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挿絵(By みてみん)


55人もの討伐員が一斉に団体行動を取っていれば標的の目にもすぐにそれと明らかになる。

なので5人1組のグループで行動するようにとの指示がされた。


元々5人パーティーの人達はいつものメンバーで行動できるが、それより少ない人数のパーティーは他のパーティーとの混成になる。


私、ギード、クリスは3人パーティーなので2人組とグループを組む事になった。

ニール、ロイという2人組。年齢的には20歳前後くらいでギード達と同じくらいだけど、ランクは私と同じDランク。


魔力のない人達が冒険者になっても、そうそう強くなれないし稼げない、という冒険者事情を思い出してしまう。

10代半ばから冒険者をしているなら、そこそこ経験は積んでいるのだろうに…

2人とも装備が安っぽい。


(魔力のない人達はDランクくらいで打ち止めでそれ以上昇格できないって聞いた事があるな…)


失礼にならない程度に即席メンバーになる2人組を観察してから

「リアです。これから三日間よろしくお願いします」

と挨拶した。


ニールとロイは複雑そうな表情。

自分達より若い10代の女子が冒険者歴2年で同じランク。

自分達と同じくらいの歳の男達が冒険者歴2年でBランク。


((よろしくお願いされたくない…))

とでも思っていそうだが

「ああ」

「よろしく」

と苦笑しながら頷いてくれた。


ーーが

「それにしてもどんな手品を使ってランクを上げてるんだ?」

と尋ねられたので

「?」

思わず首を傾げた。


「まさか『魔力』の存在を知らないのでしょうか?」

私が疑問を口にすると

「リア。『魔力』は、それを持たない者達にとっては眉唾物の詐欺に感じられるんだよ」

とクリスが答えた。


「そうだったの?」


「ってか、『それを持たない者達にとっては』っていう言い方からするに、アンタ達は『魔力持ち』を自称する人種なんだな?」

ニールの問いには


ギードが興味深そうに

「ところでアンタはなんで『魔力』が存在しないと思うんだ?騎士や高ランク冒険者が魔力で身体強化して戦っているのは結構庶民の間でも有名な話だぞ?」

とツッコミを入れた。


「はぁ?騎士や高ランク冒険者って、結局はコネで得ている地位だろ?」

「その手の連中が強いのは武器も防具も一流品を揃えているからだ。魔道具効果のある武器や防具も存在するしな」


「「「なるほど」」」

(((そう思うのか)))

魔力無しで冒険者をしていて高ランクになれない人達がどういう考えで冒険者業を続けているのか今までハッキリ訊いた事もなかったけど…


彼らは

「良い武器と防具が入手できたなら俺だって強くなれる筈」

と思う事で魔力の無い自分に絶望せずに戦闘職を続ける事ができるのだな、と分かった。


でも、それだと…

(この人達の目の前で体外魔法を使って大丈夫なのかな?)

と少し心配になる…。


本当に魔力というものが存在して

本当に魔法というものが使用される

という現実を知った時には

「魔力無しは戦闘職で芽が出ない」

という現実をも知る事になる。


「魔力を体外放出する可視化された体外魔法が廃れているから、『魔力なんて存在しない』という考え方が庶民の常識になりつつあるって事なんだね?多分…」

とギードが小声で呟いたが


幸いニールとロイには聞こえなかったらしく

「ダンジョンのドロップ率自体が低くて未だ良い武器も良い防具も手に入れられないんだけどな」

「そのうち運も向いてくるさ」

と、いつか訪れる幸運に縋っている心境を語ってくれている…。


(まぁ、他人のために気を揉んでも仕方ないか…)

