表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は、姉になる  作者: ◆fYihcWFZ.c
第一部:「魔が差した」としか言いようがない 2009年3月
1/47

1 僕が『お姉ちゃん』になった日◆

 これは女装と近親相姦のお話です。苦手な方は回避お願いします。

「ところで俊也。明日はヒマ?」


 ある日の晩飯の席。悠里(ゆうり)お姉ちゃんがそんなことを唐突に言ってきた。


「できれば明日一日で春休みの宿題を終わらせときたい、ってくらいかな。今のところ、特に用事ってほどのものはないね」

「友達と遊びに行く約束とかしてないんだ。なら、明日は一日デートに付き合ってくれない?」


 僕たち姉弟の間では、『デート』と称して一緒に買い物に行くのを昔は時々やってきた。

 最近なかったお誘い。心が躍るのを表に出さないようにするのに苦労した。


「なんだか久々だね。うん、いいよ 今度は何を買いに行きたいの?」

「いや、買い物もあるけど、純粋に男女としてデートしてみたいなぁ、って」


 その言葉にむせる僕。

 お姉ちゃんが何か企んでいるときに見せる笑顔が、その日はなぜかとっても眩しく見えた。



 その次の朝。朝食を食べて、お父さんが仕事に出かけたあと。


「じゃあ、デートの準備はじめよっか。俊也、私の部屋に来て」


 掛けられた声に少し疑問を抱きつつ部屋に入ると、部屋着姿のお姉ちゃんがベッドの上に色々衣類を並べているとこだった。


「お姉ちゃん、来たけど準備って何?」

「うん、まずは服を全部脱いで、これ着てね」


 そう言って手渡されたのは、女物の下着一式。


「……へ? どういうこと? まさかこれを着ろって? 僕は男だよ」

「いいじゃない。もう何回も着てるんでしょ? 一度お姉ちゃんにきちんと見せて欲しいな」


 『“何回も”なんてやってない。まだ1回だけだってば』


 一瞬そう抗議しかけたけど、でもそれじゃただの墓穴だと気づいて慌てて口を閉じる。弱みを握られてるんじゃ仕方がない。お姉ちゃんの言葉に従うだけだ。


 ──いや、それは言い訳だと自分でも分かってる。この胸のたかぶりは自分自身には隠せない。それはきっと、お姉ちゃんにもばれてるだろう。


 しぶしぶ、のふりをして後ろを向いて裸になり、渡された下着を手に取って眺める。

 薄緑色をした、柔らかで柔らかで滑らかでふわふわして手触りの良すぎる物体。男物の衣装にはありえない、細かな白いレース、前についた小さなリボン。僕の心臓はもう、さっきからもうバクバクいいっぱなしだ。

 姉と弟。決して叶うことがないと分かってる、僕の初恋の相手の女性。その人の下着を、本人がまじまじと見つめるその前で穿かされるシチュエーション。片足ずつ持ち上げて、そっと足を通していく。(少なくとも記憶にある限りでは)これが2度目とはいえ、男物の下着と違いすぎるこの感触に慣れることはなさそうだ。


「あなたまだスネ毛ほとんど生えてないんだ。きれいな足してるわねえ」

「クラスにはボウボウの子もちらほらいるけど、僕はまだ全然だね」


 最後まできちんと穿いて、股間のものを収める。堅くなりかけだけに辛いものがあるけど、それでも布の外にはみ出さずに済んだ。布が股の間をそっと包む感覚がなんとも言えない。


「次はブラジャーだけど、大丈夫? ちゃんとした付け方分かる?」

「たぶん、なんとか……」


 下と同じ色の、レースで飾られた普通の男なら決して身に着けることのない下着。昨日タンスの中身を見たお姉ちゃんの持ち物の中でも、とりわけ可愛らしいデザインの一品。

 ウェストのところで後ろ前につけて、その状態でホックを留める。前回後ろでホックが留められず、悩んで編み出した方法──なのだけれど。


「違う、違う。やっぱりちゃんとした付け方教えるわね?」


 すぐにダメ出しされて、『正しいブラジャーの付け方』をレクチャーされる。

 まずはお姉ちゃんが上半身裸になって、ブラジャーの肩ひもをかけた状態で身体を倒し、そっとカップにおっぱいを入れて後ろ手にホックを止めて、手間をかけて調整して終了。思春期真っ盛りの童貞少年には、余りに刺激的過ぎる光景。さっき穿いた女物の下着から先端が覗いている状態だけど、そこに手を伸ばすことも目を背けることも許されない。


