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96:間話

挿絵(By みてみん)


ランドル王国新国王ヴィクトール・アーベレは姑だった元女王フローレンス・レヴァインの始末も済んで肩の荷を一つ下ろせた気分で多少安堵していた。


一方で妻のアラーナは未だに始末できていない。

まるで目の上の瘤だ。


アラーナはヴィクトールが予想していた通りの女だった。

彼女が間男を引き込んでヨロシクし続けている事もあり

ヴィクトールは未だに一度も床を共にしていない。


「初夜を済ませていないのに王妃が懐妊した」

という事実を作り出して

「王城に勤めるランドル人官吏の全員にアラーナの素行の悪さを知らしめる」

のがヴィクトールの狙いだ。


しかし初夜を行わない男もまた批判される。


その対策として

「ヴィクトールは不能者だ。不能治療のために侍医に日々研究させている」

という噂も流しておく。

それによって「不能者だ」と馬鹿にされながらも反感は買わずに済む。


そこにアラーナの不貞が明らかになれば…

「気の毒な夫に理解も同情も示さずに間男を引き入れた淫乱」

という事実がそのまま評価へと繋がる。


更にはアラーナが不貞相手の子を堕胎もせずに産みでもすれば

完全に王城内にアラーナの味方はいなくなる。


周りの者達が大人しく仕えている間は

「身持の悪さが貴族女性にとって社会面で致命的だ」

という事実にすら気が付かないのだろう。

(妻はーーアラーナはーー筋金入りの馬鹿なんだろうな)

とヴィクトールは思った。


それと同時に

(政略結婚というのは、本当に闇が深いな…)

とも、しみじみ思った。


側近達の妻達には

従順な者も居れば

やはり夫の寝首を掻こうとした者もいた…。


(ブルクハルトの妻のように「逃げる」のも困るが、それでも寝首を掻こうとする女よりはマシなのだろうな)

と思いながら、ヴィクトールはブルクハルト関連の報告書を読み漁った。


ブルクハルトは妻に逃げられて以降、直ぐに妻の居所を突き止めている。


しかし無理に連れ戻しても嫌われてまた逃げられるのが判っていたため、妻を連れ戻すより先にアザール系闇ギルドの根絶やしを優先させたようだった。


アザール系闇ギルド関連の情報を掘っていくと、連中はバルシュミーデ皇国皇太子派の一部の過激派と繋がっている事が判った。

(元「第二皇子派」は現在「皇太子派」となっている)


つまりランドル王国においてまで

「第二皇子が(皇太子が)第一皇子より(ランドル国王より)上だ」

と考えてふんぞり帰るバルシュミーデ人貴族らは

アザール系と連携しているから調子づいていられるのだと判明。


ブルクハルトは元々

「敵には情け容赦がない」

男だったが…

その件では鬼神ぶりを存分に発揮してくれた…。


ブルクハルトに粛正された者の死体は文字通り「肉片」であり…

人間としての原型を留めない姿となるので

「その肉片が生前どこの誰だったのか?」

に関しては周りの証言に頼る事になる…。


不思議な事に、ブルクハルトがキレて自ら粛正する相手はどいつもこいつも筋金入りの鬼畜だった。


散々、他人を痛ぶって面白がって殺してきていた鬼畜を

まるで直感的に見抜いてでもいるかのようにブルクハルトは

「肉片に変える」

のだ。


運悪く自分の目で肉片を目撃してしまった時には

ヴィクトールは元より他の側近達も

「ブルクハルト、怖い」

と実感してしまう所だが…

普段のブルクハルトはとても謙虚で常識人だ。

(そのギャップが余計に怖いとも言えるが)


