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ちょんまげとバズーカ  作者: シーサイド地蔵
2/5

『Aパート』



 朝、目が覚めるとそこは凄く清潔な部屋だった。薄い青の壁紙、貼られているのはアニメのポスター。お洒落な本棚には数冊の漫画とライトノベル、観賞植物が置いてあったりして何とも居心地の悪い……男の部屋。


 ちょっと待ってよ、ゾンビハンター狂花の世界だよね? 私、狂花なんだよね? けど部屋にある姿見で確認すると、私は背の高い男の子になっていた。


「なにこれ……」


 声まで変わってる。え、あのゲームって男性バージョンもあったの? いやいやそんなハズはない。男が選べるのはⅦだし、だいたいゲームのスタートは廃墟とか研究施設の一室から始まるのがお約束だ。こんな部屋からなんて有り得ない。




 性別はどうだっていいや、自分じゃ自分を見れないし。殺しまくるだけなら寧ろ男の方がリーチも長いしお得じゃない? どうせ身体能力強化されてるしアイテムだって……


 あれ?


 ない、ないよ?


 バズーカもマシンガンも無いじゃない! それにこの身体、そんなに筋肉ついてないし! ひょろひょろでどうみても弱いじゃないのさ!


 その時、不意に部屋の前に気配が。緊張が走った。


 ゾンビハンター狂花では、だいたい初めの部屋から出ようとするとゾンビが一体部屋になだれ込んでくる。来やがった、畜生! 私はこんないきなり死にたくない、絶対に生き延びてやる! ドアが開くその時、私は先制攻撃とばかりに拳を握りしめて飛び交った。


「お兄ちゃん、おは……」


 パコーンッ!


「ふばっ!?」


 何かが吹っ飛んだ。あれ? なにこの擬音。パコーンッて。あんだけ力一杯殴ってパコーンッは無いでしょ。案の定、吹っ飛んだ何かはむくりと起き上がって私の方へと近づいてくる。おのれゾン……美少女?


「こ・の・バ・カ・お・に・い……ちゃあああああんっ!!」


 ドガアァァァァァァンッ!

「ふぼあぁぁぁぁぁぁぁあっ!?」


 飛んだ。盛大に。

 屋根突き破って空に。というか宇宙に。いやいやいやいや、なにこれなにこれ! 私、一体どうなってんの!? 星、星と同じ高さだってここ!




 よくわからないまま、私は意識を失った。







 私が自分の状況を理解したのは、意識を取り戻してからその日1日を見知らぬ学校で過ごし、家に帰る頃だった。ここ、ゾンビハンター狂花の世界じゃないわ。あれよ、あれ。男の子が好きなオタクアニメか何かの世界。異常に濃い女の子が、とにかくワケも無く私に纏わりついて来るの。もう、本当に、バカじゃないの?


 朝の子は義理の妹。黒髪ツインテールで前髪を一直線に切りそろえてる子。さりげなく甘えるのなら可愛げもあるのに、もうベタベタうざいったらない。おまけに朝からアレなニオイ漂わせて発情期か。恥ずかしいとかないんか。でもって中学3年生なのに生徒手帳には18歳とか意味分かんないし。それは私も高校のクラス全員も言える事だけど、何故かこの世界は18歳から年齢を数え始めるみたい。……頭痛くなる。


 次。幼なじみ。隣の家の子。ピンクのロングヘアーとか何者か。パンク? スカコア? よくわかんないけど自己主張が過剰だよね。でもおっとりした性格で、私の制服が乱れてると断りもなく整えようとしやがる。さわんな、と。このこれ見よがしの母性愛キャラやめてくんないかな、下心見え見えなんだけど。そんな周囲にアピールなんてしなくても、私はしっかりフってやるから安心しな。


 で、次。お昼休みに放送で呼び出しするから何事よと思って生徒会室へ。で、金髪クルクルヘアーの上級生の『お姉様』な人が「お茶でもいかがですか」とかアホかっ! 男の子ってお腹空くの早いみたいで、すっごく飢えてんのに、お茶!? そう言って怒ったら涙目で「私ったら気が効きませんでしたわね……セバスチャン! 食事の用意を」とか言って白髭紳士呼ぶし、その白髭が分身して「ぶるぅあああ」とか言って生徒会室を料理まみれにするし滅茶苦茶よ。何、財力とか人外の力を見せつけたいワケ? それで気でも引こうっての!? 言っちゃ悪いけど私、お金には弱いから。今ん所あなたはまだ我慢できるわ、加減を知って欲しいとは思うけど。


 その次はまた微妙で放課後いきなり教室に飛び込んで来て「先輩、お迎えに上がりました!」とか言って跪く謎の緑毛短髪少女。なんでも私、ずっとこの子と骨法同好会とかいうのをやってたんですって。もうね、意味分かんない。コッポウって何よ。接骨院でも開きたいの? でもいざ始めたら格闘技だし、私滅茶苦茶ボコボコにされたし。「先輩だけなんです、ここまで付き合ってくれるのは……」なんて雰囲気出して言ってくれますけどね、これ、世間一般では拉致って言うの。それも私、拒絶の意志を示す暇なくボコられてんだけど。もう先生に言ってやろうかと思ったけど、何故かその頃には身体の傷が跡形も無くなってるから訴え出る事も出来ない。どうなってんのこの世界……


 それで終わりだと思うでしょ? 甘いわ。甘々よ。帰り道、私の目の前に現れたのがまた銀髪赤目のちっちゃい女の子で私に襲いかかってくるわ、そこに割って入って黒髪ストレートで刀振り回す女の子が現れるわ、もうお腹一杯。吸血鬼? 退魔師? おまわりさん、コイツらです。


