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龍と魔女と迷宮と  作者: 菊地
7/12

7 迷宮

目の前を焼き尽くす、業火。その炎は対象だけではなく、直線状にあるものすべてを焼き尽くす。炎が終わった後、直線状に残るものは皆無だった。

魔物はおろか草や木々、そこにあったもの全てが焼き尽くされ塵となっていた。


その炎を吐いた本人は気楽な顔をして私達の所へとやってくる。

「やりましたよ! 褒めてください、アイリス様!」

褒めてもらいに私のもとへとやってくるヴィル。


どうしたこうなった?


いつも通りの、昼下がり。

私は頼まれていた薬を作っていた。

ヴィルは外へと夕飯のための食材を買いに行ってる。


そんな平穏な時のことだった。

「ヴィルいるー?」

扉を勢いよく開けて、大声をだす友人。

「フラム、うるさい」

「うるさいって何よ。酷いねぇ」

一言文句を言うが気にした様子もなくさらりと受け流す。

まあ、フレアが勢いよく扉を開けるのはいつものことだ。

危ないから止めてくれと言っているのに止める気配は一向にない。


「で、何の用。何かあってきたんでしょ?」

「いやぁ、それがね。新しい魔物が確認されたからヴィルも一緒にいかないかなぁと思って」

「何層?」

「一層、浅いところだからすぐ終わるって」

一層か……今更そんなところに新しい魔物が出てくるのか。

それは私も行きたいな。

勿論、興味があるのは魔物本体ではなく、魔物が持つ成分の方だ。

薬になるものもあるかもしれないし、毒になるものもあるかもしれないからね。


問題はヴィルだ。

言うと絶対にヴィルは行きたいと言い出すに違いない。

しかしヴィルを連れて行くと面倒くさい事は間違いない。

どうにかして置いて行かないと。


「ただいま戻りました! あれ? フラム様いらっしゃったんですね」

そんなことを考えていると帰ってきた。

さて、どう言いくるめようか。

「あ、ヴィルちゃん! これから迷宮に行くつもりなんだけどヴィルちゃんも行く?」

「迷宮ですか!? 私も行きたいです!」

おおい、フラム。なんてことをしてくれているんだよ。

あなたがヴィルを誘ったらもう、終わりじゃない!!

「やった! アイリス様と迷宮!」

当のヴィルは食材を放っておいて準備を始めているし。


はぁ……諦めるか。



迷宮……それはミゴンの中心にある。

誰が作ったかなど分からない謎に包まれたもの。

入口が小さい割には、中は広く、全く違った世界が広がっている。

深き森や、山岳地帯、果てには海までもがある。

何層まで続いているのかは誰も知らず、最下層まで辿り着いたものは誰もいない。

謎多きものである。

「わぁーこれが迷宮ですか!!」

ヴィルが感激の声を上げる。

迷宮一層は森林である。

生い茂る木々、そこに生息している数々の魔物。

対して危険な魔物もおらず、まあ、危険もほとんどない。


と、この一層は無視だ。今日の目的は二層にある。

今日のメンバーは私とフラムとヴィルだ。

まあ二層までしか行かないし余裕だろう。

「あ、見て下さい!」

ヴィルの森の中、ぴょこっと顔を出す半透明の物体。

スライムだ。まるっとした可愛らしい見た目とは裏腹に、物理的な攻撃が効きにくい上に、厄介な消化液まで吐き出してくる。

一層にしては厄介な魔物なのだ。

「可愛いですね~」

そんなことを知らないヴィルはそのぽよぽよとした物体へと近づいて行く。


「ヴィル!? 危ないって!」

「大丈夫ですよ~。こんなスライムが私に逆らうわけ……」

ぶっしゅという音と共にヴィルの顔にかかるスライムの消化液。

ヴィルの笑顔が固まった。


「このスライム如きが。私に逆らうというのか。よかろう、地獄を見せてくれるわ」

「ちょっと、ヴィ……」

私が止めようとした瞬間、ヴィルの口から放たれる炎。


後は冒頭の通りである。

正直こんなに威力があるとは思わなかった。

「アイリス様?」

呆然としている私達を前にして首を傾げるヴィル。

「いや、何してんの」

「え、いや外敵は排除しないと……」

「今のは完全にヴィルの油断でしょ。それに、やりすぎじゃない?」

真っ黒になった大地を指す。

いくらなんでもこれはやりすぎでしょう。

そもそも今スライムを倒す必要はない。目的は二層だ。

肩を落としながら後ろをついてくるヴィル。


「私だって……あの可愛いのを撫でまわせると思ったのに……まさか消化液を吐かれるなんて……」

ぶつぶつと聞こえる。いや、気持ちは分からないでもないけど魔物だからね?

と言うか消化液を顔面にくらって何ともないのどうなんだろうか。

「いやぁ、凄いね。あんな炎、初めて見たよ」

フラウが呑気なことを言う。

いや、確かに凄いけどさ。そう言う問題じゃないよね?

「あ、ありがとうございます!」

「流石、ヴィルちゃんだね~」

「いえ、それほどでも……」

って、もう調子戻ってるし。

簡単すぎるでしょ。


そのまま、森の中の階段を下りて行く。

一層の森を抜けた後の二層。

そこは一層とはうって変わってだだっ広い草原。

終わりがなく広がっている草原にも勿論魔物はいる。

一層と違って見通しがいい分魔物も見つかりやすく、奇襲されるようなことは無い。


「で、今回出た魔物はどんなの?」

「それがねぇ、珍しく人型らしいよ。凄い勢いで襲ってきたらしいよ。転移テレポートを持っている魔女がいて何とか助かったんだって」

人型……ねぇ。

ま、どうにかなるでしょう。


草原にいる、ゴブリンやスライムを片付けながら目的の魔物を探す。

相変わらずヴィルの力加減が大雑把で焼野原とかしている場所もあるけれど、気にしたら負けだと思う事にした。


それからほどなくして出てきた噂の魔物。

ヴィルよりも小さく、小柄で角と尻尾が生えた少女。


……あれは魔物なのか?


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