表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
たてたてヨコヨコ。.  作者: ひろすけほー
7/71

第七話「剣の無い英雄?」

挿絵(By みてみん)


イラスト作成:まんぼう719さん

第07話「剣の無い英雄?」


 「わかったわ。”戦いの補助(そっち)”の方はおいおい話し合いましょう」


 「って、”おいおい”かよっ!」


 突然押しかけて、終始、自分のペースで話を進める――


 プラチナブロンドが眩しいツインテール美少女はそう言いながらニッコリ微笑んだ。


 「このわたしのサポートが出来るなんて光栄なことだと思わ……」


 「思わない!」


 そして俺はスッパリ断定してやる。


 「うっ……」


 可愛いからって甘やかしたらトコトンつけあがるからな。


 俺は意外とこういうところはきっちりしているんだ!


 「じゃあ、どうすれば……」


 美少女の翠玉石(エメラルド)の瞳が少し不安げに揺れていた。


 ーーおおぅっ!?


 「え、えっと……あれだ、武具提供の方は報酬しだいで引き受ける……けど、もう一方は駄目(ノー)だ、ま、前にも言っただろ?そっちには触れられたくない」


 とはいうものの――


 その瞳をされると正直弱い……ってか、


 別に俺が軟弱だからじゃ無いぞっ!お、男なら誰でもそうだろ?


 「……わかったわ。今のところはそれで我慢する」


 ーーい、今のところ……ねぇ?


 なんだかあきらめが悪い少女の悲しげな顔を見て少し胸が痛くなるが、こっちもこれが出来る最大の譲歩だ。


 「それで……」


 プラチナブロンドの美少女は少し躊躇いながらこちらをチラチラと覗い、”ある”言葉を口にしようとする。


 「だったら話を聞く必要があるな、どんな秘密があるんだ英雄級(ロワクラス)のお嬢様には?」


 俺は意図的に相手の言葉を遮って確認した。


 言いにくそうだったので俺から切り出してやったってわけだ。


 自分から”事情”を話そうとするところとか、なかなか真摯な態度だし、それくらいの度量は俺にだってあっても良いだろう。


 「え……と、なにか気づいて……ていうか、知っていたの?わたしの事」


 「まあな。それによく考えたらこの間の俺の剣の不甲斐なさも不自然だったし、こうやって枸橘(からたち)女学院に通う外国貴族のお嬢様で容姿端麗、成績優秀なクウォーター美少女様が俺如きの住処(すみか)にわざわざと足を運んで下さるってのはどう考えても怪奇現象並みにありえないからな」


 俺は昨日仕入れたばかりの情報を()も知っていて当然のように答えていた。


 「貴方に一目惚れって事もあると考えないの?」


 「……」


 「……」


 「ごっごめんなさい!」


 彼女の軽口に対する俺の反応を見て――


 彼女、羽咲(うさぎ)は慌てて謝っていた。


 「いやいや!失礼だろ!そっちの方が失礼だからっ!」


 俺の指摘に”あははっ”と苦笑いを返すプラチナブロンド美少女。


 「くっ……まあ、それはいい。で?世界に八人しかいないという英雄級(ロワクラス)のお姫様は何で丸腰なんだ?」


 羽咲(うさぎ)・ヨーコ・クイーゼルの苦笑いは、そのまま趣旨の違うものに変わっていた。


 「やっぱり……その話題になるのね」


 「そりゃそうだろ、戦士(ソルデア)系の最高峰である英雄級(ロワクラス)の八人が他の人間と決定的に違うのは”聖剣”の存在だ。それを所持していないって事は気になって当たり前……っ!?」


 そこまで言いかけて俺はその先の言葉を飲み込んでいた。


 羽咲(うさぎ)の表情が俺にそうさせたのだ!


