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8:ブルクハルト・クンツ視点2

挿絵(By みてみん)


ブルクハルト・クンツとしての今の人生は、夢で見た前世らしき人生と比較するなら天国並みに運の良い恵まれた人生だと言える。


子爵家の庶子という位置付けも

「本妻の子は娘が4人という女だらけ」

の家族構成なので

「実子で唯一の男子」

として父からも異母姉妹達からも受け入れられていた。


後継指名はされなかったが認知はされていたので

「クンツ家の家名を名乗る」

事は許されていた。


姉2人は

「可愛い弟が欲しかった」

らしくて同母妹達よりも異母弟の俺を優先していた程だ。


その姉妹達は容姿に恵まれていて

長姉クラーラは伯爵家から婿を取り

次姉ペトーラは国内でも一、二を争う大商会の後継に嫁いだ。


それらが結構なコネとなっていたのだろう。


俺を袋叩きにした連中は

「庶子なら疎まれていて、父親からも本妻の子達からも見捨てられている筈だ」

という目算で俺に手を出してきたらしかったが…

そんな目算はめでたく御破算となり、連中の積み重ねた悪事は公けとなった。


公けになれば当然

「騎士団は集団暴行殺人者達を野放しにするのか?」

と問題視される。


連中は自分達の家のコネの方がこちらのコネより強力で全て捩じ伏せてくれると信じたかったようだが…

悪足掻きの無実主張は一蹴されて、法曹達の心証を悪くしただけだった。


連中は普通に刑事告発の対象とされ

普通に鉱山送りとなった。


本来なら公開処刑とするべきところだったらしいが

「処刑では、慰謝料が賄いきれない」

とかで


これまでに殺された者達の遺族の意向が汲まれ

「奴隷商からの買取料金と鉱山で発生する微額の給金が遺族への慰謝料へあてられた」

のであった。


勿論、世間的にも

「集団虐殺犯達の身元は公表された」

ので…


ヤツらの身内の者達が逆恨みして何か仕掛けて来ようものなら

「犯罪者の身内が被害者側へ謝罪・反省の意志も持たずに逆恨みして更に罪を重ねた」

と、これまたその所業を白日の元に晒してしまえば

世間様からの更なる追い討ちという援護射撃を頂ける。


バルシュミーデ皇国は地球世界の国々と違って良い国だ。


よってたかって集団で1人を不条理に暴行し殺すような鬼畜な罪人達が

(罪を隠蔽してもらえる事もなく)

「当たり前に裁かれる社会」

というのは良い社会だ。


俺は、俺を好いてくれる父や姉達が好きだし

俺を好いてくれる人達が暮らしているこの国のこの社会が好きだ。

護りたい。


心からそう思った時に

「この人生では、騎士は天職なのかも知れないな…」

と実感できたのだった。


********************


俺は幼い頃から異常に丈夫だった。


父に言わせると

「お前は無自覚に魔力を使って身体強化しているんだろうなぁ」

との事だった。


魔力を使って身体強化した人間から殴られると痛みを感じるが

魔力もない普通の平民の渾身のパンチを食らっても痛みを感じない。


魔力を持つか否かで身体の性能がまるっきり違うのが

この世界の格差が正当化される要因の一つでもあるらしい。


バルシュミーデ皇国で騎士に任命されるには「騎士団に属する貴族」という条件を満たす事が必要だが…

騎士団の入団資格自体は、それこそ「魔力を持つ国民」である。

(魔力さえ有れば騎士にはなれずとも従士・従騎士にはなれる)


この世界ーー

前世の地球世界のサブカルチャー内で展開されていた剣と魔法の世界とは微妙に異なる点もある。

何せ「魔法」を実用的に実践できる者達が殆ど居ない。


バルシュミーデ皇国でも皇族や高位貴族は「火」を出したり「水」を出したりできるらしいが…

それでも「ただ出すだけ」で魔力が尽きる。


つまり「火球」を飛ばす、「風刃」を飛ばす、などといった実戦に役立つ魔法を使える人間はこの国では圧倒的少数の圧倒的エリートな訳だ。


それでいて、バルシュミーデ皇国では

「魔力で身体強化する技術が戦闘職で浸透している」

のである。


お陰で魔力を持つ騎士は異常に丈夫。

只人なら数回死んでるような目に遭っても大怪我くらいで済む。


しかも魔力の有無によって寿命まで異なる。

只人なら40〜50歳くらいで老衰で死ぬが、魔力持ちの老衰は60〜80歳くらい。

魔力持ちは暗殺されたり流行り病にかかったりしなければ、長生きできる。

魔力は、それを持つ者達に圧倒的なアドバンテージを与えている。


クンツ子爵家は、改易された元公爵家の分家に当たる血筋らしい。


ランドル王国から嫁いできた妃が産んだ皇子が初代公爵。

そんな家柄だから

「異国の高貴な血も混じってるのさ」

だそうだ。


今現在ランドル王国がある国土は、かつては

「古代の魔導技術が受け継がれ続けた魔道王国だった」

そうだ。

ランドル王国の王城地下の宝物庫には今でも技術失伝した魔道具が大事に保管されているのだとか。


魔道王国の旧権力を打ち破り革命でランドル王国を興したランドル王国初代国王バーナード・レヴァイン一世は高い魔力の持ち主だった事が知られている。


その娘であるララ・ローラ王女もその血を受け継いだ高い魔力を持つ者だった。


その時代のバルシュミーデ皇王に嫁いできたララ・ローラ王女こそが我らクンツ家の先祖を生み出した妃。

(今から300年ほど前のこと。ランドル王国は興国から300年ほどの国だ)


「…先祖返りって事なのか、クンツ家では時折魔力の強い男子が産まれるんだ。俺の爺さんもそうだったって話だから、お前が産まれた時には『もしや』と思ったものだったが、期待通りだった!」

と頭を撫でてもらった時のことは不思議といつまでも覚えている。


身体強化の強度は魔力の質によって格差があるらしいが…

騎士団で他の者達との比較が起きたことで

俺は一際丈夫で魔力の質も高いという事が明らかになった。


公けにはしていないが、俺は

「火球やら風刃やらを飛ばしての魔法攻撃を行える(!)」

ごく少数の人間の一人だ。


「「流石!私達の可愛い弟ね!」」

と姉達が褒めてくれたのも誇らしかった。


騎士団内では

「ただ強いだけでコネがない」

ような奴は普通に潰されて出世も頭打ちされるらしいが…


妹の1人イレーネが侯爵家嫡男に見初められて婚約した途端

俺の待遇は劇的に良くなった。


更には

俺が騎士になる頃には

もう1人の妹ロジーネが公爵家次男と結婚して伯爵夫人になった事もあり

「近衛騎士に」

と推薦が為されていた。


「恵まれた才能に加えて努力家だ」

というのが好意的な皆様による俺への評価なのだが


やはりそこには

「無為に過ごしてはならない」

「努力し続けるべし」

といった不思議な強迫観念があったので


その甲斐あって認められても実の所、微妙な心境だ。

周りの皆様から認められてチヤホヤされても嬉しくない。


やっぱり

「家族が俺を褒めてくれて好いてくれる」

のが一番嬉しいのである。


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