そのブルクハルトに対して、怖いもの知らずにも言い寄って

「本物の辺境伯夫人」

になろうとしている女が湧いた、との噂が広まっている。


なのでヴィクトールは暗部に調査を依頼し

今しがた、報告書を受け取ったのだった。


「なるほど。先代辺境伯が若気の至りで手を出した女が産んでいた娘があの『ワンダ・アシュトン』だったのか…」


バルシュミーデ皇宮でもワンダ・アシュトンは有名だった。

ビッチとして…。


誰彼構わず股を開く頭の弱いアバズレ。

見た目が良いので誘われれば皆誘いに乗るが誰も結婚を前提に付き合おうなどとは思わない。

ブルクハルトは騙されやすかったという事なのか、一時期真剣に付き合っていたようだが…

ワンダの性質を知って直ぐに別れて縁を切っている。


そのワンダがブルクハルトに対して

「運命の相手だったのよ!」

などと言っているらしい…。


それに対してブルクハルトは

「いい加減にして欲しい」

との思いからブライトウェル城にあった血縁関係看破魔道具を取り寄せたようだった。


ブルクハルトが思い悩んで

「リリアンの姉のエリアナまで処刑されるようでは困るので、何とかワンダだけを処刑に追い込めませんか?」

とヴィクトールに相談したので

「検討してみる事にしよう」

とヴィクトールは色よい返事をしておいた。


ヴィクトールはその後すぐにユルゲンに相談。

具体的対策案を出させた。

そこでユルゲンはブルクハルトがクレーバーン公爵領へ行くように仕向ける事にしたのだった。


「クレーバーン公爵を追い詰めるために盗賊団関連の誤情報を流して、クレーバーン公爵領の冒険者に人的被害が出るようにする」

という計画を聞き齧ればブルクハルトが家出中の妻の元へ行き、安否確認するなり手助けするなりするのが分かりきっていた。


それにアザール系闇ギルドの残党の処分も、王太子派の過激派の処分も済んでいる。

「ブルクハルトが妻を連れ戻すのにもそろそろ頃合いだろう」

という意見はヴィクトールもユルゲンも一致している。


ヴィクトールとユルゲンは

「念の為にブルクハルトが王都を離れている間に、暗部を使ってワンダの体液を採取して、サッサとエリアル・ベニントンとの血縁関係を調べておこう」

と思ったのだ。


その結果ーー

残念ながらワンダはエリアル・ベニントンの娘だという事が判明…。


「「………」」

ヴィクトールとユルゲンはその事実に絶句しながら

((念の為に先に調べておいて良かった…))

と自分達の英断を自画自賛した。


しかし、今後の成り行きが恐ろしい事態に繋がりかねない…。


(このまま何も小細工を加えずにいるとワンダ・アシュトンがエリアル・ベニントンの娘で、レベッカの複製体であるリリアン・クンツがエリアル・ベニントンの娘ではない、という判定になってしまう…)


そうなるとブルクハルトはワンダと婚姻し直し

リリアンは野に放たれる事になる。


(リリアンに一目惚れしていたコルネリウスには朗報なんだろうが…。ブルクハルトが荒れると、この国が今後どうなるのかが怖い…)


暗黒の血塗れ未来予想図が簡単に脳裏に思い浮かんだヴィクトールは

「よし、エリアル・ベニントンの血判付き文書を偽造しよう!」

と素早く決断。


祖母であるリリー・リサの血液なら入手できる。

王城地下宝物庫が発見されているのだ。

そこにはリリー・リサの肉体の原本であるランドル王国初代国王の娘ララ・ローラの血液がある。


「その血液を使ってエリアルの血判付き文書を偽造すれば、ワンダは赤の他人、リリアンは娘、という判定結果になる筈だ」

ヴィクトールがそう計画を話すと


ユルゲンも

「まぁ、阿婆擦れを辺境伯夫人にしないためには必要な偽造でしょうね」

とすんなり納得。


しかし作戦を上手く行かせるには

「エリアナが出しゃばって来ては困る」

という点でも気遣いが必要だった。


エリアナが自分の血を出してくると

「エリアルによく似たエリアナが1親等ではなく2親等だ」

というオカシナ結果が出る事になる。

(リリー・リサはエリアナにとって母方の祖母。親と同等の血の近しさはない)


エリアナを審議の場に来させないための仕込みとして

「エリアナの夫のダニエルがワンダと浮気している(!)」

事実をそれとなく悟らせた。


そもそもがエリアナがワンダを推していたのは

「リリアンが嫌いだ」

という自分勝手な好き嫌いからだ。


ならばエリアナがリリアン以上にワンダを嫌いになれば良い。

そうすれば急遽、エリアナはワンダへの協力を取りやめる筈だ。


そうした算段が整ってから

「上手く行きそうですね」

とユルゲンは満足そうに頷いたが


次の瞬間にはユルゲンは少し表情を曇らせ

「…ですが、こうしたお節介はブルクハルトを騙す事になりませんか?ブルクハルトには後でちゃんと真実を教えてあげるべきですよ」

とヴィクトールへ忠告した。


「それなら、ブルクハルトの元に妻が戻ってきて彼のご機嫌が良い時にでもお前の方から話してくれ」

とヴィクトールは頼んだ。


ブルクハルトの反応が予想が付かず

(おそらく怒りはしないとは思うが)

自分で言う勇気が湧かなかったのである…。



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