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第42話 感謝会

-side リアム-




「ノア、ミラ!なんでここに?」

「あはは。僕とミラから君へのサプライズだよ。感謝の気持ちを込めてね」

「感謝?」

「もう、忘れてしまいましたのですか?勇者召喚から救っていただいたお礼です!」

「あ、ああ。そういえばそんなこともあったね。忙しすぎて忘れてた」

「あはは。こりゃ相当だね」

「まあ、俺も大変だったからなあ。リアムは領地関係の書類はヘンリー様にやってもらったんだっけ?」



 最近一緒にいないと思ったら、レオンも大変だったようだ。



「うん。そういうのはよくわからないから、これからやればいいだろうって」



 俺が教育を受けることを希望したのも、領地経営を将来やることになった時のことを考えたからである。将来、自分が歩もうと思ったら歩める選択肢は多いに越した頃はないからな。



「ああ。そうだったな。そのことでリアムに話があるんだが」



 ヘンリーが言った。



「……?なんですか?父上」

「学園に入学するまでの間、リアムには領地の方に行ってもらうことにした」

「えっ。なんでですか?」

「時期的に丁度いいからな。これから夏になると、農業の収穫時期があるだろう?」

「ええ」

「その収穫の時期が終わったら、学校が始まる。だから、収穫の時期前に一度領地の方に顔を出して挨拶回りした方がいい。流石に新領主が一度も挨拶に来ないのはおかしいからな。現地のことを任せている代官にもよく思われないだろう」



 どうやら、入学時期が秋なのは、地球で欧米の学校が9月入学なのと同じ理由らしい。

 たしかに、学園の生徒になるったら、夏の収穫時期と、春の入学手続き及び入試期間以外は、とても忙しいと聞いていた。

 だから、その前に新領主として挨拶に行けというのは納得だ。代官は配置しているけど、領主が来なかったら、代官の面子も立たないからね。はあ……。せっかく休めると思ったのにまた忙しくなりそうだ。

 あんまり考えずに貴族になったが、結構ブラック労働だな。



「あはは。そんな顔するな。貴族位を与えられて1年目なんてそんなものだからな。

 リアムはまだ5歳児だから、これでも手加減してる方なんだぞ。レオン殿なんて比じゃないくらい大変だからな」

「そうなの?」



 ヘンリーに言われてレオンの方を向く。

 確かに、2、3週間ぶりに見た体力お化けのレオンはよく見ると、珍しく疲れていた。



「ああ。俺が任された領地は魔物討伐依頼が大量に溜まっていた地域が沢山あってだな。

 この前、ようやく片付いたんだが、お前と違って、他人からの引き継ぎを全て自分で行っているから、その後も大量の書類仕事がまわってきてな」

「あ、あはは」



 薄々気づいていたが、今聞いた限り、貴族の独立って新しいベンチャー企業を立ち上げるようなものだな。会社も立ち上げ当初は社長自ら頑張らなければならないと聞くし、似たようなものだろう。お疲れ様だ。



「それはそうと、リアムのために沢山準備してきたから、早く歓迎会しよう。ミラも頑張ったんだ。ねっ!」

「え、ええ。まあ……」



 ノアの報告に恥ずかしそうにするミラ。



「ありがとう。ミラ。楽しみにしてるよ」

「た、大したことはしてないのでお手柔らかにお願いしますね」



 ノアがハードルあげたからこう言ってるだけで、そうは言いつつ実際はすごく頑張ったんだろうな。いつも綺麗な洋服が若干汚れているから。一生懸命謙遜するミラに癒されながらも、歓迎会の席に着く。



「では、今日からリアムの子爵位授与を祝して乾杯!」

「「「「「乾杯!!」」」」」



 ワイワイがやがやのホームパーティが開幕する。久々にアレクたちとも再開したのだ。積もる話もあり、沢山話が弾み盛り上がった。みんな、俺とレオンに感謝してくれているようで、恩を返すと意気込んでいた。