私は彼らが魔法を目にする事で起こる彼らの変化に関して考えるのをやめた。

自分は自分の仕事をする、と割り切っておかないと迷いが生じるし、戦闘職において迷いは命取りとなる。


コソ練のお陰で、自分の魔力量で、どのくらいの威力の魔法を何発くらい撃てるのかは把握済み。


火球は燃え移る物にぶつけるのでないと火は直ぐに消えるので大したダメージにならない。

毛むくじゃらの魔獣に使う分には効果が抜群だと思うが、毛の無い魔物にどの程度効果があるのかは謎。

ただダンジョンと違って、外での魔物討伐は死骸の処分が必要になる。

血抜きが済んだ死骸を焼却処分するのには良さそうだと思っている。


一方で風刃は便利。

弓程は飛ばないが、矢をつがえる時間も掛からず、瞬間的に発射できる。

なので敵の距離次第で弓、風刃、短剣と得物を取り替えて次々攻撃できる。


父エリアルは剣による接近戦を得意にしていたが、不意打ちで風刃を撃つ中距離戦も得意だった。

私の風刃のお手本は父の風刃だ。


ダンジョン内だと、風刃のような体外魔法は使えなかった。

ダンジョン内では身体から出た魔力はダンジョンに吸収されてしまう。

本当に死ぬか生きるかの危機だけは別だが、基本的にダンジョン内では体外魔法は禁止だ。


だけど練習して撃てるようになってからは、ずっと風刃を使いたかった。


弓と短剣を使う軽量級冒険者は、矢をつがえて射た後、素早く弓を背負い、短剣を抜いて構える事になるが、ギリギリまで矢を射ると短剣を構える前に魔物が接近してきて命取りになる。


なので魔物がこちらへ向かってきたら早々に弓は引っ込めて短剣を構える。

その間、数秒の待ち時間が勿体なく感じていた。


ダンジョン外だと体外魔法を撃っても魔物の利益にはならないので、その数秒を魔法攻撃に回せるのだ。


(風刃なら連続使用で18回使える…)

少し時間が経てば魔力も回復してまた使える。


負ける要素は無いので、体外魔法の実戦訓練代わりに盗賊を的に試し撃ちさせてもらうつもりだ。


討伐依頼は

「盗賊団のアジトまで行き討伐隊で囲む」

「アジト襲撃・残党狩り」

「パクストンまで無事帰還して報告」

までやって依頼達成なので

「必要日数は三日間」

と見積もられている。


盗賊団のアジトは馬で駆ければ半日も掛からない所にある。

だけど「アジト側まで移動した後には休憩も食事も摂れない(発見されてしまう)」ので、途中で休憩・食事を摂って、アジト近くには襲撃予定時の1時間前くらいに準備万端の状態で着くように、と指示された。


合流後はギルド職員から臨機応変に指示があるので、先ずは到着時間を調整しながら注文通りに体力も気力も万全な状態で着けるように気を使う事になる。


ただ

「もしも向かう途中で盗賊とバッタリ遭遇した時は討ち漏らさず皆殺しにするように」

と言われている。

アジトに戻られて報告されたら盗賊団の方で対策を立てて待ち構える事があるからだ。


団体行動はとにかく予定外の事態も生じやすく計画破綻しやすい。

「盗賊達にこちらの襲撃予定を知られた場合には赤い煙の出るこの煙玉を使って狼煙をあげるように。

赤い煙の狼煙が上がった場合にはアジト近くでの待ち合わせ予定は全て無かったものとして、アジトへ向かい、各自襲撃してください」


敵と冒険者との識別用に冒険者ギルドの紋章が刺繍された腕章が配られた。


いよいよ出発する事になって、私はふと

(こういうのって、この中に1人でも裏切り者がいたら、こちら側の全滅もあり得るんだよな…)

と思った。


団体行動、団体戦。

戦争はそういうものだが…

裏切り者、獅子身中の虫、それらを身の内に抱えたまま戦いに乗り出すと、戦力云々の前にかなり不利になる。

間諜という人種が呪われる筈だ。


(団体戦って怖いものだな…)

もしも裏切り者が出たとして、それが誰だか判らない場合、皆は誰を疑うだろう?


アザール人の欺きや仲間への擬態が周知された今のランドル王国では、赤目はまさに裏切り者の象徴。

色替え魔道具が無かったら、団体戦で裏切りがあった場合に私が真っ先に疑われていたのかも知れない…。


******************


不測の事態というものはやはり起こるもの。


アジト近くまでの道のりの途中、休憩・食事を入れて、再びアジト近くまで向かっていた時に狼煙が上がった。


「ああ、やっぱり誰か見つかったのか!」

とロイが苛ついたように言った。


「盗賊団討伐に参加したのは初めてか?」

ギードの問いには


「いいや、3回目だ。だけど前の2回もやっぱり合流前に誰か見つかって狼煙が上がった。皆で足踏み揃えて一斉襲撃ってのは上手くいかないものなんだよ」

と答えてくれた。


「アジトまで急ぐぞ!返り討ちの準備をさせるな!」

と、やはり経験者のニールが指示してくれた。



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