第30話 戦争について
-side ノア-
「アインス王国の状況だが、精霊使いとSランク全員が国外に行ったようだ」
「……そうですか」
レオンがこの国にきた時点で、これは既に予測済みなことであった。
「アインス王国にはレオン殿とリアム殿含む3名のSランクと2名の精霊使いがいた。クズガー殿はおそらく、フィーア王国に行ったと思われる。だが、Sランク1名と精霊使い1名の消息は掴めていない」
「どうでもいいですけど、敵国のクズガーにさえ、殿をつけなければいけない国王って本当に大変ですね。絶対なりたくないです」
「本当にどうでもいい感想だな。そして、本音を隠せ。次期国王候補。国王の前で言うなそれを」
「あ、僕とした事が。すみません」
「気づいていなかったらなおタチが悪いわ。
全く。そして、謝るな、それを」
「あはは。しかし、消息が掴めて無いことは、困りましたね。相手の戦力が掴めないということですから」
「ああ。全くだ。欲を言うと、全員うちに来て欲しかったが。まあ、Sランク1人と精霊使い1人来てくれただけでもうちとしてはとてもプラスなことだ。おそらく、国のパワーバランスに影響を与えるだろう」
「ええ。精霊使いが1人来てくれただけでも、うちが取れる戦術の幅も広がりましたからね」
「ああ、そのことで話があるんだがな」
「……?」
「今回、リアム殿とレオン殿を連れてきたのはお前だろ?」
「え?偶然ですけど。確かに対外的には、一緒に入国した履歴も残っていますし、確かにそう見えなくも無いですね」
これは嫌な予感がするね。
「そうだ。そのことは既に王宮ないに知れ渡っている。そして、どこから漏れたのかは分からんが、リアム殿が将来お前の側近になることを承諾していることもな」
うわあ。やらかしてるよ。
「何がいいたんですか?」
「はあ。お前もわかってるくせにな。お前の功績と影響力が大きくなりすぎるんだ。まったく。せっかく、俺とバージルが押さえつけたと言うのに」
「あははは。これに関しては不運としか言いようが無いですね。僕としてはリアムを手放す気はないですけど、どうしたらいいですかね」
「とりあえずは様子見だな。あまり騒ぎが大きくなりすぎるのもな」
「父上」
「なんだ?あ、まさかまた市井に降るとかいい出すんじゃなかろうな。それは、国のためにならんから、却下だ」
「う……。い、いやあ。そんなこというわけないではありませんか」
「言うつもりだったんだな。はあ」
「は、話が逸れてしまいましたね。それで、アインス王国の内乱の状況は?」
「いっそ清々しいほどに分かりやすいな。……っと。笑顔で親を睨むな。話に戻るが、平民の攻撃魔法を使える奴らが暴れ回っているな。あの国は対策もしっかりできていないから、相変わらず国の破壊は続く一方だ」
この世界の基本魔法属性は主に5つ。火、水、風、光、闇、だ。加えて、無属性、回復属性、結界属性、能力強化属性、補助属性などの特殊魔法属性がある。特殊属性は10人に1、2人くらいで持っている珍しい魔法属性だ。
基本属性の魔法は、生活魔法レベルだったら誰でも扱うことができ、とても便利である。戦闘に扱えるかどうかは魔力量で決まる。魔力量は遺伝によって決まるため上流階級の方が魔力量が多い確率が高い。
だが、確率が高いだけであって、貴族だからと言って魔力がほとんど無い人間は沢山いるし、平民の中にも代々魔力が多い家系は存在する。
そもそも、貴族と平民を分けるのは財力や領地の統治能力であるから、王族としては魔力量云々は別に貴族を評価する時の評価基準にはならないからだ。
それでも、魔力が高いことは勉強ができるのと同じくらいには評価される。
もしも、評価しなかった場合、アインス王国のように、平民で優秀な魔法使いが暴動を起こし国が倒れてしまう可能性があるからね。今回の件によって、他国では既に平民で攻撃魔法を使える人を優遇するべきだと言う議論も上がっていると聞く。
「アインス王国の方はわかりました。それで、フィーア王国の出方はどうなんですか?」
「ああ。戦闘準備が進んでいると情報が入ってきている。向こうもやる気だな」
戦争において戦い以外に重要なことは、主に3つある。
①情報戦:ドライ王国の場合、各国に特殊魔法を扱える密偵を配置しており、他国から情報収集をしている。今回のクーデターのように、事前に貴重な情報は入ってくるため、戦争においては実際に戦うよりも重要だと言われている。
②食糧戦:食料がなくなれば飢え死にする人が多く出るため、戦に負ける確率は高まる。なので、ドライ王国では常に複数箇所で食料を備蓄をしている。
③経済戦:輸出、輸入を管理することで、相手に揺さぶりをかける事が可能だ。例えば、香辛料の輸出を止めることは、戦争の抑止に非常に役に立つ。ドライ王国では、胡椒と砂糖の生産が盛んであり、戦略資産に認定されている。
以上のことを踏まえると、フィーア王国からこのような情報が入ってきていると言うことは、我が国が情報戦においてもアドバンテージを取れていると言うことだろう。いい状況だ。
「そうですか。僕はどう動けばいいですか?何か手伝える事がございましたら……」
「ああ、いい、いい。今回はお前の出る幕はなさそうだ。フィーア王国が出てくるまでは、町の中での乱戦がメイン、フィーア王国と戦争になったとしても、建物を使った戦闘が主流になりそうだ。だから、おそらく、今回の戦争で鑑定スキルを使う機会はないな。いつも通り、王宮での仕事を優先してくれ」
たまに、鑑定スキルで敵の情報を調べ、手伝ったりしていたが、その役目も今回はなさそうである。
「わかりました。では、そのように。お時間をいただきありがとうございました。くれぐれも、お体にお気をつけて」
「ああ。お前もな。久々に話せてよかったぞ」
親子の形はそれぞれだと言われているが、うちでの家庭の会話はこのような感じである。リアムに聞かれたら、堅苦しいとか他人行儀すぎると言われるだろうか。
しかし、僕たち家族はこう言う会話で結構幸せと安心感を感じていたりもしている。
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