 『女の子がブラジャーをする仕草』って、何故こんなに可愛くて綺麗で色っぽいんだろう。

 でも、自分でその動作を真似させられるとなると、また話が別だった。背中のホックに手が届かなくて四苦八苦。つってしまいそう。


「まあ今日はこんなところで許してあげよっか」


 とようやく開放された時には、流石にめげてしまいそうだった。

 下を向くと見える、ストッキングを丸めて詰めた丸い2つの盛り上がり。男にはありえない胸の膨らみ。せっかく大人しくなった股間が、また充血し始めるのを感じる。


「んー。やっぱりイマイチかなあ。今日は仕方ないとして、もっとまともなパッド欲しいな」

「お姉ちゃん、ひょっとして今日だけじゃなくて、またやるつもり?」

「こんなワクワクすること、1回で終わらせるのはもったいないと思わない? ……じゃあ、次はスリップをどうぞ。これは分かるよね? 頭からかぶるだけだから」


 そういえば前回は着なかった、なんだかツルツルする同じく薄緑色の布地。

 これは普段着ているノースリーブと変わらない……かと思っていたのに、いざ着てみたら生地が薄すぎて力を変に入れると破けそうで、動き自体が微妙な感じになってしまう。自分の意思はお構いなしに、自分の動きが『女らしく』矯正させられてしまう不思議な感覚。

 肌に吸い付いてくるような柔らかな感触もなんだか不思議な感じ。自分が身に着けている下着から、微かに漂ってくる女の子の匂い。お姉ちゃんの匂い。

 この前は半分以上テンパってた状態。改めて落ち着いて五感で知覚するのは、なんとも不思議な体験だった。


「うーん、本当に可愛い。じゃあ次はメイクしよっか」

「そこまでするの?」

「うん、やるなら徹底的にね」


 椅子に座り、お姉ちゃんのほっそりした指先が僕の顔を女らしく彩っていくのをじっと待つ。

 妙な匂い、ひんやりとした柔らかい物体が自分の顔を丁寧に撫でていく奇妙な感覚──でもそれを『気持ちいい』と感じている僕がいて、なんとも落ち着かない気分になる。何かクリームっぽいものを何種類か肌に塗り、微かに色のついたリップクリームで唇をなぞって完了。

 お洒落とはいえ流石に中学を卒業したばかりの年頃なので、簡単すぎる化粧。それでも訪れる、自分が自分でなくなったような心地にうっとりとする。この感覚はお姉ちゃんに気取られないようにしないと──と思うけど、やっぱり無理なだよな、ともすぐに思い直す。


 頭にネットみたいなものをかぶせられ、その上から長髪の黒髪のカツラを被せられる。これは前回も被った、お母さんの遺品の中にあったカツラ。地毛の長いお母さんが何故持ってたか分からないけど、これを見つけたことがこの間のオナニーのきっかけでもあった。

 ずっと鏡を見せてもらえてないけど、今の僕はどんな状態なんだろうか。

 テレビとかで見る女装の人は、気持ち悪いか、あるいは綺麗に見えてもよく見ると違和感が出るような感じだった。僕はどっちだろう。前回は『お姉ちゃんそっくり』と思ったけど、それも錯覚じゃないかと不安になる。


「うんっ、完成!」


 なんだかすごい時間が過ぎたような、逆に一瞬だった気もする時間が流れたあと、お姉ちゃんが満足そうな笑顔でうなずいた。


「やっぱり()ってすっごく可愛いんだね。鏡で見るときとは結構違うなあ。さ、立って」


 言いつけ通り立ち上がって、二人並んで鏡に映る。

 目に入ったものが、信じられなかった。


「お姉ちゃん……? が、ふたり?」


 自分でも意識しないうちにふらふらと鏡に近寄り、そっとその『少女』の姿を撫でる。

 鏡の中の『お姉ちゃん』も、どこか呆然とした、どこか満足したような表情で同じ動きを繰り返す。それでも2人のお姉ちゃん(・・・・・)のうち、片方が()だという実感が浮かんでこない。

 僕が身動きするたびに、サラサラという音が微かに耳に届く。女の子の服というのは、なんでこんなにちょっと動くだけで気持ちがいいんだろう。思わず先走り液がにじみ出るのが分かる。自慰をしたくなるのを抑えるのが大変だった。


 もう一人のお姉ちゃんが背後から僕の身体をぎゅっと抱きしめ、顔同士をくっつけてくる。すぐ近くから漂う匂いにドキマキし、その匂いが自分の服からも漂うことにドキマキする。

 前は『お姉ちゃんそっくりだ』と思ったけど、こうして並べると『そっくり』なんてレベルじゃなかった。まるで一卵性の双子の姉妹のよう。


「本当、私たちがこんなにそっくりだと思わなかった。まるで双子の妹ができたみたい」


 姿が似ると思考も似るのか、僕と同じような考えをお姉ちゃんが口にする。


「──この話、俊也は聞いたことあるかな。私ね、本当は双子だったんだって。でも双子の妹はお母さんのおなかの中で、途中で成長がストップして死産で。結局生まれたのは私だけだった、って。でもこうしていると、まるでその双子の妹が生まれてここにいるみたい」


