなった。


「ごめんなさい、ごめんなさい」


 泣かないでくれよ。せっかく生きてくれたのに。

 少女が額から血を流していた。借りていた布をあてる。


「傷になったらごめんな」


 できる限りにこやかに話しかける。


「……そんなの」


 ダメだ。平衡感覚が。

 そのまま地面に倒れ込んだ。




 今殺されていた。

 痛みのない身体と冷えた頭が、(ささ)やかに人生の終わりを告げていた。

 深呼吸をする。血が絡まって大きく()き込んだ。

 血は顔を近づけていた少女に被せられ、心苦しく感じた。


 何をしていた?体を揺すられる。少女が何か叫んでいる。


 考えがまとまらない、瞼が重い。

 周りに人だかりができている。全員が何かを叫んでいる。


 不意に自身の(しゅっ)(せい)想起(そうき)された。

 記憶は連綿(れんめん)と続き、果てには、なぜ死ぬのかまで思い返された。


 目をつぶる。体の揺れが幅を増したがすぐに収まった。

 もはや身体に感覚はなく、死は隣人の装いを見せていた。

 しかし、と考える。


 死出(しで)の門出を盛大に惜しんでもらえるのであれば、そう悪くない人生であったと。


 最早感覚はないはずだった。

 しかし手の平に違和感を感じる。2本の指で膝をつつかれていた。


 任せていいのか、ミクロス・コピィ。

 もう一本の指は誰かな。たぶんあの女の子かな。

 君まであとは任せろというのか、嬉しいけど重荷にしないで欲しいな。


 全ての感覚が消え、自分の意識だけが宙に浮いている心地がした。

 こうなっては起きている意味もない。

 俺は目を閉じて眠りについた。






 目を覚ますと、珍妙な衣装の美人に顔を覗き込まれていた。

 美しい女性が死後の案内人とは、洒落(しゃれ)たものだと考える。

 女性が表情を変えずに口だけを動かす。


「お待ちしておりました、ミュウ・アクリ様。世話役をさせていただきます。<キタルファ>と申します」


「地獄には世話役がつくのか。早く死んでおくべきだった」


<キタルファ>と名乗った女性はニコリともせず、こちらを見つめた。

 美しい綺羅(きら)(ぼし)のような目だった。目は燃焼し(おの)ずから光を(たた)えていた。

 彼女は瞬きせず、色の良い唇を動かす。

 感情の読み取れないしゃべり方である。


「まずはこちらをご覧ください」


 キタルファが指し示した方を見ると、幾つかの場面が切り取られたように広がっていた。

 仰向けになり苦悶する人々、絵画を燃やして暖をとる負傷者、死体がうず高く積もった道、瓦礫と廃墟に囲まれ、空を見上げる痩せた少年。


「全て100年前の光景です。ここから逃れた数少ない人類の生き残りはここ<空の楽園>へと落ち延び、その子孫である我々は、100年ぶりに地上との接触を決断しました」


 理解が追い付かない。疑問は数多くある。

 俺は何を見せられているのか、ここは何処なのか。

 何をすればいいのか、目の前の女性は何者か。


「貴方には2つ依頼したいことがあります。【なぜ人類は滅亡したのか】【地上はどうなっているのか】両調査を」


 そもそもが内容の、真実か否かさえ不明瞭である。

 だから結論を先送りにすべく口を開いた、しかし。


「だとすると、俺は生き返ったってことでいいのか」


「はい」


 再び生を授かるとは。頭の中で整理をつける。

 彼女の語ることが本当ならば、人類は滅び、地上には惨憺(さんたん)たる光景が広がっている。

 そして俺の助けを必要としている。 


 ならばすべきことは決まっている。

 あいつらの遺した世界を、よりよい方向へ。

 そして今度こそ、誇れる英雄に。

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