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別れ


「この家を出て行くことになったわ」



「え、そ、それって」

もう一緒に暮らせないってことですか。


「父の仕事がうまくいってるそうよ」


「そう、ですか。良かったですね」

本当はこんなこと言いたくない。よかったなんて、自分がそう思っていないんだから。

でもこれでお別れというわけじゃない。2学期からは学校でも会える。

別に一緒に暮らすことに拘る必要はそんなにない


「いつですか。引越し手伝いますよ」


「その必要はないわ」


「え?」

なんでだ?荷物を運んだりするのに人手が多いほうが良いに決まっているのに。


「イギリスに行くことになったの」


―――――――え?


「父はイギリスに行ってて向こうで仕事見つけて、成功したらしいの。いつまでも陸井家のお世話になるわけにも行かないから、盆に一回父が帰って来ることになってて、盆が明けたら向こうに行く予定だって。」


それじゃぁ、もう・・・・


僕はカレンダーに目をやった

盆明けまで後5日だった。


「き、急ですね」


「えぇ、私もこんなに早いとは思っていなかったわ。寂しくなるわね。

   でも今生のお別れというわけでは・・・」


どうしてそんなに淡々としていられるのか。

こっちはこんなにも心を痛めているのに。

僕は取り合えずこの空間から出たかった。

耐えられなかった

今にも崩れそうな膝に鞭を打って僕は麗華さんが何か言っていたが無視してリビングを出た。

そして自分の部屋に入ってベッドに倒れこんだ。


忘れていた。いや考えたくなかっただけだ。知っていたはずなんだ。

麗華さんは居候の身で父親の復帰しだいこの家を出て行くことを。

でも今の生活が楽しくて、麗華さんと一緒にいるのが嬉しくて、幸せで考えないようにしていたんだ。

そして、どこかで期待もしていたんだ。

僕との生活が楽しいといってくれた麗華さんは、もし父親が立ち直ってもここにいてくれるのではないかと・・・。

だけど実際はあんなにもあっけらかんとしていて、心に悲しみなんて一つもないような顔して「寂しくなるね」なんて言われて。

もう会えないのに、家でも、学校でも、偶然会うことももうなくなるのに。

結局その程度だったのだ、僕の存在なんて。

情けないな。麗華さんには偉そうに僕を頼れとか言っておきながら・・・

あぁ、もうどうでもいいや。



ブーブー

携帯のバイブ音がきこえた。

拓海からの着信だった。



「もしもし」

『おう、陽か。わりぃな今日は』

「あぁ、別にいいよ」

『ん?どうかしたのか?元気無さそうだけど』

「どうもしてないよ、別に・・・」


あ、そうだ

「なぁ拓海。お前んちに盆明けまで泊めてくれない?」

無理だろうな、拓海の家にも都合があるだろうし。特にこの季節は

でも無理を言ってでも今、この家には居たくなかった。


「お前やっぱりなんかあったのか?まさか小曾根さん関係か?あれは、まぁそのぉ、なんだ、ごめん。侘びといっちゃぁ何だが、別にいいぞ。両親は盆休みを使ってラブラブ旅行中だし。」


「頼むわ」

小曾根さんのことは全く関係はないけど今は理由なんて関係ない。


ずっと一緒に居たかったはずなのに、今は麗華さんとは顔を合わせたくなかった。



僕は荷物をエナメルバックに詰め込んで家を出た。


麗華さんは自室に戻ったんだろう。家の中では会わなかった。



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