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ヘイヨーさんの短編集

1日1殺ブッ殺しジョニー!

 アメリカのド真ん中のある街で、ある日、ジョニーはついに限界を感じた。

 日々の不満がたまりにたまって、ストレスマックス頂点に達したのだ!!


「ああああああああ!!もう!!!!クッソつまんねえ!!世の中、クッソつまんねえ!!やってられっか!こんな人生!!みんな滅びちまえ!!」


 ここで軽く解説しておくと、ジョニーは実に平凡な奴だった。

 特に何か変わった経験をしているとか、特別な環境下で生きてきたとか、そういう男ではない。

 実に平凡。平々凡々とアメリカンスクールライフを過ごし、ハイスクールを卒業後は近所のコンピューター組み立て工場で、パソコンのパーツを組み上げる毎日であった。

 このままいけば、順風満帆じゅんぷうまんぱんに人生を過ごし、ちょいとおデブちゃんのアメリカンガールなんかをつかまえてホテルに連れ込み、アナザーなアメリカンと同じように赤ん坊をこさえて、「チッ、仕方がねえ。ボーイも生まれたし結婚すっか」なんて言いながら教会に向い、数年後には家の外に女を作り、デブデブに太った奥さんに訴訟を起こされ、裁判所に出頭して離婚調停が行われ、裁判官から「今後、15年間、子供が成人するまで養育費を払い続けるように」などと判決がくだされて、仕方がなしに毎月600ドルの養育費を払い続けていたのだが、ついに面倒になって支払いがとどこおるようになる。などというお決まりのアメリカ人のライフパターンにはまって、それなりにハッピーにそれなりにアンハッピーに生きていくはずだった。

 だが、幸か不幸か、ジョニーはその先の未来まで見通してしまったのだ。

 そうして、カンカンとお日様の照りつける大きな青空に向ってこう叫んだ所であった。


「やってられっか!こんな人生!」


 こうして、平凡なジョニーは“ブッ殺しジョニー”へと変貌へんぼうげたのである。


          *


 ブッ殺しジョニーは、家に置いてあったショットガンを手にすると、愛車のジープに乗りこんで颯爽さっそうと旅に出かけた。

 そう!ジョニーは、心の底でこう決めたのだ。


「これから毎日、必ず1日1人はブッ殺す!!」


 公約通り、ジョニーは毎日人をブッ殺した。

 まずは、パッと目についた近所のババアに向ってショットガンを1発ズギュ~ン!

 見事にババアの頭は吹っ飛んだ。


 ブッ殺しジョニーは、ケラケラ笑って喜んだ。

「ケケケケケケ!こいつはいい!スカッとしたぜ!これで、本日のノルマはクリアーだ!」


 その後も街の人間を撃ち殺しまくり、愛車のジープで逃走し、隣街、さらに隣街、そのまた隣街…と全米中を渡り歩いて、平穏無事に暮らしている住民を撃ち殺し回った。


 幸いなことに、ここアメリカでは、全米ライフル協会のおかげで銃は手に入れたい放題だった。

 警察やFBIに指名手配され、その辺の店で銃や弾薬が手に入りづらくなったとしても別に困りはしなかった。なにしろ、アメリカ人はみんな誰でも銃の1つや2つは持ち歩いているものなのだ。その辺を歩いている住民をおどしてやれば、ロールプレイングゲームでモンスターを倒してお金やアイテムをゲットするのと同じくらい簡単に次の武器を入手することができた。

 あるいは、その辺のおうちに「よっこらせ」と侵入し、適当に部屋を物色すれば、やっぱり銃の1つや2つは簡単に見つかる。

 ジョニーはテレビゲームみたいに、銃を手に入れては人を撃ち殺し、また銃を手に入れては撃ち殺しという行為を繰り返した。

 そうして、「必ず1日に1人はブッ殺す!」という自らが課したノルマだけは守り続けた。


         *


 それから、何日が過ぎただろうか?

 ブッ殺しジョニーは、アメリカの中でも辺境の地にたどりつき、段々と人気ひとけがなくなっていくのを感じていた。

「ヤベエ!このままじゃあ、ノルマをこなせなくなるぞ。どうする?」

 などと不安に感じたが、それでも数日間はどうにかなった。過疎化の進んだ荒野の街のすみにでも、じいさんやばあさんの1人や2人は暮らしているものだ。

 ジョニーは、そんな年老いた人間たちを、まるで冷蔵庫の裏に隠れているゴキブリを見つけて退治するみたいに、1人また1人とブッ殺し続けていった。


 ところが、ついにジョニーは誰にも出会わなくなる。

 そうこうしている間に、夜中の0時は近づいていく。コッチカッチコッチカッチと、手にした時計が秒針をきざんでゆく。

 無情にも時計の針は進み続ける。

 そうして、腕時計が夜中の11時59分を指し示した時だった。


「仕方がねぇ!こうなったら…」

 ジョニーは手にした銃を自分自身のこめかみへと向ける。そうして、なんのためらいもなく引き金を引いた。


 ズギュ~ン!


 見事、銃弾はジョニーの頭を貫いた。

 こうして、ブッ殺しジョニーは最後の最後までおのれの信条を貫き通したのであった。

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