 記憶を消すとか消さないとか、血を吸わないと死ぬとか死なないとか。面倒くさいから吸わせてやったわよ。これで満足したでしょ、帰れって言ったらご主人様とか言うし刀の子も退魔師として見過ごせないとかええ加減にせいっ! 関西人もビックリのエセ関西弁で突っ込んでやったわ。「はややっ」とか幼稚園児か。「くっ、私は認めない」とか女王様かこの刀。とりあえず家に帰して何とか帰宅。出迎える義妹は殆ど下着のような格好にエプロンをしていた。


 これだけの事があったら、誰だって「ああ、そっち系ね」って分かるでしょ。私もオタクだからジャンル違いでも多少の知識はある。そして、この世界は私の為に作られたのではなく、他の誰かの為に作られた世界なのだろうと確信する。私は夜、部屋の窓からベランダに出て月に向かってこう呟いた。

「誰だかしんないけど。実際に生きてみろ、最悪だから」


 振り返ると義妹の部屋のカーテンの隙間から、熱っぽい視線が私に向けられているのを感じて……私は逃げるように自分の部屋のベッドに潜り込んだ。悪夢なら、早く覚めてくれ。そんな事を考えながら。








『Bパート』




 わくわくワンダフルライフが俺を待っている。そんな期待に胸を膨らませながら目を覚ますと、そこは剥き出しコンクリートの殺風景な部屋だった。なんスか、これ。ああ……あれだ、こんな部屋に住んでるヒロインいたっけな。いやあれは別の作品か。しかしまあシチュエーション的に事後、色々済んで彼女はシャワー室って所だろ? それなら戻った所をまた美味しくいただくワケよ。いやぁ俺は幸せだなあ、期待に胸が膨らむぜ……ってオイ! まじで俺胸膨らんでんじゃねーか何故だ!?


 その時、ギィッとドアの開く音が。いやぁ取り乱しちゃってごめんごめん、ちょっと聞いてよ俺おっぱいボインボインになっちゃっちゃっちゃ……うわっちゃあああああああっ! ゾンビぎゃああああああっ!?


 ドア開けて入ってきたのは期待してた無口少女なんかじゃない、すっげえドロドロのゾンビじゃねえか! ちっ傷んでやがる、早すぎたんだ……いやまて酸性シャワー浴びたせいで元は可憐な少女……ねぇよ、絶対ねぇ! 助けて誰か、俺殺される!


 しかしその時俺の手に何故かバズーカが。いやほんと何故だ。あああああ、来る、ゾンビ来ちゃう、くそったれ当たって砕けろぉあああっ!!


 カチッ


 バゴオオォォォンッ!!


『GYAAAAAAAAAA!!』

「ほんぎゃあぁぁぁぁぁぁぁっ!?」


 吹っ飛ぶゾンビ。もうスプラッタ。ばらんばらんだもの。ついでに俺も背後の壁に叩きつけられたんだけど、全然痛くない。バズーカぶっ放して反動で叩きつけられて痛くない。もう俺超人じゃね? 一体どうなってんだこの身体……って、ありゃ鏡があるじゃないか。壁にきったねえ鏡があったから見てみると。


 お?


 おおっ!?


 狂花タン! 狂花タンがいる!


 そこに居るのは水色のツインテールを揺らした少女、背が低い割にボンキュッボンなロリフェイス主人公、美崎狂花の姿。……うわぁ俺狂花タンになってる! すげぇ、ゾンビハンター狂花かよ、神様どんな間違え方したらこうなんだよ!? いや俺狂花タン大好きだから嬉しいっちゃ嬉しいんだよ、特に声優が最高。俺、あの子のライフセイバーになるんだっ。


「あ、あーあー、……あぁんっ♪」


 最高。最高ですよ。大好きなあの娘が俺の物……って、違うんだよ神様、そうじゃない。俺は男としてあんあん言わせたいのであって、自分であんあん言いたいワケじゃないんだよ。でもまぁ後でトイレで色々試すけど。


 しかし、勘弁して欲しいよなゾンビハンター狂花。俺あんまり上手くないんだよコレ。初めてやったのⅧだし難易度easyだし、エロ装備見たくて必死にやって挫折、改造コードでアイテム全部出したらバグって進められなくなったんだよな。この殺風景な部屋……これ多分Ⅱの監獄島かⅣのマグウェル研究所だろ。無理だってそんなん……


 あ、いや、待て。


 俺バズーカ持ってたよな。他に何あるんだ?


 そう思ってアイテムを探す。目の前にデカい画面が現れて所持品が表示されると……


 おお、火炎放射器やらミサイルやらバズーカやら手榴弾、何でもあるわ。それも耐久力や弾数が∞表示。すげぇ、これチートじゃん。俺こういうの好きだぞ。で、防具を見ると。……ふぉあああああああっ!? ナース、ナース服! バニーちゃんも! エロ下着まである! あ、あ、あ、ああああああ薄々肌色ボディスーツまで! 信じらんねえ、スペシャルハードクリアしないと手に入れられないってのに!


 よぅし、こうなったらやることは一つ!


 ゾンビ共をギッタギタに叩きのめして居住施設とか見つけて、生き残ってる女のモブキャラ捕まえてエロエロファッションショーだぜ! えっ、竿がない? なあにそん時になりゃ生えてくんだろ。神様が気づいてなんとかしてくれるって。







 フヒヒヒヒヒヒ(美声)





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