 異性として憧れていた人に背後から抱きすくめられるドキドキ感と、その人と同じ姿になっているドキドキ感、それにその人の下着を身に着けているというドキドキ感。


 今バクバクいいまくってるこの心臓は、どれが原因なのだろう。


____________



 ──やっぱりお姉ちゃんは世界で一番可愛い。


 茶色のブレザーに青いチェックのミニスカートの真新しい制服姿。デザインが可愛いことで有名な女子高の制服姿が似合って、最高に可愛い。

 身体のラインの出るグレイのニットセーターに黒いデニムスカート。最近のお姉ちゃんが好んで着ているやや地味な普段着だけど、洗練された感じでやっぱり可愛い。

 仕立ての良い白いブラウスにロングスカート。お嬢様然とした姿も反則的に可愛い。

 もこもこセーターにマキシスカートの、女の子らしい服も抱きしめたくなるくらい可愛い。

 身体にフィットした紺のスーツ上下の姿も、大人びて可愛らしい。

 フリルとレース満載な花柄ワンピースにボレロを合わせた姿も悶絶しそうなくらい可愛い。


 お姉ちゃんと僕の、2人きりのファッション・ショー。

 鏡の中にいる『お姉ちゃん』の可愛らしさに、僕はすっかり魅了されていた。

 隣の衣裳部屋からも服を漁ってきたりもして、充分堪能したあとベッドに座って少し休憩。


 今の自分はシンプルな艶のある黒のロングドレス。鏡に映る姿は綺麗で可愛い。

 死んだお母さんの代理で、夫婦同伴のパーティに参加する時に着ているのを見かける衣装。飾りを一切排したデザインだけど、その分身体のラインが際立って美しく見える。ドレスとスリップ、2枚の布の下の僕の体は男のものなのに、こんなに薄い2枚の服を纏うだけで見事に誤魔化されているのが不思議なくらいだった。

 今までお姉ちゃんがこのドレスを着るところを見るたびに、讃嘆の念と同時に感じていたモヤモヤした思い。それが『自分もあんなドレスを着たい』という嫉妬だったとようやく気付いて、なんだか複雑な気分になるけれど。


 お姉ちゃんが衣装持ちなことに感謝する。

 袖を通す時のすべすべ感、肌を撫でられるような感覚、そっと包み込む柔らかさ、身動きしたときの衣擦れの音、ほのかに漂ういい匂い。自分が女の子の服を着るのがこんなに好きだったなんて、僕自身驚くしかない事実だった。

 お姉ちゃんの衣装を着て、お姉ちゃんとしてここに座っている自分。……『瀬野悠里』が普段感じている世界ってこんなものなのかと、感動すら覚えてくる。

 胸の鼓動がどうにも落ち着かない。


「おわっ」


 自分の世界に入り過ぎていただろう。突然ウェストあたりを鷲づかみにされて驚く。


「ダメよ。今あんたは女の子なんだから、男っぽい驚きかたしちゃ」


 お姉ちゃんが驚いた時の反応も大差ない気がするけど、言わないほうが良い気がした。


「それにしてもあんた、ウェスト細いのねえ。私のスカート、なんで穿けるのよ」

「いや、流石にちょっと苦しい感じはしたよ?」

「だからその、『ちょっと苦しい』だけでちゃんと入るのが、既に変なのよ。うちのクラスでも、私のスカート穿けるの何人もいないんじゃないかな」


 返答に困る僕の僕の背後に回って、脇の下からお尻までのラインを何度も撫でてくる。


「細身だから分かりにくいけど、でもやっぱり体のライン自体は男の子なんだね。春物の間はいいけど、夏物だったらちょっと厳しいか」


 この人は、一体いつまで僕に女装させるつもりなのだろう。

 ……そして僕は、一体いつまで女装を続けたいのだろう?


「それにしてもあなた、身長伸びたよねえ。──ちょっと立ってくれない?」


 立ち上がって2人背中合わせになって、背丈を比べてみる。


「前はもっと差が開いてたのに、こんなに迫られちゃって。今はまだ私がちょっとだけ高いけど、もうすぐに抜かれちゃうんだろうなあ」

「お父さん180cmあるもんね。今でも僕、クラスの中では背が高いほうだし、成長すればお父さんと同じ位の身長になるんじゃないかな」

「背も高くなって。声変わりもして。スネ毛も生えて。筋肉もついて。……これからどんどん男らしくなっていく時期だもんね。……ね、だから。今この貴重な時間を楽しみましょう?」


 やっぱり外見が似ると、考える内容も似てくるらしい。


 鏡の中にいる『お姉ちゃん』が、恥ずかしげに、でもどこか嬉しげにこくんと頷くのが見えた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