それから
「それでは皆さん、冬休みを楽しんで下さい」
僕は3学期の終業式で生徒会長として挨拶をした
この前入学したばかりと思っていたのに、気づいたらもう2年も終わってしまった。春からはもう3年で受験生になる。大した夢や目標も持っていない僕にとって先の見えない未来が近づいてくることほど不安で恐ろしいことはない。
歳月は人を待たず、光陰矢の如し等々よく言われるが、本当にそうだなと実感し、それに対して焦りを感じる今日このごろ。
少し年寄り臭いかな・・・
いや、こんな悩みは若者でこそだ、うん。
それから教室に戻って2年生最後の学活が行われた。
皆別れを惜しんでいる。
このクラスは中々良かった。皆仲が良かったし、団結力があった。僕は1、2年とクラスに恵まれている。
「皆さん、今日でこのクラスは解散してしまいますが、思い出の中にはいつまでもこのクラスが残ることでしょう。これから先何度も何度も越えなければならない壁に出会うと思います。そんな時は皆のことを楽しかった時のことを思い出してその壁を越えるための活力として下さい。皆さんの今後の活躍を期待しています。一年間ありがとう。」
担任が最後の挨拶をした。この担任はとても人気があり、良い先生だったと思う。歳は若いが落ち着いていてクラスをしっかり支えてくれ、みんな彼を頼っていた。
クラスは彼の言葉に拍手をし、涙を流している。
僕も少し涙腺が緩んでしまった。
そうして僕の高校2年は幕を閉じた。
「陸井先輩、話があります」
帰路に着こうと思ったら見知らぬ女子生徒に声をかけられた。僕はその内容が既に分かってしまった。
「何、かな?」
「えっと、その・・・私!先輩のことが好きです」
やっぱり・・・
「付き合って下さい!!」
「えっと・・・ごめん」
高校に入って初めての夏休みに告白されて以来、僕はよく告白されるようになった。ひどい時は男子からもされた・・・。何でこんなにモテているんだろう。大したことないのに・・・
そして僕はいつも同じ理由で断わっている
「好きな人がいるんだ」
「・・・そう、ですか。分かりました。わざわざお時間をいただき、ありがとうございました。」
名も知らぬ女子生徒は走り去っていった。
その後ろ姿を見て何も感じないわけではない。
告白されて素直に嬉しいという気持ちもあるし、振って悪いとも思う。しかしそんな気持ちをも押し潰してしまい、僕の心を支配する気持ちがある。
それは僕の告白を断るときの言葉に全て現れている。
「よう、陽。また告られて、振ったのか?罪な男だなぁ。付き合ってやってみてもいいとか思う人はいないのか?」
1年の時からの友人の拓海が声を掛けてきた。
僕はその問いかけに沈黙で答える。
「・・・そうか、まだあの人のことが・・・。でもまぁ何だ?お前も結構一途だな。俺も人のことは言えんが・・・」
「・・・そうだな。」
そう。僕には好きで好きでたまらない女性がいる。
どうしようもなく好きで僕の心を苦しめてくれる女性がいる。
しかし彼女は今遠い海の向こうにいて、会おうにも会えない。そんた状況がさらに僕の心を彼女に向かわせる。会いたくて、会いたくてたまらない。彼女を抱き締めてやりたい。彼女の笑顔が見たい。そんな想いも物理的距離が邪魔して叶えてくれない。
もうこんな状況が1年半ほど続いている。しかしこの想いは消えることなく、むしろ温度を増していっている。
早く会いたい・・・
気付いたら既に家の前にいた。
1年の夏の終わりから僕しか住んでいない家。
この家の扉を開ける時無いと分かっていてもいつも期待してしまう。彼女がおかえりと言ってくれるのではないかと。
今日もそんな期待を胸に、ドアノブに手を伸ばした
あれ?
開いている?
確か前にもこんなことが・・・
いやまさかな・・・
でも
「おかえり」
ドアを開けて入ろうとした瞬間、体が何か柔らかくて暖かいものに包まれた。
「え?、、っん・・・」
すると次は唇に温もりがやってきた
僕は状況がまだつかめない
なぜあなたがここに?
何でもいい。すぐにそう思った。
よく分からない。
だけど今はこの温もりに包まれたい。
そう思った。
そして・・・・・
「おかえりなさい。麗華さん」
「・・・ただいま。陽くん」




