私
麗華さん視点です
「・・・・・わかった」
私はそう口にした。これは自分でも驚いている。まさか人に自分のことを話すことになるなんて。でも陽君になら打ち明けてみよう、そう思った。
陽君は私を抱き締めたまま私が落ち着くのを待ってくれていた。
「・・・もういいよ」
「え、あっごめんなさい」
温もりが離れていった。そのことに少し寂しくも感じたが、私は話し始める。
「私ねここに来る前は父と2人暮らしだったの。母は私が4歳のときに交通事故死んじゃったらしくて・・・」
母の顔は写真でしかほとんどしらない。でもとても綺麗な人だったと聞いてるし、私もそう思う。
「それで私の父は私を養うために毎日遅くまで働き詰めだったんだけと、私が幼児の時は幼稚園に通わせるお金もなかったから私家にずっと1人でいたの」
今考えたら凄い話だ。ご飯は隣のおばさんが作りに来てくれたがおばさんは私に構おうとしなかった。だから私はずっと独りだった。
「そんなこんなで当然だけど小学校に入学したのね。だけどそれまでほんとごく少数の人としか接したことが無かったから、先生とはもちろん同級生の子たちとはどう接したらいいか全く分からなかったの。だから先生の言うことばかり聞いていたわ。」
挨拶しなさいといわれたらその通りにし、言葉遣いを注意されたら素直になおした。とりあえず学校の先生の言われるままの態度をとり、生き方をした。周りに手本がなかったので、それを頼りにするしかなかったのだ。
「それで私はいつのまにか優等生と周りが認識するようになったわ。小学生の時はそんな私を煙たがったのか仲の良い友達なんて出来なかった。だから私は学校以外では外に出なかったの。バイオリンを覚えたのも独りで暇をつぶしていった結果ね。母のがあったの」
母はバイオリンを嗜んでおったようで楽器や楽譜もあった。最初はよく分からなかったけどやっていく内にある程度弾けるようになった。
「そんな感じで中学校にも入学したの。その頃になると私の優等生ぶりは周りの人にとっては好都合だったらしくて、面倒事は私に回ってきたわ。自分の利益のために近づいてくる人も沢山いた。でも私は断るのも怖くてここまで来てるの。確かに本当に仲良くなろうと私の所に来ている人もいたと思うわ。でもね、私には分からないの。誰がそうで誰がそうじゃないかが。だって私自身が私自身をよく分かっていないんだから。私は誰なの?私の本質は何なの?もう何年間も自問自答してきたわ。優等生として塗りたくられた私が本当の私か。それともどこかに私という存在が他にいるのではないか。本当に分からないの。だから人のことなんてもっと分かるわけがない。結果として誰とも平等に付き合うようになっていた」
本当の自分が何なのかが分からない。先生のいわれるままに生きてきた私は本当の自分を潰しているのではないか。これは本当の私ではないのではないか。そんな疑問がもう何年間も頭の中にうずくまっている。
「高校に入ってからも同じ様な態度だったわ。変わったのは周りね。中学の時みたいに私を利用する人はほとんどいなかったわ。逆に私を心配してくれる人もいたわ。でも長年人間不信やってるとなかなか治らないもので、私は変わらなかったわ。そんな中転機が訪れたの。去年の12月父の会社が潰れちゃったの。それまで私を養うために働きづめだったんだけど、失敗したらしくて。借金もあって返そうにも貯金はある訳ないし新しい仕事場も見つからなくて、とうとう家と家具を全て売って返したわ。でも当然住む所がなくなって困っていたらあなたのお父様に声を掛けていただいたの。うちの父とは高校時代からの友人だそうで。だから私の父が社会復帰とある程度の財産を手に入れるまで、私はここに住まして貰うことになったの。本当に感謝してる」
もし陽君のお父様がいなかったら私達は今頃路頭に迷っているだろう。
「でもね、困ったことがあったの。それはあなたがいたことよ。私は今まで一人だったのに同居人がいる。とても困ったわ。どんな態度をとったらいいのか分からないんだもの。無視することはできないし・・・。だからあなたには冷たい態度をとったりきつく当たったりしたかもしれない。ごめんなさい。」
本当に最初は困った。何をしたら良いか全く分からなかった。でもどこかで嬉しく思っている自分もいて。
「陽君には感謝してるの。何だかあなたといると私が私のような気がして。私はこんな感情を持っていたのかと何度も気づかされたわ。あなたと暮らしているうちに、本当の私を見つけられるのではないかと、そう密かに思ってるの」
陽君と出会って私は変わったと思う。いろんな気持ちが湧いてくるのだ。我が儘したい、困らせたい、笑いたい、会話したい、キスしたい、踊りたい、、、私を知ってほしい。
綺麗な感情ばかりではないけど、こんなにも沢山の感情が私の胸に湧いてくるのは、戸惑いもあるが嬉しいし、ドキドキする。
だから、
「ありがとう」
我が儘を聞いてくれて、笑わせてくれて、会話してくれて、私を知ろうとしてくれて・・・・
ありがとう




