第33話 師からのアドバイス
-side リアム-
「拐われた?誰にですか?どうやって?」
レオンが珍しく取り乱す。それもそのはず。王宮内で王子と王女が攫われたのだ。
セキュリティ的に最強な場所でAランクの実力がある護衛が付いている中での誘拐。
Sランクの自分が駆り出される事態だということを理解しているからであろう。
「現段階ではアインス王国かフィーア王国だろうと推測している。拐われた原因については戦況が悪くなったから人質目的だろうと思われるが、確証はない。現在、究明している最中だ」
「色々聞きたいことはあるんですが、戦況そんなに良いんですか」
「ああ。こちら側はSランク冒険者や精霊使い
を1人ずつ撃破。戦力にかなり差が開いたことで、ほぼほぼ勝てると踏んでいた。ちょうど、帰ってきたお前らにも参加してもらって総攻撃を仕掛けようと思った時に突然何者かに拐われたんだ。おそらく、スパイか何かが内部に潜んでいたんだろう。現場の者達は謎の光があって、気づいたら2人ともいなくなっていたと、口を揃えて言っている。俺個人的な意見としては、認識阻害系の魔法によるものだと思う」
「なるほど。……そうですね。ノア様やミラ様がどんな状況かはわかりませんが、どちらにせよ戦争にはすぐに参加させていただきます」
レオンは冷静さを取り戻し、そう判断を下した。確かにノアやミラがどうなっているかは分からない以上、俺たちの出来ることと言ったら目の前の役目を淡々と行うことだしな。俺がもし、幼かったらこの判断に意義を唱えて単独でも2人を探していただろうけど、今の俺は大人の事情も分かる偽ガキだから特にこの判断に異論はない。
「ああ。助かる。できれば、何か要求される前に、できるだけ多くの敵を削っておきたいからな。俺は最高責任者という立場と、王子と王女を探さないといけないという立場上、ここに止まらないといけない。レオン殿。あとは任せた」
ヘンリーはそう言ってから、俺たちが乗る馬車と行く場所を指定した。こうして、王宮に戻って来てわずか1時間足らずで、俺たちは戦争に参加するために再びアインス王国へと向かうのだった。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「そういえば、ルーカス。さっきソワソワしていたけどどうしたの?」
『ああ。なんか、心地いい感じがしたんだよなあの場所。逆に落ち着かなかったぜ』
普段デレデレペットなのにいきなり、ツンデレペットみたいなこと言うなあ。
『なんか。馬鹿にされたような気がするぞ』
ぎくりっ。ま、まずい。
「そ、そんなことないよ」
『主人殿……』
シルバーが呆れた様子でいう。
『我らは心が読める。だから、取り繕っても意味はないぞ』
『「あ……。忘れてた」』
ん……?
『ルーカス。お主……』
『い、いやあ。主人が嫌がると思って最近は使ってなかったから忘れていただけだぜ。』
「言い訳だな」「言い訳だね」『全く神竜が聞いて呆れるな』
『ぐうう……』
流石にこれにはルーカスもショックを受けたようだ。
「それはそうと、不思議なトラブルが起こる日だな今日は」
『確かに。主人の日頃の行いのせいだな!』
「そんなわけない!……とは言えないよなあ。色々、やらかしたこともあったし。生きるために仕方なくやったこととはいえ。はあ、なんでこの世界に来てこう次から次へと厄介ごとが起きるんだ」
『じょ、冗談だぜ主人。そこまでへこむとは思ってなかった』
「こりゃ、相当キてるな」
2人がいつになく優しく、へこんだ俺を慰めてくれる。その優しさが、最初に有ればこんなことにはなんなかったんだよ。……って事が分かってるから、慰めてるんだろうな。多分。
『はあ。全く。……主人殿。馬鹿なのか?』
--グサッ。
シルバーが呆れた様子で言ってくる。
回復した心にダメージを受けた。
『うっわ。シルバーの奴、真実を言ってただでさえ弱っている人を傷つけるとか鬼か』
俺の心は、さらにダメージを受けた。
「お前ら、リアムにだってへこむ時はあるんだ。へこむタイミングを考えられたらもっといいなとは思うけどな」
レオンが俺の急所に的確にダメージを与え3点バーストノックダウンを決める。
「おい。お前らのせいで慰まっていた心が台無しだよ。今夜の晩御飯は抜きだね」
『……!!あ、ミスった。もう一回やり直していいか?言い方変えるからよ』
『ワ、ワシもだ。もう少しマイルドな言い方に変える』
「俺にもチャンスをくれ。今度は優しく言うからよ」
「もう遅いわ!ふんっ。……って優しくいうだけで、心を抉るようにセリフは伝える気満々じゃねーか!!」
『まあまあ、そんなことより、主人。こんな時に落ち込んでる暇はないぜ。最低限これから戦争に参加するためにどう動けばいいかはレオンに聞かなくちゃいけねえだろ』
「俺の渾身のノリツッコミがまあまあそんなことよりで済まされてしまった。でも確かに。レオン。俺はどう動けば良い?」
「んー。まあ、練習を思い出して好きに暴れたら良いんじゃねえの?」
真剣に質問をしたにもかかわらず、レオンは呑気に答えた。
「へ?それだけ?」
「多分な。あのヘンリー様の様子だとそんな感じだろうな。特段指示も受けなかったということは、何か重要な役割を任されるというよりは圧倒的な力の差を見せつけて残党狩り頑張れ的なことだと受け取った。
あとリアムは初戦だし、俺から言えることも“生き残れ”ということだけだ。5歳児で戦争に参加することだけでも異例の事態だし、前線に出て仕事しまくるよりも、最悪、前線で逃げ回って足手まといになっても誰も文句はねえだろうよ。死んだらそれっきりだけど、生きてさえいればいくらでも活躍できるチャンスはあるからな」
初戦だし、活躍できなくても、そういうものなのかもしれない。とりあえず、戦闘の雰囲気に体を慣らせということだろう。
「ふーん。分かった。じゃあ、俺は生存優先で動くよ。隙があれば、レオンを魔法で援護という感じでいい?」
「おう。ルーカスとシルバーは俺のことは気にしなくていいから、リアムを守れ」
『了解した。』『お前も死ぬんじゃねえぞ』
こうして、珍しく師から大事なアドバイスを受け取った俺はとうとう最初の戦闘地に到着したのだった。
『そういえば主人。ヘンリーにお前の父親かどうか聞かなくて良かったのか?』
「あっ……」
そして、味方のナイスプレーにより、集中力を削ぐような大事なことを戦闘前に聞かされたのだった。
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