 「……」


 やや俯き加減で曇る表情。


 美しい翠玉石(エメラルド)の瞳が悲しげに陰るのが見える。


 「いや……言いたくなければ別に」


 慌ててそう言い直す俺。


 ヘタレでなくとも女の子にこんな表情(かお)させたら折れて当然だろう。


 ――で、彼女にそうさせた”聖剣”という代物は……


 文字通り最高、最強の能力を秘めた剣の事である。


 全ての能力者が戦闘時にその力を遺憾なく発揮するために必要なものは武具。


 それは職人(フォルジュ)系の能力者である武具職人(アルムスフォルジュ)が製造し、供給している。


 しかし、戦士(ソルデア)系の最高峰である英雄級(ロワクラス)の八人だけは例外だ。


 ”聖剣”と呼ばれる最強の武器を自らの潜在能力(ポテンシャル)で具現化し、それを駆使して想像を凌駕する圧倒的な戦闘力を発揮するというのだ。


 ただし英雄級(ロワクラス)と言えども、”聖剣”の行使には多量の能力を消費するため、普段は他の能力者と同様に武具職人(アルムスフォルジュ)が製造した武具を使用する場合が殆どではあるが……


 とは言っても……


 ――先日のあの状況で”聖剣”を召喚しないのは……な


 かなり追い詰められた状態だったみたいだし、それに通常の武具も所持していないみたいだった。


 だから俺の疑問はもっともだと言えるものだったのだ。


 「大丈夫、ちゃんと説明するわ。協力してもらうわけだし……」


 俺が追求するのを諦めかけた時、羽咲(うさぎ)はそう言って微笑んだ。


 それは、出会ってから今までで一番”ぎこちない”笑顔だった。


 「まず最初にわたしの”聖剣”……"グリュヒサイト”は現在(いま)は召喚できないの」


 「今……は?」


 「ええ、現在(いま)は。二年ほど前までは出来ていたのだけど……それからは」


 「……」


 ”聖剣”が召喚できない英雄級(ロワクラス)?そんなのがあり得るのか?


 俺の納得がいっていない顔を横目に彼女は続ける。


 「理由は聞いても無駄よ、わたしも……いいえ誰にも解らない事らしいから」


 この間の状況下でも聖剣を使用しなかったことからウソだとは思えない。


 なにより今の俺の情報量では――


 そう言われてしまえば納得するしか無い。


 「俺の剣が……なんていうか……」


 俺は質問を変えるが、なんとなく言い淀んでいた。


 自身の作品が不出来なだけだったのではないか?と、いまいち自信に欠けるからだ。


 「貴方の剣が一振りで”ああなった”のは貴方のせいではないわ。わたしが通常の剣を振るうと何故だかああなってしまうの……いいえ、今までは一振りどころか用を成すことさえ出来ないのが普通だったから、寧ろ貴方の剣は別格と言えるくらいで……」


 ――な、なるほど


 そうか、だから彼女は俺の処に……


 「もしかしたら羽咲(うさぎ)、お前の潜在能力(ポテンシャル)は他の英雄級(ロワクラス)と比べてもとんでもなく高いのかもな。それで通常の武器は耐えきれない……と」


 そう分析しながらも、俺は悪い気はしていなかった。


 いや、どちらかというと不謹慎にも多少調子に乗っていたのかも知れない。


 ――誰の武具でも駄目だった


 ――どんな武具職人(アルムスフォルジュ)が製造した剣も用を成さなかった


 俺の剣を除いては……と。


 「うん、そうかも……ね」


 一方、潜在能力(ポテンシャル)が高いと褒められても表情の暗い少女。


 その時の俺は自身が調子に乗っていて気づいていなかった。


 彼女が現在(いま)まで味わってきた不便さ……いや、不遇さに!


 英雄級(ロワクラス)という特別な立場にありながら”聖剣”を失い、


 ()りとて通常の武具も扱えず、ろくに戦うことも出来ない悔しさを!


 「状況は大体、解った。それで俺に剣を作れって?」


 「ええ、だけど……」


 彼女の言いたいこと、”だけど……”の先は流石に解る。


 幾らマシだからといっても一振りで壊れる剣など用を成しているとは言えない。


 いわば、一発しか弾の入っていない銃で戦場に赴くようなものだ。


 「そうだな。だが俺にも武具職人(アルムスフォルジュ)としてのプライドがある!お前に応えられるような剣を作るのは願ったりだ……そうだな、少し時間を……」


 「ごめんね、あまり……”それ”は無いみたい」


 「は?」


 ――どういうことだ?


 実は”なんちゃって武具職人(アルムスフォルジュ)”のクセにそれは棚に上げ、美少女の前で決意を持ってカッコ良く決めたつもりだった俺はガクリと拍子抜けする。


 「あの……ね、また……巻き込んじゃったみたい」


 彼女の申し訳なさそうな言葉を聞いた瞬間、正体不明の寒気が……


 俺の背中の辺りがゾクリとしていた。


第07話「剣の無い英雄?」END

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