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たてたてヨコヨコ。.  作者: ひろすけほー
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第五話「お客さん装備品は持ってるだけじゃ意味がありませんぜ?」

挿絵(By みてみん)


イラスト作成:まんぼう719さん

第05話「お客さん装備品は持ってるだけじゃ意味がありませんぜ?」


 「でだ、お嬢さん。あなたは狼の幻獣種(げんじゅうしゅ)に追われているが、戦うための武器が無い……それで目に付いたわが城に飛び込んだと?」


 眼だけを露出した頭巾の怪しい男はそう言いながら古びた木製のカウンター越しに、プラチナブロンドの美少女に対して値踏みするような視線を向けていた。


 「…………」


 ーーなにが我が城だ、ただのオンボロインチキ店の間違いだろ?


 俺は思った。


 そしてその、カウンター前の美少女は華奢な肩を少し上下させていた。


 「はぁはぁ……は、はい……はぁ、はぁ、それで……」


 翠玉石(エメラルド)の瞳が美しい色白の少女。


 整った白い顎の下あたり、やや下方に纏められたプラチナブロンドのツインテールが特徴的な美少女は、淡い桜色の唇を小さく動かしながら乱れた呼吸を繰り返している。


 ーー外人?いや、ハーフか?ファンデンベルグ人?


 ーーどっちにしても希に見る美少女だな


 俺は思った。


 「い、今は……お金は無いの。はぁはぁ、でも、後で必ず持ってくるから……わたしは……」


 ガチャ!


 「!?」


 その少女が自らの名を名乗る前に、黒頭巾はそれを制するよう一振りの剣を差し出す。


 「え……と?」


 翠玉石(エメラルド)の瞳をぱちくりと瞬かせる美少女。


 「持って行きなさい、お嬢さん。お代は後日で結構!」


 ーー幾万 目貫(こいつ)にしてはヤケに気前が良いな


 いや、商売っ気が服を着て……じゃない頭巾を被ってるような奴だ。


 彼女の身なりから、その価値があると判断したのか?


 その光景を眺め、俺はそう考えていた。


 「えっと……ありがとうございます」


 プラチナツインテールの美少女が纏っているのは清楚な淡いグレーのセーラー服。


 襟部分に可憐な白い花の刺繍が施されているところから、この界隈では有名なお嬢様学校である枸橘(からたち)女学院のものだということがわかる。


 ーー”枸橘(からたち)女学院”ね、超のつくお嬢様学校だなぁ


 あ……と、言っておくが、


 俺は別に女子校マニアとかましてや制服マニアとかでは断じてない!


 ”枸橘(からたち)女学院”という学校はこの界隈では超有名なのだ。


 裕福で家柄も良く、ついでに容姿端麗な女子率が非常に高い。


 俺のような一介の学生には手の届かない想像上の秘密の花園。


 俺が通う庶民色たっぷりの一般校でさえ、女子とまともに口をきいたことの無い俺には当然知り合いなんて皆無のお嬢様学校の中のお嬢様学校……


 ーーうむ……キング……いや、”臨海市の桃源郷クイーンオブパラダイス・イン・りんかい”と言っても良いだろう!


 「いや、良くないよ、鉾木(ほこのき)くん」


 ーーはっ?


 「いや、だから、途中から声に出ているって……」


 「っ!?」


 ーーまっマジでっ!


 「…………」


 うわっ!なんかプラチナ美少女が俺を微妙な目で……


 ーーいや!違うんだっ!これは……


 俺はこの怪しくも胡散臭い店の店主”幾万(いくま) 目貫(めぬき)”とプラチナブロンドと翠玉石(エメラルド)の瞳が眩しい謎の美少女の、ここまでのやり取りを店舗後方のボロい椅子にヒッソリと座りながら眺めていたのだった。


 そう、俺はたまたま、ちょうど出来上がった”品物”の納品のために訪れていた。


 「ありがとうございます、えっと?」


 「ああ、幾万(いくま) 目貫(めぬき)だよ、美しいお嬢さん。この店の主人(マスター)でもある」


 「はい、幾万(いくま)さん。お代は必ず明日持ってきます」


ーーくっ……


 完全に目が合っていたのに”居ない者扱い(スルー)”かよ……


 「あ、それと、”コレ”も持って行きなさい」


 俺を無視する二人。


 そして剣を受け取り、お辞儀をした美少女に幾万(いくま) 目貫(めぬき)が追加で差し出した物は――


 ”コの字型”の金属製取手?


