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僕は、姉になる  作者: ◆fYihcWFZ.c
第三部:おねショタデート 2009年4月
17/47

3 ネタバレ

        <<瀬野悠里視点>>


 まだ慣れない部活の疲労を全身に覚えながら、ようやく家に帰りつく。

 『体育会系文化部』という話は事前に聞いていた演劇部。運動不足気味の自覚はあったからありがたくはあるけど、中等部1年と並んで部の最下位クラスの体力を克服するのはかなりかかりそうだ。


「ただいまー」


 返事はない。俊也はとっくに戻っている時間だと思ったけど、何かで遅れているのだろうか。それともまた読書か勉強に集中して気が付いてないのか。

 そんなことを考えながら自分の部屋のドアを開けると……ベッドの上に『私』が寝転がっていた。

 シースルーでオフホワイトの衣装で仰向けのまま瞼を閉じ、微かに息をしている。


「むう」


 これは寝ているのだろうか。起こしたらまずいのだろうか。逡巡しながら、眠れる美女の様子を見守る。

 私の手でもすっぽり包める小さな顔。長い睫毛が濃い陰を落とす、透明感ある滑らかな頬。シミもニキビもない肌。すっと通った細い鼻梁。尖ったおとがい。折れそうな長い首。華奢ななで肩。無駄な肉のない二の腕。ゆっくりと上下する豊かな胸。高い位置で括れたウェスト。股下10cmくらいのミニスカートから伸びた形の良い脚。つるりとした膝。指で軽く掴める足首。ふんわりと漂うフローラルなオーデコロンの香り。

 鏡や写真で見るよりもずっと美人に見えるのは、ナチュラルに見えるように計算された、でも丹念に施された化粧のせいだろうか。『写真より実物のほうが可愛い』というアレだろうか。それとも素の状態でこちらのほうが本当に美人だからだろうか。


 前に2人鏡に並んだときは見分けが付かないくらいだったし、最後でなければ良いのだけれど。

 どこからどう見ても飛び切りの美少女にしか見えない、ベッドの上の『私』──実際には私の実の()である俊也に美人度で負けたとあっては、かなりの屈辱である。


 服越しにうっすら見えるブラジャーに包まれた私より2サイズ大きな胸は作り物だし、女物のショーツの中には男のものが付いている。──ちょっと自信なくなってきたけど、付いているはず。たぶん──

 年齢的には二次性徴まっさかりなはずなのに、大昔ママによく女の子の服を着せられていた偽幼女時代そのままに、男らしさの片鱗も見えない。男子の詰襟を着ている時でさえそんな感じなのに、下着まで含めた完全女装している今なら尚更だ。

 そんなことをつらつらと考えていると、睫毛が微かに震え、俊也が目を覚ました。


「おはよ、悠里(・・)

「あ、お姉ちゃん? お帰り。……ごめん」

「いやいいけど。……今日のデート、どうだった?」

「ん……最悪……」

「最悪、って、あっさりばれたとか?」

「どうだろう……たぶん、ばれなかったとは思う……色々あるけど、視線がきつくて、まだ粘りついてる気がする」

「それは……」


 うん。自業自得過ぎるだろう。

 タートルネックでノースリーブなニットサマーセーターに、タイトなマイクロミニスカート。その上からシースルーなシフォンのカーディガンとソフトチュールのマキシスカートを羽織っている。それも上から下まで全部白系統一だ。

 正直『デート』というよりは『パーティー』向けのコーデで、街中を歩くには目立ち過ぎる。むしろ、『私を見て!』と全身で主張しているような格好。この様子だと多分写メで撮ったものをネットにアップされているだろうし、ウィッグと化粧である程度は誤魔化せるから私と気付く人はそんなにいないだろうけど、でも今から頭が痛い。

 これなら、今日のコーデくらい指定してあげてやっておくべきだった。


「亮介の奴、僕の胸ずっと見つめ続けてるし……」


 それも自業自得だ。

 一応成長期で余裕を持たせたとはいえ、もともとBカップの私の身体にフィットするトップス。アンダーバストが幾分大きい上にDカップのパッドを入れたこの状態だと、非常に窮屈で(偽)バストの形状がよく分かる状態になってしまっている。思春期の男の子にこの光景は目に毒だろう。

 ……というか、俊也も時々私の胸に注視している自覚がないんだろうか? それとも気付かれてないとでも思っているのか。


「それに──」

「……それに?」

「いや。……あと、普段使わない筋肉酷使したから全身痛いし、慣れない靴で歩き回ったから脚が痛くて」


 玄関にあったパーティー用の白い7cmヒールの靴か。あれは確かに私でも厳しい。1時間も歩けばそれで限界だと思う。


「それはもう、慣れるしかないかな。世の中の女性はみんな頑張ってるんだから」

「……お姉ちゃん。僕、もう二度と女装しないから」

「あら? そう。残念」


 まあ、何があったかは知らないけど、余程嫌なことがあったのだろう。それなら無理強いすることもない。


「まあ、それならとっとと化粧落として服着替えてきなさい」

「うん……そうする」


 きつそうに身体を起こし、扉を開けて去っていく女装の弟。

 色々購入した品が無駄になるのは勿体ないし、もっと色々楽しめるかと思ったのにこれで見納めかと思うと少し残念。


____________



追伸


 『もう二度と女装しない』と宣言した俊也。


 次の週には部屋でこっそり下着女装を始めて、ゴールデンウィークにはもう私の服を着て女の子として遊び回り、1か月もしないうちに私に黙って私の名前で女性ファッション誌の読者モデルに応募してやがりました。


 なんとも意志薄弱な弟である。


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