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感動

「それじゃぁ、行ってくるわね」

「あ、いってらっしゃい」



麗華さんは平日は毎日、7時20分ぐらいにバイオリンを片手に家を出る。

知人が経営しているレストランのバックミュージックを弾くらしい。


いつか、麗華さんのバイオリンを聞いたことがある。

本当に素晴らしい演奏だった。

また聴きたいな。




ん?そうか聴きに行けばいいのか

もう食事は済ませたが、まだ少しならいける。

少し聴きに寄って、すぐ帰ろう。









フローラル



それが麗華さんのバイト先のお店だ

以前名前は聞いていたので、場所は分からなかったが、携帯の機能を使わせて頂いてたどり着いた。


家から徒歩20分といったところだ。

外装はドイツ風でクールな感じがする。



よし


気合いをいれてから、店の中に入った

なかなか繁盛しているようだ。

それほど高級感は感じられないが、これぐらいの方が一搬客が来やすいだろう、といった雰囲気だった。




「いらっしゃいませ。お一人様ですか?」

「あ、はい。そうです」

「カウンター席でもよろしいですか?」

「はい。大丈夫です。」







「ご注文はお決まりになりましたか?」

「えっと、ガーリックトーストと生ハムサラダ、飲み物はウーロン茶を下さい。」

「かしこまりました」

メニューを見たが、イタリアンもあれば和食、中華まである。一貫性はないが、この方がいろいろ食べれて良いかもしれない。

それにしても、もう少し注文してあげればよかった。でも、もうタ食は食べたしな・・・・・・・




あ、麗華さん。

注文した料理が届いたのとほぼ同時に麗華さんが出来た。

服は黒っぽいドレスに着替えている。

ピアノの置いてあるちょっとしたステージに上がり、お辞儀をした。

僕は拍手をした。周りは麗華さんには気付いてない様で僕だけが拍手した形となった。


あ、麗華さんと目があった。

一瞬驚いた顔をしたが既に真剣な顔になり、バイオリンを弾く体勢に入っている。


それからは店内にバイオリンの美しい音色が響いていた。


やっぱり上手だなぁ。心の奥からこみ上げてくるものがある。

しかしこんなに素晴らしい演奏なのに、他のお客さんは会話や食事に集中していてあまり真剣に聴いている人はいない。

確かにここに来ている人達の目的は音楽鑑賞ではなく食事をとることだ。

でも、やっぱり麗華さんが真剣に弾いているのにそれをただのBGMとしか捕らえていないというのは悔しかった。





麗華さんが礼をする。

どうやら今日の分は弾き終わったようだ。

だいたい1時間くらい弾いていたことになる。


僕は力の限り手をたたいた。

周りの人に注目されてもいい、ただ先の演奏を讃えたかった。


麗華さんと目があった


少し睨んでる?


目があったのは一瞬ですぐに麗華さんは店の裏入っていった。


どうせなら戻ってくるのを待って一緒に帰るか・・・・








「お疲れさまでした」

麗華さんの姿を見つけて言った

「まだいたの。それより何で今日来たの」

「少し麗華さんのバイオリンを聴きたくなって」

「それなら家でいいじゃない。恥ずかしい所見せちゃったじゃない」

「え?とても素晴らしい演奏でしたよ?」

「どこが?本当に素晴らしい演奏なら嫌でも客は振り向くわ」

「それは、そうかもしれませんけど、僕はちゃんと聴いて本当に感動したんです。だから力いっぱい拍手したし、また聴きに来たいと思ってます。」

「あなたに認められてもね。あんな安そうな拍手して。」

「たしかに僕は音楽はよく分かりませんが、本当に感動したんです。麗華さんの演奏が大好きでした!!!」


「か、感動した感動したって馬鹿の一つ覚えみたいに。もう少し他の表現はできないの?」


「えっと、その、よく分からないけどグワっと鳥肌がたって、ジリジリと胸が熱くなってきた?」

「ふふっ」


?頬に柔らかい感触が・・・・

って麗華さんの顔ちかっっっ







「でも、ありがとね」






やっぱりかなわないなぁ。

既に頬の温もりは春風と共に消えていってしまったが、心の中が熱くなった。


これは感動じゃない





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