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89:ブルクハルト・クンツ視点29

挿絵(By みてみん)


アザール系闇ギルドを構成しているアザール王家の暗部。

それはアザール王家の庶子のうち能力の高い者達で構成されている。

連中は高性能な色替え魔道具を複数所有しているので、特徴的な赤目も第三者は認識できないようになっている。


オークウッド公爵邸の地下牢に潜り込んでいた工作員も赤目だったので、組織内での地位が高ければ色替え魔道具を供給されていただろうが、そうではなかった。

能力が低かったからなのか、或いは組織内の地位は年功序列制なのか、何からの理由で切り捨てられていた。


王都の冒険者ギルドのマスター、デール・フレッカーの元で王立魔法学院教師のエセル・アボットが教えてくれた事情では

「おそらく、この国が魔道王国だった時代に作られた色替え魔道具のほぼ全てがアザール系に盗られてしまっている」

との事だ。


昔からアザール系の王族・高位貴族はあの手この手でこの国の王女や資産家貴族家の令嬢や夫人を誑し込んで孕ませてきた。

産まれた子が赤目だと直ぐに父親が特定できる事もあり、必死に国内の色替え魔道具を入手する。

そこを狙って色替え魔道具を盗む、というのが昔からアザール系がこの国で繰り返してきた「色替え魔道具の調達法」だというのだから呆れる。


そうやってランドル王国にあった魔道王国時代の伝統遺産をアザール人らが盗んできたせいで、ランドル王国ではそういった特定の伝統遺産が残されていない。


先王の妹だったリリー・リサが産み落とした子も色替え魔道具も持たされず、死産の赤子とすり替えられている。

王城の宝物庫にも、もう色替え魔道具が残されていなかったという事だ。



「ーーそんなわけで、アザール系闇ギルドの主要メンバー達の正体はなかなか掴めない。何せ見た目の印象の大半を占める色味が全くあてにできないんでね」

とエセルが肩をすくめた。


「…そんな正体不明な連中の正体を俺には『暴け』と?」


「…俺達はバルシュミーデ皇国の芸術文化のレベルの高さ、特に写実的な肖像画を描く技術に期待してるんですよ」


「写実的な肖像画を描く技術?」


「モノトーンで写実的に描かれた肖像画なら色味関係なしに純粋に顔立ちの特徴だけを際立たせてくれるでしょう?」


「…確かに我が国の画家達の技術は俺も感心するが…幾ら技術が優れていても『見たことがないものは描けない』筈だぞ?」


「闇ギルドのメンバー当人を見る事はできなくても、よく似た血縁者の顔が分かれば多少は予想できると思いませんか?」


「ああ、なるほど。先ずは似た人物を描かせる訳か」


「とは言え、闇ギルドの首領とよく似ていたと言われていた人物は既に亡くなっているので、その人物が生きてた頃に描かれた肖像画を元に描いてもらう事になりますが」


「………」

(随分と紛らわしいし回りくどい…)


そんなにも闇ギルドの主要メンバーに関しては情報が集まりにくい。

だがエセル・アボットが「リリアンの居所を教える」代わりに出してきた条件がアザール系闇ギルド首領の手配書の作成だ。

面倒くさくてもやるしかない。


早速ヴィクトール皇子に一流画家を本国から呼んでもらった。


画家の到着と共に、役目を果たすべく画家を伴ってエセルに連れられて出向くと何故かダウズウェル公爵邸へと辿り着いた。


ダウズウェル公爵ーー

リリアンの言う乙女ゲームの中の攻略対象の1人だった

ロードリック・クロックフォード。


エセルは

「ロードリック様には既に話を通してます」

と和かに微笑んだ。


画家の顔が少し引き攣った。

流石にランドル王国の元宰相の名くらいは知っているらしい。


「アザール系闇ギルドの首領ルネ・シャントルイユはアザール王国先王弟セヴラン・アザールの庶子の1人です。

容姿がセヴランにそっくりで能力も高いという事でランドル王国でのアザール系暗躍の首魁として本国でも認められています」


「闇ギルドの首領の名前は分かってるんだな?あとアザール王国先王弟に似てるって事も」


「ええ。ダウズウェル公爵邸はアザール王国先王弟セヴラン・アザールが遊学と称してランドル王国に滞在していた頃に宿泊していた屋敷ですから、肖像画が残ってます。ルネ・シャントルイユの父親セヴランの肖像画がね。

そして更にはルネ・シャントルイユの娘と思しき女性の肖像画もあります」


「…?ルネ・シャントルイユの娘?」

思わず俺は首を傾げた。


「認知されていない庶子とかか?」


「おそらくは」


「何故ルネ・シャントルイユの娘だと判る?」


「その娘ルシンダの母親はアザール系が屯するスラムに度々出入りしていた女だったし、ルシンダ自体がセヴラン・アザールの肖像画によく似ていたからです」


「スラムに出入りしていたとかいう母親から証言が取れたのか?」


「いえ、証言を取るのは難しいでしょう。その女はランドル王国にはいません。元はクラリッサ・チャニングと名乗っていた女で、子供を産んで直ぐに孤児院前へ捨てると、その後はクラリス・バルビエと名乗りアザール王国へ移り住んでいます」