 ーーそう取っ手だ、ドアに付いているような


 「あの……ありがとうございます。でも……これは?」


 プラチナブロンドの美少女が浮かべる疑問は当然だ。


 俺にもさっぱり解らない。


 だが、幾万(いくま) 目貫(めぬき)はニヤリと嫌な笑みを浮かべていた。


 いや、黒頭巾で殆ど顔は隠れているが……その眼が全てを物語っていたのだ。


 「お見受けしたところ、かなりの高階級(ランク)でいらっしゃると……ですが愛剣を所持しておられない以上、そのような”片手剣(そまつなもの)”では戦いに支障がでるかもしれないでしょう。その保険ですよ」


 「ほけん?」


 細い首を少しかしげる美少女。


 可愛らしく、小さい耳の下あたりで束ねられたツインテールがさらさらと光の筋となって煌めきながら零れた。


 ーー”そまつなもの”で悪かったな!くそ!


 ーー安値で買い叩いたくせに……


 ってか、小首をかしげたあの仕草、表情、めちゃくちゃ可愛いじゃないか!!


 完全に傍観者たる俺の野次馬的脳みそは結構忙しい。


 「そう保険ですな。なんというかこれは、”(シールド)”ですよ。貴方の命を守る」


 「シールド……ですか?」


 ーーシールド


 ーー(シールド)ねぇ? ーーほぅ、なるほ…………はっ!?


 ーーちょっちょっとまて!それってまさか……


 不幸なことに、その時の俺の予想は的中していた。


 「お嬢さん、これで”ある(シールド)”を扱うことが出来ますぜ、矢鱈(やたら)と文句が多い粗忽モノですが、そこそこ使える商品ですよ…………ねぇ、”鉾木(ほこのき)くん”っと!」


 最後はかけ声のように、


 黒頭巾は手に持った”取手”を手前にたぐり寄せるように振った!


 ーーうわっっ!


 ガタガタガタッッ!!ーーードシャッ!


 途端に俺の身体(からだ)は何かに引っ張られるように椅子から放り出され、そのまま二人がいるカウンターに激突して尻餅を着いていた。


 「ぐっ……いってぇー!なんだってんだいったい」


 俺はしこたま打ちつけた腰の辺りを摩りながら頭上の黒頭巾を睨む。


 「コレは鉾木(ほこのき) 盾也(じゅんや)くん、彼の幻想職種(カテゴリ)は”(シールド)”。まぁぶっちゃけ、この剣と同じただの装備品だと思って持って行くといい」


 ーー”コレ”って言ったっ!?この黒頭巾!今、俺をコレって!!


 「幻想職種(カテゴリ)……”(シールド)”?」


 プラチナツインテール美少女は混乱しているようだ。


 「そうです、”(シールド)”……彼はウチに色々と借金がありますし、お気になさらずこの片手剣の”おまけ”だとでも思って存分に……あっ、装備はちゃんとするように」


 「装備……彼を?」


 プラチナツインテール美少女はますます混乱しているようだ。


 ーーくっ!勝手に話を進めやがって……


 とは言うものの、幾万(いくま) 目貫(めぬき)の言うことは概ね本当で、借金漬けの俺が拒否するのは難しい……


 「え、ええと……」


 予想も出来ない事態から対応に苦慮するプラチナツインテール美少女に、怪しげな黒頭巾は例の”コの字型の金属製の取手”をそっと手渡した。


 「ああ、つまりこうですよ……」


 「?」


 幾万(いくま) 目貫(めぬき)は一瞬だけチラリと床にへたばる俺を見る。


 「お客さん、装備品は持ってるだけじゃ意味がありませんぜ?」


 ーーって、おまえ!それ言いたいだけだろうがっ!


 嬉々として、唯一露出した顔のパーツを輝かせる巫山戯(ふざけ)た黒頭巾。


 「……」


 幾万(いくま) 目貫(めぬき)から半ば強引に金属製のコの字型取手を受け取らされた美少女は、悪ノリについてゆけずに翠玉石(エメラルド)の瞳を丸くしてこちらを見ていた。


 驚いて開かれた翠玉石(エメラルド)の瞳……


 白い肌に、少し高揚して色づく頬と小さく開いた桜色の唇、


 キョトンとした無防備な表情でこちらを伺う超の付く美少女。


 「…………」


 ーーうぉっ!近くで見ると更に可愛いなぁ!


 何故にそう言う状況になるのか?


 その”取手”は一体何なのか?


 ざっと見積もるだけでも突っ込みどころが多々あるだろうに、すぐ目の前……


 俺の人生で存在しなかった、砂かぶり席から見る希有な美少女に――


 俺は唯々そんなことを考えていた。


 「……」


 「……」


 ――くっ!沈黙が……キツい


 「え、えっと……ぐ、ぐーてんあべんど?」


 そして何故か、俺は先ほどまで充分に流暢な日本語で話していた相手に、ド下手な発音の片言ファンデンベルグ語、そしてそれに輪をかけた無様なぎこちない作り笑いを浮かべ、とびきりな美少女にいまさら間抜けな挨拶していたのだった。


第05話「お客さん装備品は持ってるだけじゃ意味がありませんぜ?」END

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