スタート
季節は春
僕、陸井陽は今日高校生となる
そして今は入学式。
ざっと周りを見回すといろんな人がいた。
別に面白くもない禿げたおじさんの話を真剣に聞いてる人、隣の可愛い女子をナンパしてる人、居眠りしてる人、僕のようにキョロキョロしてる人。
うん、流石は市内一の進学校。目測だが新入生だけで400人はいるだろう。僕はその内何人の人と触れあうのだろか。少し不安もあるが、やっぱり楽しみだ。
「生徒会長挨拶、生徒会長、神崎麗華」
「はい」
綺麗で澄んだ声が講堂中に響いた、と同時にハッとしてステージの方に目を向ける。そこには登壇している1人の女子生徒がいた。姿勢が良く大観衆の前でも、堂々としている様は遠目ながらもはっきりととらえることが出来た。
「新入生の皆さん、御入学おめでとうございます。冬の寒さもどこかに行き、暖かさと共に春が感じられる今日この佳き日に、皆さんに会え、とても嬉しく思います。」
落ち着いた声は会場中の視線を集めている。
「これから始まる高校生活の中には、楽しいことだけではなく、悲しいことや辛いことがあるでしょう。しかし周りを見て下さい。
皆さんの周りにはこれだけの人がいます。これだけの助けあえる仲間がいます。どうか、自分1人で抱え込まず頼り合って下さい。助け合って下さい。そして皆さんが全員笑って生活できることを願っています。
誠華高等学校生徒会会長神崎麗華。」
どこの入学式でも誰かは彼女と似たような事を言うだろう。現に彼女の前に挨拶した人も言っていた気がする。しかし、彼女が言うと説得力が違うのだ、印象が違うのだ。とにかく僕は彼女の作り出した世界に引き込まれていた。
彼女は既に降壇していて自分の席に戻るため、やはリ堂々とした姿勢で歩いていた。僕はそんな彼女に見とれていた。足が地につくたびに揺れる長い黒髪は、彼女そのものを表しているようだった。
ふと彼女と目が合った気がする。しばらく見つめあう形となった。時が止まったような気がした。
彼女は軽く微笑み、そして進行方向に目を向けてしまった。
「やべー、俺今生徒会長と目が合っちゃったよ」
「え~俺も今微笑みかけてもらったと思ったんだけど・・・」
僕の周辺の人達が話しているのが聞こえた。どうやら彼女と目が合ったと思ったのは僕だけでけないようだ。少し残念・・・。
そうこうしている内に入学式は無事終了した。
「皆さん、こんにちわ。今日から皆の担任することになった高梨絵里です。担当教科は英語です。楽しい1年になったらいいなと思います。よろしくお願いします。」
高校初のLHRが行われていて、今ちょうどこれからお世話になる担任の自己紹介がされていた。若そうで、明るく可愛い先生だった。男子達から喜びの声が上がる。僕もテンションが上がった。先生が可愛いのもだが、女子生徒も可愛い子が多いのがその理由だ。逆に女子は、そんな男子達の反応に引き気味だ。
「先生歳はいくつ?」
「彼氏いるの?」
「はいはい!俺先生の彼氏に立候補します」
次々に言葉が先生に投げられていく。
「アァ?」
先程の質問のどれかが気に食わなかったのだろう、ガンを飛ばしてきた。それと同時に騒がしかった教室が一気に静まり返った。
「それでは次に高校生活送る上での注意点を幾つか話したいと思いまぁす」
先生は何事もなかったように笑顔を顔に戻し話し始めた。
なかなか裏のありそうな人だ、怒らせないようにしよう・・・
その後も学校は昼前に終わったが親睦を深めようということで、新クラスの皆でカラオケに行き、結局帰ったのは6時ぐらいだった。
学校から徒歩30分自転車では12分ぐらいの所にある一軒家が僕の家だ。僕が生まれるのに合わせて建てられたので、築16年の普通の家だ。
玄関の扉に鍵をさしてみると既に開いているようだった。家を出る時、しめ忘れたのか?
少し不安を覚えつつも扉を開けた。
そこには見慣れない女性用のローファーがあった。両親は2人とも海外を拠点に働いているので、この家にいることは1年でも数える程だ。
誰かいるのか?
僕は取りあえず居間に行ってみた。
なんだこれは?
そこには段ボール箱がいくつも置いてあった。
ますます不安になった僕は家中を探索し始めた。
風呂場か?
そう思い、浴室に入るためのドアをあけた。
そこにはやたらとスタイルの良い女性のはだか
グはッッ
・・が・・・あ、、、った・・・・
強い衝撃を受けたと思った瞬間僕は意識を失なった