我が儘
「具合はどんなですか」
結局麗華さんは風邪だった。疲れがたまっていたのだろう。引越しに、バイト、そして文化祭。倒れるのも無理はない。今日明日は文化祭の振り替え休日だ。この機会にいっぱい休むのも良いだろう。
「まだ少し。ごめんなさい、迷惑掛けて・・・」
「え?」
何だこの人は・・・なぜこんなに素直なんだ?
「何?」
「いや、少しいつもの麗華さんらしくないかなっと思って」
「何よそれ・・・もう少し寝るわ」
「分かりました。何かあったら呼んで下さい」
「分かった」
僕は部屋を出た。
そうとう怠そうだったなぁ
どうしてあそこまで無理してたんだろう。あ人の場合もう少し楽しても良いと思う。それにもっと周りを頼った方が・・・ていうか少しは頼ってほしい。もっと隙を見せてほしい。あの人は人使いが荒いけど大したことは要求してこない。むしろ少し人を頼るのになれてない気がする。本当に大切なことは自分の中で勝手に消費して、周りが自分の心配をしないように配慮している気がする。役に立てるかどうかは分からないけど相談ぐらいのるのに。折角一緒に暮らしてる訳だし・・・。まぁ今まで一緒に暮らしていて漸く気付く僕もバカだけど、麗華さんもバカだ。
僕はそれから暇を潰しながらも麗華さんがいつ呼んで来ても良いようにスタンバイしていた。
やっぱり来ないな・・・
さてと、そろそろ夕食の時間だ。やっぱりお粥かなぁ。うん、そうしよう。僕もそれでいいや。
「麗華さん、ご飯出来ましたよ。入りますね。」
こんんに頻繁にこの部屋に出入りするのは勉強を教わった時以来だな。なんか気分悪くなってきた・・・
麗華さんはまだ意識ははっきりしてないようだが体を起こしていた。
「お粥作りましたよ」
「ふみゅぅん・・・」
なんか意味の分からないことを言っている。目も開いているのかどうかよく分からないぐらいだ。この分じゃぁ自分で食べれそうにないな。後ででも良いけど暖め直すのも面倒だしな。しょうがない・・・あの手を使うか・・・
僕はベッドの近くに部屋にあった椅子を寄せ、その上にお粥の乗ったお盆を置き、自分はその場に膝立ちになった。そしてレンゲを手にとりお粥を少しすくう。それを自分の口元に寄せフーフーと息を吹いた。そしてそれをうとうとしている麗華さんの口元に寄せた。
「麗華さん、ロを開けて下さい」
「あむ」
・・・・・かわいい
さすがに意識が覚醒して抵抗されるかと思ったけど素直に口に入れた。その様子がまだまだ子供のようでたまらなく可愛かった。
もう1回。
結局この調子でお粥が全部なくなってしまった。
「・・・ごめんね」
いきなり麗華さんが謝ってきた
「どうしてですか?」
「だって、か、看病・・・」
「麗華さん、病気の時ぐらい当然ですよ。一緒に暮らしてるんだし・・・」
「だ、だって・・・こんな風に、看病してもらったの・・・はじめてなんだもん・・」
「え、本当ですか?」
「だ、だって・・・何でもなぃ」
そう言って麗華さんは俯いてしまった。これだ、この顔だ。麗華さんが時折見せるどこか寂しそうな顔。
こんな顔はさせたくない。
見たくない・・・
僕の心のどこかにそんな思いが芽生えた。
それは麗華さんのこの顔を見ているうちにどんどん大きくなっていく。
もう止められない
「麗華さん、どうしてそんな顔するんですか?そんな顔あなたには似合いませんよ。何かあるんなら話して下さい。頼りないかもしれませんけど相談に乗りますよ」
僕は卑怯だ。麗華さんが心配なのは本当だ。助けてあげたいのも本当だ。でもそれを立て前に麗華さんの秘密を知りたいと思ってしまう僕が心のどこかにいる・・・。
「どうして、どうして、そんなに心配してくれるの?どうして私を助けようとするの?あなたとは赤の他人じゃない。どうして、どうしてそんなに優しくするのっ。もう訳が分からないじゃないっ」
麗華さんの顔はもう涙でグシャグシャになっていた。
何があなたをそこまで苦しめているのだろう。どうにかしてその涙を止めてあげたい。少しでも苦しみを和らげてあげたい。
気付いたら僕は麗華さんを抱き締めていた。
「そんなこと言わないで下さいよ。僕は麗華さんの悲しい顔を見たくないんです。あなたに苦しみを抱えてほしくないんです。僕にあなたを助けさせて下さい。僕はあなたを支えたいんです。あなたを知りたいんです。これは僕の我が儘です。どうかこんな我が儘を聞いて下さいっ」
そうだ卑怯でも何でも良い。
コレは僕の我が儘だ。
誰にも文句は言わせない。
「・・ヒクッ、・エグッ、、わかった・・・」




