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90:ブルクハルト・クンツ視点30

挿絵(By みてみん)


ロードリック・クロックフォード。

これまでは単に

「元ワイアット侯爵令嬢だったマライアを妻に持っていた世襲宰相」

という程度の認識だったが…


「乙女ゲームの攻略対象の1人」

という眉唾情報を絡めて見ると

急に愛嬌があるように感じられるのだから不思議だ。


「協力は惜しみません」

と言ってくれたが…


養子がまだ2歳程度という事もあって

「バルシュミーデ人貴族を後継者の婚約者に据えるという恭順姿勢を未だ見せられていない」

という事も協力姿勢の背後にあるのだろう。


ダウズウェル公爵家はロードリックの代になる前にアザール系貴族に便宜を図る体制がほぼ常態化していた。


ロードリックがそれをよしとせずに、公爵位を継ぐと共に

父、祖父と方針を違えたのは親友だったドミニクの影響が強い。


とは言えーー

ロードリックでもドミニク暗殺を止められなかったから

ドミニクは故人となっている。


(元王子ドミニク…。気になって王城で肖像画を探したが、処分されてたんだよな。余程「サディアス国王は異母兄のドミニクが嫌いだった」という事か)


俺はドミニクの顔を知らないので

「ロードリックが引き取った養子というのがドミニクの隠し子なのか複製体なのか」

を識別もできない。


(だが、ドミニク派の連中が発狂せずにいられるのは、間違いなくその子供が存在しているお陰だろうな。つまり「複製体である可能性が高い」訳だ)


リリアンの注釈による説明だと

「血液が残っていれば複製体を培養できる」

らしいので…

当人の意志に関わりなく死後でも複製される可能性はある。


(特定の相手を崇拝して崇拝対象当人の意思を無視して複製体を欲しがるなんて、色々と病んでるな…)

と思う。


ジギスヴァルトやそのシンパの連中のように自分自身で

「永遠に存在し続けたいから自分の複製体を作る」

ようなヤツも相当病んでると思うので

「複製体を作れるという技術そのものが人間の中にある狂気を具現化してしまう」

取り扱い注意物という事になるのだろう。


(だからこその「禁忌魔道具」か…)


ルシンダの容姿は

「顔立ちは父親似」

「色味は母親似」

だったらしい。


ルシンダの祖父がセヴラン・アザールである事実も血縁関係看破魔道具のお陰なのだとか。

レベッカ夫人が私的問題解消のために作った血縁関係看破魔道具が意外に色々な場所で役立っている。


魔道王国時代には色んな魔道具が溢れていたらしいが、魔道王国が滅亡して以降は技術失伝が起こり、今となってはランドル王国の魔道具技術が他の国より優れているという事もない。

そんな中でレベッカ夫人は画期的な魔道具を開発していた。


血縁関係看破魔道具もレベッカ夫人が開発するより前に既に王城の地下宝物庫にあった可能性が高いが、盗み出されている可能性も高い。


「セヴランとルシンダに共通する容姿の特徴を描き出して欲しい」

と要望を告げられた画家が神妙に頷いて絵を描き始める。


前世の世界で言うところの謂わばモンタージュ写真作成という作業の絵画版だ。


一流と言われるだけあって下絵の時点で上手い。


(「ルネ・シャントルイユ」か…。闇ギルドの首領だなんて、そういうのは本人がなりたいと思ってなるものなのだろうか…)

と、ふと疑問が起きた。


前世で犯罪者一族に生まれていたからこそ

(罪というものは『それは罪だ』と教えられてから、どう思うのか、どう振る舞うか次第で本当に罪になるのだろうな)