「ん?クラリッサ・チャニング?………」

(クラリッサ・チャニングって、クラリッサ・チャニングだよな?乙女ゲームとやらのヒロインとかいう…)


「クラリッサ・チャニングは先代クレーバーン公爵が国立劇場の女支配人を愛人にして産ませていた庶子です」


「だよな。現クレーバーン公爵の異母妹だったよな?」


「よくご存知ですね。クラリッサに関してやはりレベッカ様が何か書き残していたのですね」


「…レベッカ夫人の書き残した文書よりはリリアンが書いてくれた注釈の方が詳しいが」


「…そうですか」


「アンタの話ではクラリッサ・チャニングがルネ・シャントルイユと関係を持って、ルネの子を産んでたって事だな?」


「ええ」


「でも、そのクラリッサって女がランドル王国に居たのは20年以上も前の話だよな?」


「そうですね。クラリッサの娘ルシンダが生きていたら23歳になるので、その頃にアザール王国へ移り住んでる筈ですね」


「『生きていたら23歳になる女』って、それってダウズウェル公爵の愛人だった女なんじゃ…」


「そうです。本当によくご存知ですね。ロードリック様は当初クラリッサが産んだ娘が自分の胤による子供ではないかと責任を感じて孤児院へ足を運んで寄付金を弾んでいました。

ですが血縁関係看破魔道具によって血の繋がりが無いと分かってからは親戚の子供を可愛がる感覚で接していたとの事です」


「『親戚の子供を可愛がる感覚』ね。…実際に親子だったかも知れないくらいに歳が離れた女をよくも愛人にできたものだな?」


「…実際には違います。ロードリック様は知人から赤子を預かったので、その子を育てる養育係としてルシンダを雇っていたのですよ。

血のつながりはなくてもルシンダを実子同然に可愛がってましたから、預かった子を育てる大事な役目をルシンダに託した訳です」


「そうだったのか?!」


「ですが世間的には『愛人』として見られていたので、ルシンダに子育てを任せていた預かり子をこの度正式に養子に迎える事になさいました。

血のつながりがない預かり子が世間の目からは愛人に産ませた庶子という見方になるでしょう」


「ダウズウェル公爵が赤子を預かったって…。その子供の親はどうしてるんだ?ダウズウェル公爵の知人とかなら当然貴族だろ?自分で育てないのか?」


「クンツ閣下は『何故ドミニク派がダウズウェル公爵と懇意なのか?』という点を何も疑いになられないと?」


「…ダウズウェル公爵が預かった子供というのがドミニク・ケンジットの隠し子だったとか、ドミニク・ケンジットの複製体とか、そういう可能性を疑えと?」


「いえ、『疑え』とは言ってませんね。俺としては『ただ友情に厚いだけのロードリック様』が世間的に『若い女が大好きな色ボケ中年』と思われている事が残念でならないので、世の中の内情を知る人間まで世間的偏見を引き継ぐ必要はないのではないかと思っただけですよ」


「…そういえば、クラリッサの異母兄のアラン・チャニングは認知されてない方の異母妹を自宅へ保護したのを『愛人を家に引き込んだ』呼ばわりされてたな」


「あの濡れ衣もお気の毒でしたね。しかしランドル王国ではランドル人貴族が行為も発言も悪し様に歪曲されるのはいつもの事ですから」


「不思議だな。逆にアザール系貴族の悪評なんて、連中の天下だった頃には一切聞こえて来なかったのにな」


「風評被害は風評加害者がいてこそのものだという事ですね。要は風評加害者を操ってる連中だけが何をしても悪評が広まらない、という現実がこの国にもあります」


「アザール系権力を解体中の現在もランドル王国内でランドル人貴族が悪評を捏造され続けるのはどういう訳だろうな?」


「惰性ではないでしょうか?『ランドル人が批判して良いのは同じランドル人だけ』というアザール系にとっての御都合主義ルールに従わされていて全く自覚も無かった者達は、そうした刷り込みを施した連中が死んだ後も不思議と惰性でそれまでの生き方・在り方を踏襲し続けるんでしょうね」


「知性有る人間とは思えない在り方だな」


兎にも角にも、ランドル人貴族は評判よりはマトモな人間が多いのだという事実を知る羽目になった。


ダウズウェル公爵ことロードリック。

彼はエセルとくだけた挨拶を交わした後、俺と画家に自己紹介してくれて、件の肖像画がある部屋へと俺と画家を自ら案内してくれた…。



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