第4話
今日もゆるくいきます!
始業式を終え、初日から校長先生のお説教を喰らった梛ノ宮先生の話が終わり、今日はもう下校となった。先生が時折落ち込んだ表情を見せるのには、誰も触れなかった。
「じゃあ、皆。明日からよろしくね!」
先生は足早に教室を出て行った。
じゃあ、俺も部室に寄ってから帰るか。
「なあ、与。俺達も帰ろうぜ!」
「さり気なく名前呼びになっているのと、去年からのクラスメイトみたいなノリで話しかけられるのが、ひどく不愉快なんだが」
しかも、小声でツッコむのが面倒くさい。
「何だよ。なんか用事でもあんのか。俺もう今日はパンツ見なくてもいいんだけど」
「部活動だよ」
「え?お前、部活なんて入ってんの?あんだけ俺にギャルゲーがどうのこうの言っておきながら?」
「いや、そこまで語ったっけ?」
「いいか、ボウズ。ギャルゲーの主人公っていうのは、帰宅部が一番なんだよ。じゃなきゃ、放課後のイベントの自由度がなくなっちまう。まあ、たまにサッカー部とかに助っ人を頼まれるくらいがちょうどいいな。まあ、何を言いたいかといえば、お前は損してるんだよ」
「はいはい」
「さらっと受け流しやがっただと!?この、クソガキ……」
なんで幽霊のおっさんにギャルゲーの主人公論を聞かされなきゃならんのか。
しょうもないやり取りをしている内に、部室の前に到着する。
「何……だと……」
「何だよ」
「いや、似合わねえなって……」
「うるさい」
部室の扉の上の表札には、『軽音部』と書かれている。
しかし、俺としてはこの表札を見ても溜息しか出てこない。
いつものようにコンコンと軽くノックをすると、中から渋い声で『どうぞ』と返事がきた。
なので、そのまま扉を開ける
「与か。そっちはもう終わったのか」
そこには、作務衣姿に眼鏡で坊主頭の、学校内に似つかわしくない男が読書に耽っていた。
「ええ。先輩は……またサボったんですか?」
「うむ。特に参加する必要性も感じなかったのでな」
「そうですか」
いつもの事なので、そこはスルーしておく。
「なあ、ここって軽音部じゃないのか?てか、こいつ、かなり変わり者だろ」
軽音部云々はおいといて、変わり者という部分は否定しようがないので、小さく頷いた。この端正な顔立ちに似合わない坊主頭の先輩・一ノ宮陸は、校内一の変わり者と全校生徒から認識されている。
最初は登下校の作務衣着用とか、無駄に成績優秀で目立っているだけかと思ったのだが、俺の高校最初の1年間で、根っからの変わり者だと身をもって知る羽目になった。それと、軽音部で高校デビューをしようとした俺の計画はあっさり頓挫した。
「むっ、時間か。与、すまん。俺は先に帰るぞ」
「お疲れ様です。今日は早いんですね」
「ああ、風の便りという奴だ」
先輩はあっさり部室を出て行った。
「……何だったんだ?」
「……いつも通りだ」
「大体、軽音部でモテようってのが浅はかなんだよ」
「うるせーよ。ヘアピンに黒タイツの可愛い女子と仲良くなれると思ったんだよ。ついでにしっかり者の妹とも仲良くなれると思ったんだよ。歌うだけで幸せとかかなり地球に優しいエコだろうが」
「残念だが、その歌は女子しか応援してねえんだな、これが」
「お前、無駄に詳しいな」
俺もすぐに部室を後にした。
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