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出奔してから2年の月日が流れた。
冒険者活動をしながら魔道具を製作してみたものの
「魔道具師の資格を持たない者が作った物など誰も買わない」
というシビアな現実に行き当たり
「頭脳労働で身を立てる」
道はもう諦めた。
今では冒険者として強さを求めている。
ただ身体強化だけだと実力は伸び悩む。
「ダンジョン内で体外魔法を使うと体外放出された魔力がダンジョンの養分になるので良くない」
と言われているため、魔力があっても体外魔法は使えない。
そのため魔力は身体強化に全振りするしかないので…
(火球とか風刃とかの体外魔法が廃れたのはダンジョンのせいもあるのかもね…)
と思ったものだった。
2年もダンジョンで頑張ったお陰で
「身体強化しての短剣術・弓術」
には自信がついた。
ただ
(体外魔法はコソコソ訓練はしてきたけど、実戦ではとうとう使えないままだったなぁ…)
という点は不満。
最近では
(辺境へ戻って樹海の魔物相手に体外魔法を使ってみたい)
と思うようになってきている。
なので、その意向をパーティーメンバーのギードとクリスに伝えてみたが…
「まだ2年しか経ってないし、向こうにはリア(リリアン)の顔を知ってる者も多い」
「樹海ではなくとも街道脇には盗賊団が棲みついているし、体外魔法を試したいなら『盗賊団討伐』の依頼を受けるので良いんじゃないか?」
との事。
辺境へ行くのは乗り気じゃないらしい。
思わず
(ソロで冒険者をするのは…)
と考えたがーー
(多分、ソロで冒険者業をすると長く保たずに、遠からず死ぬ…)
と自分でも判る。
結構、2人におんぶに抱っこでお世話になっているのだ。
2人からすれば
「出来の悪い妹の面倒でも見てやってる」
という感覚なのだと思う。
パーティーを組んだ当初から、やたら彼らは私を自分の膝に座らせたがる。
言いなりになってやろうものなら「あ〜ん」で食べさせようとしてくる。
小さい子供でもないのに、小さい子供にするような世話を焼きたがる…。
(何でこの人達はこうなんだろう?)
と不思議に思ったが…
気にしたら負けな気がするので気にしない事にした。
彼らは基本的に私の意見を尊重はしてくれる。
だけどその意見が私自身に危険のあるものなら却下する。
やや過保護な尊重だ…。
結局、辺境の樹海を活動拠点にする案は却下され
「盗賊団討伐の依頼を受ける」
という案が採用された…。
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「盗賊団討伐の依頼って複数のパーティーで受ける依頼なんだね」
冒険者ギルドの一室に呼び出されて説明を受ける事になったので行ってみると、既に10人くらいの冒険者が集まっていた。
盗賊団の規模によって集める冒険者の数も異なるが
今回討伐対象になっている盗賊団は50〜60人くらい。
なので冒険者も同じくらいの数を揃えるとの事。
盗賊団のアジトを突き止めた上での襲撃なので、同じ数を揃える必要があるとは思えないが、盗賊というのは「人間を殺す事を何とも思っていない」分、迷いの無さがあり、強い。
人間を殺す事を躊躇う普通の感性の人間が立ち向かうには倍以上の数が欲しいところだが、そうなると依頼料も膨れ上がるので同程度の人数を集めて向かうのが、冒険者ギルドの定番らしい。
基本的に依頼主は領主。
辺境には騎士団があったが、普通の領地に騎士団はない。
ランドル王国では
王家直属騎士団
ブライトウェル辺境伯家騎士団
カークランド公爵家騎士団
メイスフィールド公爵家騎士団
パートランド公爵家騎士団と
五つの騎士団がある。
三つの公爵領はいずれも国境に面した領土だ。
つまり外敵牽制用騎士団。
因みにパートランド公爵領はアザール王国との国境に面していて、バルシュミーデ軍が侵攻してきた際に壊滅的被害を受けている。
(アザール人工作員がパートランド公爵家騎士団に大勢入り込んでいた事による大敗だったのだそうだ…)
ともかく騎士団を擁している領地以外では、騎士団に討伐依頼を出して騎士達を借りるか、冒険者ギルドに依頼を出して冒険者に来てもらうかのいずれかになる。
クレーバーン公爵領はメイスフィールド公爵家騎士団と近いので依頼しても良さそうだが、クレーバーン公爵領はダンジョンのお陰で大勢の冒険者誘致に成功している。
ダンジョン潜りを一時中断して盗賊団討伐に乗り出した冒険者53人。
女性冒険者の数は極端に少ない。
女性冒険者は大抵騎士の資格を取り損なった元騎士団員。
(男性の元騎士団員は皆、開拓民として開拓地へ追いやられたらしいが、女性だとただ職を失っただけのようだ)
押しの強い女性が多い。
そういう人達から見ると私は
「パーティーメンバーに寄生している寄生虫」
に見えるようで、彼女達は私を見かける度に睨みつけてくる。
今日はそんな彼女達と初めて同じ依頼を受ける事になったのでーー
彼女達はギルド職員に対して
「盗賊を1人も殺せなかった場合でも参加者全員に参加料が出るっておかしいんじゃないですか?」
「全然役に立たない弱い冒険者が参加料を狙って紛れ込むと、その分、人数から期待される戦闘力が実質下がると思いますよ」
「パーティーに寄生してランクを上げてるような実力が伴わない冒険者はこの際排除しておいた方が依頼も危なげなくこなせるのでは?」
と、私を睨みながら意見した。
ギルド職員の方では私が見た目ほど弱くない事を理解しているらしく
「…今回の討伐依頼はDランク以上の冒険者しか受けられませんし、冒険者ギルドではランクの実力に見合わない方を昇格させるような違法行為もしておりません。
幾ら冒険者業で生じる死傷の責任が自己責任だと言っても、当方では無駄に冒険者の方々を死なせるような事は致しません。
よって特定の冒険者を排除しようとして『実力が伴わない』と言い掛かりを付けて依頼中も揉め事を起こしそうな人達が居れば、そういった人達の方を排除せざるを得なくなりますが…どうしますか?
まだ何か言いたい事がお有りですか?」
と女性冒険者達の方へ言い返してくれた。
のは良いが…
女性冒険者達が私を見る目は更に厳しさを増した。
(このままじゃ討伐へ向かう途中でも戦闘中でも変な横槍入れてくるんじゃないかな?)
「まぁまぁ、お前らがそこのリアちゃんにムカつくのは判る気はするぜ?何せ冒険者業に就いて2年やそこらでBランクまで上がった出世株のイケメンを2人も独り占めしてるんだ。
いい加減、どっちかに決めて、片方を解放してやれよって言いたいんだろ?お前らの本音では」
と30代のベテラン冒険者が口を出すと
意外にも女性冒険者達は
「そうよ、どっちかにしとけってのよ」
「よくわかってるじゃないオッサンのくせに」
「女独りで男2人を侍らせるなんて何様よって思うわよね」
とベテラン冒険者の言い分を肯定した。
(そんな風に思われていたのか…)
私は溜息が漏れそうになるのを堪えた…。




