第38話 一旦戻ろうか。
-side リアム-
ノアとミラを見つけた俺たちは、戦争のため滞在していた拠点から一旦王宮に戻ることにした。その道中のことである。
「んん……」
「お、起きたかミラ」
運命神を信仰している教団に攫われて、気絶させられていたミラがようやく起きた。
「はっ。リッ、リアム様!?ここは?」
「落ち着いて。もう大丈夫だから」
そう言うと、ミラは少し考えた素振りを見せた後、落ち着いてから笑顔で話かけてきた。
「やはり、助けて下さったのですね」
何がやはりかは、わからないが混乱させてはいけないから当たり障りなく答える。
「うん。大変だったね」
「い、いえいえ。リアム様なら必ず助けて下さると思っていましたし」
そのお世辞は流石に嘘だろ。だが言われて悪い気はしない言葉だ。
人の心を掴む言葉を心得てうるのは、流石王女と言ったところだろうか。
「あの……えと……」
ミラは、次の話題に困っているかのように悩んでいる。
「ああ。そっか。ノアなら先に起きたよ。今はレオンと一緒に前の馬車に乗っている」
気絶させられていた2人は、病人と似たようなものだし、そもそも王族だから丁重に扱う必要があると言う関係で、ドライ王国軍の馬車を2つ出してもらったのだ。外には沢山のドライ王国兵の護衛がいて、中は、レオンと俺の従魔が護衛ということで話がまとまった。
王女が成人の男性と2人きりだとまずいだろということで、この組み合わせになったのである。
「あ……そ、そうでしたわ!ノア兄様も無事だったのですね!よ、良かったあ」
ミラは、ほっとした様子で喜んだ。
しかし、“そうでしたわ!”と言ったということは今まで気づいていなかったのかな。
自分のことで、いっぱい、いっぱいだったようだし仕方のないことではあるけど。
「うん。あ、あとこれ。病み上がりでちょっと辛いかもしれないけど食べる?コーンポタージュって言う変わったスープを作ったんだけど」
この世界の市場でコーンを見かけてないから、このスープは世に出回っていないはずだ。変わったスープでいいだろう。
「もちろん!リアム様がお作りになったものならたべますわ!」
ミラ様には、1番最初にクッキーをあげて以降、ちょくちょくご飯をあげていたのだ。
餌付けをしてあわよくば王宮内でパトロンになってもらおうという、下心ありありのゲス戦略でもあることは隠しきれていると信じよう。すでにパトロンにはノアもいるが、もしもの時があった時用である。
そう言った理由で毎回俺のご飯を食べているが、今回はコーンスープを作った。
作り方は、とうもろこしを茹でた後、冷やして、黄色い粒を芯から取り出す。
その後、玉ねぎとじゃがいもを切る。
先に玉ねぎを飴色になるまで炒め、さらに後からとうもろこしとじゃがいもを入れて炒める。その後、コンソメをさらに入れて炒める。荒熱をとり、ミキサーで跡形もなく粉々にする。さらに濾してから、牛乳、生クリーム、塩胡椒で味を整えたら完成。
うーん。シンプルで簡単そうに見えるスープって地味にめんどくさいんだよね。
素材の味を引き出す料理ほど、誤魔化しが効かず大変なことってないことだから。
コーンポタージュも例外ではないようだ。
「ふーふー」
ミラが、一生懸命冷ましてから飲む。普段優雅で王族らしい大人っぽいのとはギャップがあり、子供っぽくて、可愛いなと思ってしまった。この姿を可愛いと思っている俺はもしかして、俺はロリコ……、やめよう。
これは大人が子供に思う可愛いという感情でしかない……はずだ。決して犯罪者予備軍でもない……はずである。
「お、美味しいですわ!こんな美味しい食べ物、初めて食べましたわ!」
思わず、顔が綻んでしまう。この人は本当に褒め上手だ。俺が成人した大人でなかったら、この人の手のひたの上でまんまと転がされていたかもしれない。
だが、俺は前世もあるので、流石に大半がお世辞だと言うこともわかる。まあ、ミラが幸せそうに食べてるからそんなことは、どうでも良くはなってくるのだけどね。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
そんなことを考えながら、ミラがコーンポタージュを食べているのを、眺めていると王宮についた。通常時とは違い、門の前には大量の護衛がいた。
それもそのはず。国王に、ヘンリー様。そして、初対面なのでわからないが雰囲気的におそらく、王妃のハンナ様。第一王子のバージル様まで勢揃いしていたからだ。
「父上、兄上、母上。ご心配をおかけいたしまして誠に申し訳ございません。ただいま戻ってまいりました」
「戻ってまいりました」
ノアとミラが、代表して挨拶する。
流石、生まれながらの王族というのは礼儀作法が違うな。堂々としていて、こんな時でも感情の揺らぎが見えず、終始優雅な振る舞いをしている。
「おお……、おお。お前たち。良かった。心配したぞ」
国王がそう言って2人を抱きしめる。
行方不明になっていた子供が2人も帰ってきたのだ。この国王だから、最悪は死を覚悟していたと思うし本当によかったな。
しばらく、ノアとミラは国王をはじめ、王妃や第一王子とも抱きしめあい、家族再会を喜んでいた。暖かく出迎えたノアとミラの家族にほっこりする時間だった。
それから、一通り落ち着くと、父親の顔からすぐに国王の顔になり、こちらをみた。
「レオン殿。リアム殿。この度は、なんとお礼を言えばいいのだか」
「いえいえ。偶然見つかっただけですよ。お2人がご無事で良かったです」
事前に教えてもらったからわかるが、レオンは褒美をもらう気満々らしいし、謙遜もしたくないが、あえてこうしているらしい。
曰く、“アピールは周りにバレないように本人に直接無言の殺気を浴びせるだけで充分”らしい。俺以上にあからさまでゲスいやり方だ。師匠と呼ばせてもらおう。
「ふっ。謙遜を。例え見つけたとしても並の者なら返り討ちにあっていたくらいの戦力は向こうも保持していただろうに。見つかったのがよりにもよってお前らとは相手もついておらんな。……っと、立ち話もなんだな。詳細は後で話してくれ。褒美は必ず用意する。
」
「ありがたき幸せです」
ブラックジョークはさておき、国王もレオンの意図は分かっているから、何も言わないらしいんだけどね。
結局、その日はみんなかなり疲れていたので、俺もすっかり自室化とした王宮内にある俺の部屋に戻り、泥のように眠った。
----------------------------




