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挿絵(By みてみん)


あの日ーー


あの終戦記念パーティーが催されていた王城を飛び出した後、私は

「国外に逃げよう」

と思っていた。


ランドル王国では赤目は目立つ。

ブルクハルトの妻という役所から逃げる時には国外へ出るのが無難だ。

それで「アザール王国へ行こうか」と検討していた


のだがーー


ブライトウェル城に有った筈の色替え魔道具。

それを何故かギードが持っていて

「役に立つと思います」

と手渡してくれた事で事情が変わった。


魔道具を用いて灰褐色の髪と赤い瞳を、茶髪茶眼に見せ掛ける事に成功。

私を私だと特定する色味から逃れられた。


なので国内でも目立たずに済むようになり

国内で冒険者活動をして身を立てられる事になった。


そうして真っ先に向かったのは辺境ブライトウェル領ーー。


本当にバルシュミーデに支配されたのか?

この目で見ておきたかったのだ…。


勿論、伝え聞いた通りに辺境はブルクハルトが率いてきた樹海越え強行軍に乗っ取られていて、ブライトウェル軍は解体済みだった…。

それにより多少、人の出入りに対する制限が緩和されていて、偽の身分証でも無事に関門を抜ける事ができたのが皮肉だ。


解体された旧ブライトウェル軍の生き残りの人達は

「ランドル人に武器を持たせておきたくない」

という意向で剣や槍が大量に押収されて、代わりに鍬や鋤を与えられ開拓民として「農村の開拓」に従事させられていた。


そして両親と兄は共同墓地へ埋葬されていた…。


大きな穴を掘って布で包んで次々死体を落として埋め立てるだけ

という埋葬法…。

埋めてもらえただけ、ありがたいと思うべきなのか…。


墓参りしながら

(「戦争はいけない」のではなく「負ける戦争はいけない」のだな…)

と真理を悟った。


目立たない色味のお陰で誰も私を私だと気付かず

無事に墓参りも済んだが

(そのうち誰も彼もベニントン家の存在を忘れていくんだろうな…)

と寂しくも思った。


今現在ベニントン家は

「国を守れなかった無能」

として憎まれているが…そのうち誰も彼も名前すら忘れる。


色々咀嚼しきれない想いを抱えて私はブライトウェル辺境伯領を離れ、冒険者業で身を立てる事にした。


貴族令嬢で冒険者になる人は少なく、知り合いに遭遇する事もなかった。


だが、貴族令嬢が冒険者になる事はなくても

貴族令息が冒険者になる事は度々ある世の中。

王都で冒険者活動をしていたら、早々に見つかっていた可能性がある。


私はクレーバーン公爵領にあるダンジョン街パクストンを活動拠点に定めて、ダンジョンに潜り出した。


パクストン・ダンジョン。

30年くらい前に出現した比較的新しいダンジョン。

ランドル王国内に五つあるダンジョンのうちの一つ。


クレーバーン公爵家が急激に金持ちになった事と関係がある。

ドロップ品が出るダンジョン。


ドロップ品の出現率や品質の良し悪しなどは

「当人の運」

と関係していると言われている。


だけどそれだと私は

「運が良い」

という事になってしまう。

ドロップ率も高くて、ドロップする品も高値で売れるものが多い。


それでいて私は自分が運が良いとは感じない…。


寧ろダンジョン内での敵との遭遇率が高い。

まるでゴキブ◯ホイ◯イだ。

必死に誘引してキッチリ殺そうとしてるように感じられる…。


クレーバーン公爵領のパクストン・ダンジョンは国内ダンジョンの中で一番人気。


ダンジョンは空間属性魔物の一種。

「内部で冒険者が魔力を使ってくれる」

「内部で人が死んでくれる」

事で養分を得ている。


とにかくダンジョンは人間を誘致する必要があるので

養分を利用して魔石やドロップ品を生み出し

冒険者がそれらを獲得できるようにする。


ダンジョンにとっての養分をカネに擬えるなら

ダンジョンはカネを使って客を誘致し

客からカネを回収して成り立つ賭博場のようなもの。


客への還元率が低く

搾取率の高い賭博場からは

客は遠ざかる。


パクストン・ダンジョンは客への(冒険者への)還元率が高いから人気状態を維持していられる。

ある意味でパクストン・ダンジョンという魔物は他の同種の魔物より頭が良い。


私が居る事でドロップ率が高くなるという現象も

「冒険者誘致工作の一環」の可能性が高いと思う。


ダンジョン内の魔物は決して弱くない。

深くまで潜ると死ぬ確率が高い。


なので浅層・中層・深層のうちの浅層・中層までしか行けない。

それだってパーティーメンバーのお陰が大半だ…。


******************


従騎士だったギードは私を闇医者の所へ連れて行った後

一度ブルクハルトの元へ戻り


その後

「従騎士は辞めました」

と言って、再び私の元に来た。


それ以来一緒に行動し続けている。


「リリアン様と俺には実は共通点があるんですよ。『普通に男女が番って生まれた子供じゃない』っていう共通点が」

そう言われて


(ああ…。そうか…)

と気付いた事がある。


それこそ乙女ゲームのモブとして登場していた護衛騎士達…。

王子達の周りのもはや壁紙と化していたイケメン達。

その中の1人にギードがよく似ているのだという事。


「共通点って、子供ができなかった人が自分自身の複製を生み出した、その産物だ、という事?」


「ええ」


「元王子のドミニク様かグレッグ様の護衛騎士だった人が貴方のオリジナルなのよね?」


「はい。よく分かりましたね?」


「…貴方は『この世界がゲームの世界だ』って全く信じてないんでしょうね」


「それは流石に信じられませんが、それでも不思議な言語を読み解く能力は本物だと認めています」


「それで?複製体仲間が見つかって嬉しいから私に付いて来るの?」


「それもありますが…父親の…オリジナルの意向を呑んでのものです。リリアン様には考えも及ばないのでしょうが、政治的活動というものは『いつ死ぬか分からない』『親しい相手が人質に取られる事がある』という心荒むものなのですよ。

だから俺のオリジナルもいつ死ぬか分からないんです。だから彼が生きてる間に親孝行しておいてあげないと…」


「そう…だったのね」


禁忌魔道具の存在を知るまでは全く気付かなかったが…

(クローンは社会の何処かに潜んでいるんだな)

と判った。


ギードの他に仲間に加わったクリスもやっぱり

「乙女ゲームの護衛騎士」

にそっくりな若者。

泣きボクロの護衛騎士の顔から泣きボクロを取り去ったような顔…。


ギードとクリスはお互いを「兄弟」と呼んでるので2人とも

「クローン仲間」に対して親近感を持っている事が解る…。


王族の護衛騎士になれるような人達の遺伝子をそのまま受け継いだ人達。

潜在的戦闘力が高かったらしく…

ダンジョンも中層くらいは危なげなく進める。


有り難くはあるけど

「複雑な気持ちになる絆だ」

というのが私の偽らざる感想だった…。



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