お化け屋敷の二人
葵ちゃんのお母さんが駅前の広場で葵ちゃんを捜すビラを配っています。
葵ちゃんは一年前のお祭りの日にどっかに行ってしまったんです。
ランドセルと服は見つかりましたが、他に葵ちゃんの手がかりはありません。
僕のお母さんは悪い大人の人に誘拐されたと言ってましたが、葵ちゃんは誘拐なんか
絶対、されません。不思議な力を持った超能力者なんです。
僕がもうちょっとで見れる妖精や悪魔や妖怪を葵ちゃんは感じて見る事ができたんです。
凄い子なんだから、人間の悪い奴なんか、すぐに見破ります。
「健太君、こんにちは、これ葵を捜すビラなの、よろしくね」
「あ、あ、はい」
葵ちゃんのお母さんからビラを貰いました。凄いきれいな人なんで、ドキドキ
しちゃいます。
実は誰にも言ってませんが、葵ちゃんがいそうなとこ知ってるんです。
僕が見つけたら、凄いだろうな。きっと、学校で人気者になれます。
いじめっ子の斎藤から、いじめられなくなるかもしれないな。
「貧乏兄弟戦隊、健太マン」とか言わせないぞ。
お祭りの日がやってきました。
大きな神社のお祭りです。屋台とかいっぱい出ますが、僕は
買ってもらったことはありません。お父さんがいなくて、兄弟が
いっぱいいるからです。
屋台の他に大きなお化け屋敷の小屋が立ちます。
このお化け屋敷に葵ちゃんがいる気がするんです。
どうしてかっていうと、葵ちゃん、超能力があるんで、テレビのお化け番組を偽物と
見破りますし、遊園地のお化け屋敷も作り物と言ってバカにしてました。
このお祭りのお化け屋敷だけは、ここは違うよと特別扱いしてたんです。
葵ちゃんを見つけるため、僕は駅前を通って神社のお化け屋敷に向かいました。
「あ、貧乏兄弟戦隊、健太マン発見、」
やばいです、いじめっ子グループの斎藤たちに見つかってしまいました。
僕は神社の方向に走りだしました。
「健太、待てよ、お金持って無い子は、お祭り行ってもしょうがないぞ」
斎藤たちが僕を追いかけてきます。
僕には葵ちゃんを見つけるという大事な任務があるんです。斎藤たちに
捕まったら、任務が遂行できません。
僕は全力で走りました。神社の鳥居の前を左右に大きな通りが通ってます。
赤信号でしたが、僕は思い切って通りに入っていきました。
キ、キーキーとブレイキ音をたてて、車が停まりました。
僕は驚いて、車の前で転びましたが、直ぐに起きて走り去りました。
斎藤たちはビビって、追うのをやめたようです。
お化け屋敷の前に来ました。怖い女の人の幽霊の絵の看板が掛かってます。
枯れた笹がいっぱいお化け屋敷中に生えてました。
入場料を払う所の先に暗い入口があります。そうですあの入口の先に葵ちゃんがいる
んです。
反対側の出口から、カップルが出てきました。
「チープだけど、なんか凄く怖かったわね」
「冷房掛けてんのかな、背筋が寒かったな。本物がいたりして、あれ、救急車のサイレン、事故かな?」
二人の会話を聞いても、葵ちゃんが言ってたとおり、このお化け屋敷は普通じゃないと分かります。
僕はお金を持ってないんで、どうしようかな?と悩んでいると、
スポーツチームらしい小学生がいっぱい来ました。チャンスです。
僕はその集団の後ろについて、まんまとタダで入場しました。
係の人が僕に気がつかなくてホッとしました。
中は暗くて、よく分かりませんが、笹の匂いが立ち込めて怖さを
増してます。太鼓の音が聞こえてきます。その時、窓が開いて、
女の幽霊が飛び出してきました。
スポーツチームの集団が「キャー」とおお騒ぎしました。
僕は人形だとすぐに気づいたので、冷静でいれました。
騙されてバカだなあと思っていると、集団がいなくなってしまいました。
暗闇に僕、一人だけです。
「どうしよう、どっちに行けばいいんだ」
一人で立っていると、、
「健太、こっち、こっちだよ」
暗闇の奥の方から声が聞こえました。
あれ、葵ちゃんの声だ。
「葵ちゃん、葵ちゃんなの?」
「そうだよ、こっちよ」
暗闇の奥側に行くと、穴が開いていて、そこに葵ちゃんがいました。
「葵ちゃん、やっぱ、お化け屋敷にいたんだね」
「健太、よく見つけたわ。お前にしちゃあ立派ね」
「ここで何してるの?」
「怖がる人間を見てるの。面白いよ。あと日本中、旅して回れるしさ、
自由なのよ、お化け屋敷の人にも見つからないし、いいわよ。健太も
今日から一緒ね」
「でも、お母さんとか心配してるよ」
「いいのよ。もう、違う世界の人なんだから」
そっかーそうなんだ。葵ちゃんことを大好きなんで、このままでも、いいかなと僕は決めました。
ただ、僕がいなくなって、葵ちゃんのお母さんみたいに、僕の
お母さん、僕の事、捜してくれるのかなと、ひょっとしたら、
兄弟いっぱいいるので、気づかないかもしれないと思いました。
「キャーギャーアー」
お化け屋敷のお客さんが怖がってます。
「健太、おもしろいでしょ」
「葵ちゃん、おもしろい。大人のくせに怖がってら」
「ウフフフフ、、、、楽しいね」
「楽しいよ、フフフフフ、、、、」