と感じる。


前世では著作権などのような水物の権利もあったので

「それのどこが著作権の侵害なのだ?」

と納得のいかないような権利侵害告訴も溢れていた。

「悪法も法だ」

と渋々告訴者側の言い分通りに自分側が譲歩させられる事もある。


そういう水物の権利侵害とは別に

「それは明らかに権利侵害だ」

と誰の目にも明らかな権利侵害が野放しになってもいたし…


罪というものは

「法に照らし合わせて」のものと

「人が生きる中で特定の相手へ不当な損害を強いる」ものとが

バラバラに存在するものだ。


裏社会で生きる者達の罪は

「人が生きる中で特定の相手へ不当な損害を強いる」

ような類の罪であり、本物の罪だった。


だが組織的犯罪者集団の中に生まれ落ちた者が無自覚に罪を犯す事を、本当に罪だとは言えない。


本当の罪は

罪を指摘されて罪を自覚し

一般人として生き直す道もあるのに

それでも罪な生き方を引き継いだ時に

「罪だ」

と確定する。


「罪を犯して生きる」

事そのものが罪なのではなく

「罪を犯して生きる道を選んだ」

時に、自発的な本当の罪になる。


俺の場合は自分の中に

「罪を犯さず生きたい」

という気持ちがあったし

「仲間から逃げて一般人になれないものか」

と迷う気持ちがあったから

罪を罪だと

悪を悪だと

理解できていたし、今でも理解できている。


(「闇ギルドの首領」なんてポジションだと、前世の俺の中に有ったような「悪への迷い」はきっと持ってないんだろうな…)

と、ルネの事を考える。


悪人へは親しみを感じるし

それでいて好意は感じない。

容赦なく拷問も虐殺もできる。


画家が描いたルネ・シャントルイユの姿絵に近いと思しき人物画を見ながら

「何処かで会ったら、確実に殺そう」

と決意を固めた。


******************


リリアンの居所はエセル・アボットによって

アッサリと教えて貰えたのだがーー


何故か

「ギードを殺さないと約束してくれ」

と事前に言われていた。


クレーバーン公爵領のダンジョン街パクストン。

そこは魔石や魔物素材やドロップ品が産出されるので商人の出入りも多く、王都との間を行き来する馬車も多い街。

街道整備が済んでいるので、王都からの道も険しくない。


距離的には近い訳ではないが行商隊が片道三日で行ける。

騎馬で必要最低限の休憩で行けば、その半分の時間で行けた。


「無理に連れ戻そうとするなら、今度は国外へ逃がす事になる。くれぐれも無理強いして連れ戻すのは無しにしてくれ」

とエセル・アボットに念を押されていた。


(遠くから無事を確認するくらい許される筈だ…)

と思いながら…


変装した状態でパクストンの冒険者ギルドで

リリアンの姿を探し、後を尾けた。


そして

「ギードを殺さないと約束してくれ」

と言われた理由を知った。


ギードがリリアンにピッタリ寄り添っていた…。


ギードは見たこともないような優しげな視線を向けていた。

リリアンは心から楽しそうだ。

溌剌としている。

まるで恋人同士だ…。


(ああ…。確かに約束が無ければ「殺したい」という衝動に呑まれただろうな…)

と納得した。


(あの2人は屋敷に居た頃から実は惹かれ合っていた、とかなのか?)

と疑いが起きるが…


(いや、ギードはあの屋敷に居た頃は侍女の1人と付き合っていた。リリアンへ気のある素振りを見せようものなら侍女が俺へ告げ口してきた筈だ)

と現実的に疑いを否定する。


呆然と妻と元部下の姿を見ていると、ギードがリリアンの肩を抱いているのを横から邪魔する男が現れた。


ギードの腕を掴んで憎々しげに捻り上げてくれたので

(いいぞ!もっとやれ!)

と思った。


しかし、ギードの腕を捻り上げた男はリリアンの方を向くと露骨に鼻の下を伸ばしている…。

顔も良い。

というか、Sランク冒険者のバルフォア・ジョーンズことロドニー・デューにソックリだ…。


(ロドニー・デューの息子か?複製体か?…いずれにしてもドミニク派の連中は胡散臭いな…)


男どもが互いに牽制し合っているので、どちらかと深い仲になるような事もなくいられるという事なのか、リリアンの笑顔には媚びた女の気配は一切ない。


ともかく

(ギードとだけ接触して事情を聞き出す必要がありそうだ)

と思った。


俺はギードほど気配隠蔽・気配察知に優れている訳ではない。

だがそこそこできる。


だからこそ

(リリアンにもロドニー・デューもどきにも気付かれずにギードだけが気付くのを待とう)

と気長に構える事が出来た…。



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