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挿絵(By みてみん)


その手紙より後に届いていた手紙は

「王城地下へ行くための待ち合わせの日時と場所の指定」

が記されたものが続いていた…。


魔道具やゲームシナリオについての詳しい話は手紙でのやり取りを必要とせず直接やり取りするようになっていたのだと思う。


ブルクハルトはと言うと、私が翻訳した問題の手紙の訳文を読んで

「…これは皇子に思い当たる節があるかどうかを確認するべき案件だ」

と言い出した。


(まぁ、そうだろうね)

と思う。


ジギスヴァルト。ヴィクトール皇子にとっては父方の祖父。

ヴィクトール皇子の両親は従兄妹同士の結婚なので、ジギスヴァルトは祖父でもあり大伯父でもある。

そのジギスヴァルトが自分自身のクローンを欲しがっていただなどと、ヴィクトール皇子は思いもしなかっただろうし、寝耳に水の筈だ。


(そう言えば、ゲーム内のジギスヴァルトはランドル王族を皆殺しにしたので地下宝物庫に入るどころか地下迷宮で迷って宝物庫に辿り着く事さえできなかった筈…)


「あのですね…。思ったんですけど、バルシュミーデ皇国の皇太子となられた第二皇子フリートヘルム殿下の容姿って、どんな感じなんですか?」

私が気になった点を尋ねると


「それ、やっぱり気になるよな?」

とブルクハルトが苦笑した。


「やっぱりジギスヴァルト先王の子供時代の容姿に瓜二つとか?ですか?それで肉体年齢に似つかわしくない落ち着きと知識を持ってる、とか?」


「ああ。そんな感じだ。『天才だ』と持ち上げてる輩が何処まで何を知っているのかは判らないが…ジギスヴァルト先王の記憶を受け継いだジギスヴァルト先王ソックリの皇子なら、ジギスヴァルト先王の統治時代に慣れた年長者達は惹きつけられるだろうな…」


「皇太子のポジション争いの裏にそんな事情があったとは…」


「ヴィクトール殿下は初めから負け戦と決まってる皇位継承権争いをさせられていた、という事になるな」


「それは何だか気の毒ですね」

(ザマアミロ、とも思ってしまうけど)


「23年前からジギスヴァルト先王が『自分のクローンを作り、そのクローンが育ったところで自分自身の記憶を受け継がせて皇位継承権第一位に持ち上げる』という計画を立てていたとしたら、ジギスヴァルト先王も、その協力者の側近達もすごい執念だ…」


「…やっぱりジギスヴァルト先王の側近達にも『ソックリな子供』に見せかけられたクローンが与えられてたりするんでしょうか?」

私が疑問を口にすると


「…いい歳をしてから子供を作り、その子供がその親に余りにもソックリだ、という事例がその界隈で不自然に多いのは事実だが、今の時点では、それを『クローン』と呼んで良いとは思わない」

とブルクハルトが厳しい表情で言った。


(確かにそうだ…。バルシュミーデ皇国の偉い人達が魔道王国の禁忌魔道具を悪用して「自分の姿と自分の記憶とを永遠に残し続けようとしている」かも知れないだなんて、そんな狂気的な統治を行うつもりかも知れないだなんて、バルシュミーデ皇国の人間なら信じたくないよね…)


これがランドル王国で起きた事態だとしても

(うわぁ〜…。嫌だぁ〜…)

と思う。


ふと私は自分が前世でドナー登録をしていなかった事を思い出す。


「他人から臓器をもらってまで(奪ってまで)生きながらえたいだなんて、そんなに生に強欲になれないし、この感覚こそが正常だ」

と思っていた。


自己保存欲求は誰にでもあると思うけど

それは行き過ぎると気持ち悪い…。



ブルクハルトは

「瓜二つの子供がいる第二皇子派の貴族達」

の名前をリスト化するように書き出している…。


(そんなにいるのか…)


ふと思う。

(クローンはクローンで自分の人生があるんじゃないのかな?)

と。


(勝手にオリジナルの側の記憶を埋め込まれて「俺の続きを生きろ」と押し付けられるなんて嫌なんじゃないのかな?)


そんな風にクローンの側に感情移入してしまうのは、私が母に瓜二つだからなのかも知れない…。


****************


何故か気が滅入った。

心の片隅に疑惑が生まれたからだ。


「人体複製魔道具」

「記憶同期化魔道具」

そういった魔道具の存在自体はゲームの裏ルートに登場していたので、今更驚く事ではないが…


(お母様が宝物庫のそれらを模して同じ機能の魔道具を作った可能性があるんだな…)

と思うと胸がモヤモヤする。


そうーー


私は自分のことを

「クローンかも知れない」

と心の何処かで疑い出している…。


今にして思うと母は私に優し過ぎた。

父もそうだ。

不自然に優し過ぎた。

本当の親子ならそんなに気を使うものかな?と訝しく思うくらい

あの人達は優し過ぎた…。


「リリアンはリリアンで良い」

「貴女は貴女自身であって良い」

「自由に生きて幸せになりなさい」

そんな風に我儘を増長させるような甘やかし、貴族家の子供がそうそう受けられるものなのだろうか?


子供の躾もできない親バカならともかく

両親は兄姉を見る限り子供を甘やかさずに育てる力量があった。

なのに私に対してだけ親バカみたいに甘やかしていた。


(本当は、愛されていなかったのかも知れない…)

と感じてしまう。


ブルクハルトが私に親切なのと同じように

「罪悪感があるから優しくせずにいられない」

ような心理があったんじゃないのかと疑ってしまう…。


だけど私は

「今はまだ私自身に関する真実は判らない…」

と思う事で、その件に関しては考える事を放棄する事にした…。



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