 それから毎度のこと、学習しないで飲みすぎたレオンをルーカスが介護しながら撮影をして黒歴史を増産していたのも、今となってはお家芸である。



  ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



「はい。リアム様。私からです」

「……!!あ、ありがとう。こんな良いものを」



 そのあと、ミラは俺にチョコレートクッキーを作ってくれたり、聖女の魔力が込められてた魔石のペンダントを貰ったりした。

 チョコレートクッキーの方は甘さ控えめで、かなり美味しかったな。ペンダントもかなりありがたいプレゼントだ。



『お前、ミラには甘いよな。さては惚れたか?』

「(そ、そんなわけたないだろ?小さい女の子には、優しく接しないと、と思っただけだ)」

『(ふーん。(ニヤニヤ))』

「(な、なんだよ?)」

『べっつにー』

「(そのニヤニヤ顔で揶揄ってくる態度、完全に酔ったおじさんのそれなんだけど)」

『え?(ガーン)』



 ルーカスは珍しく本当に落ち込んだ顔をした。



「(じょ、冗談だって)」

『な、なんだ。そうだよな、俺がおじいちゃん絡みなんてするわけないよな?』

「(う、うん)」

『な!』

「(……んん?素直すぎないか?それと、なんか、顔が赤いような?……ってそれ持っているの強い酒入りのウイスキーボンボンじゃねえか!やっぱ酔ってたのかよ!)」

『へ?何を言ってるんだ。おれはなーむにゃむにゃ…おじいちゃんじゃ……むにゃ……』



 そう言って、ルーカスは眠ってしまった。

 ……今の記憶保存方法でとっておきたかったな。



『むう。今のは面白かったのお。どれ?記憶保存魔法で撮っておいたから、それつまみに一杯やらないか?』

「(お、本当に?子供だから、酒は飲めないけど、やりたい)」



 悲劇は繰り返されるとは言うが、ルーカスもまた黒歴史の餌食になる日が来たらしい。

 とても有意義な鑑賞大会をしながらそう思ったのだった。



 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢



 すっかり真夜中になり、みんなが寝静まった頃、最後はノアと話した。



「今日はありがとう。お前がかなり仕切って準備してくれたんだろ?みんな感謝してくれてたよ」



 誰かに直接感謝を伝えることも大切なことだと思う。案外、他人からの悪意には敏感でも好意には鈍感という人は多いからだ。

 悪意ある単語は口に出やすいけど、好意ある単語は口に出にくいというのもある。

 


「あはは。どういたしまして。これくらいじゃ恩は返せてないけどね」

「大袈裟だな。俺はそんな大したことしてないよ」

「いや、僕の将来に口出ししないで欲しいと言ってくれただろう。君から言ってくれたことが嬉しくてね」

「ふーん?」

「王子って仕事は僕には向いていないからね。なんだかんだ隙を見て王族を抜けだそうと思っていたんだ」

「そうだったか……」



 貴族になった今ならその気持ちは少しわかる。きっと王子もとてつもなく忙しくて大変なのだろう。



「これを持ってくと良いよ」



 ノアにそう言って渡されたのは、美しい青色の魔石で造られたナイフだった。



「あ、ありがとう。これは?」

「それは、広範囲斬撃ナイフだよ。使った所有者の力量に応じて、攻撃範囲が変化する斬撃だ。その昔、その剣を持っていたら英雄になれると噂され、剣をめぐって大量の血が流れたとされているナイフだよ」

「そ、そんなの悪いよ」

「いや。これはリアムが持つべきだよ。ここだけの話、何人もの人が使おうとしてみたけど出来なかったらしいんだ。それで僕が鑑定した結果、“転生者”しか利用できない神器と出てね。だから、どちらにせよ君以外には、使えないんだ。どうせなら、使える人が持つべきだという結論に、王家も至った」

「そ、そうなのか。……ありがとうな。じゃあ、いただくことにするよ」

「うん。あと、僕は王都に残るからついていけないけど、領地経営頑張って」

「ああ。お前もな」

「うん。じゃあ僕はこれで。夜中に時間取らせてごめん。また学園で会おう」



 そう言ってノアとも別れた。

 しかし、おれの領地か。明日中にはもう出発らしいけど、どんなところだろう。

 レオンみたいに魔物の討伐依頼が沢山溜まっているところでなけれないいなあ。

 不安と興奮で夜もあまり眠れないまま、その日は過ぎて行った。



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