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挿絵(By みてみん)


こちらの知りたかった事を核心を突く形で述べてくれている手紙があった…。

私は一度貪るように読んだ後で、思わず二度見した。


ともかくこの手紙は翻訳してからブルクハルトに見せようと思う…。



〈我が永遠の憧れの貴婦人、レベッカ様。先日、手紙のお返事をいただき、我が主ドミニク殿下と共に拝見させて頂きました。


レベッカ様からは「『時空の虚無神』の憑座になるNPCの共通点」について「ダンジョンに入った事がある」「男性である」といった特徴の他に「ランドル王国を憎悪している」という特徴が追加されるべきなのかも知れない、との意見を頂いておりましたが…


ドミニク殿下は「霊的存在は固有名詞を認識できない者が多い」という見解をお持ちになっていて、レベッカ様のご意見には否定的です。


憑座が『時空の虚無神』の力を暴走させるに際して引き金となるであろう「強い感情」は必ずしも「ランドル王国を憎悪している」というものである必要性はないとのお考えでした。


強い感情であれば引き金になり得るのだから「アザール王国を憎悪している」「アザール人を憎悪している」へとすり替え可能な条件なのだろう、と仰っています。


俺もそう言われて「そうなのかも知れない」と納得してしまった程、説得力を感じました。


レベッカ様からの情報では、憑座には「悪夢を見るようになる」状態が降りかかるとの事でしたが…

ドミニク殿下は「その状態こそが『時空の虚無神』側の霊魂の状態そのものなんじゃないのか?」と仰ってます。


何故なら、その状態はドミニク殿下や俺にも、他の近衛騎士にも「悪夢を見る」状態は身に覚えがあるものだからです。


俺達はビートンダンジョンのスタンピードを防ごうとして何年も前からビートンダンジョンに潜り続けたものでしたが…

ダンジョンに潜り続ける事でいつしか精神的な変化が起きました。


「冒険者はダンジョンに足を一歩踏み入れた瞬間から、ダンジョンの意思によって『死ね死ね死ね死ね死ね死ね』と空間そのものから悪意を向けられている」

と感じるようになったのです。

それ以降、悪夢を見る事が増えました。


ですが、それは俺達の方では

「今まで気付かなかった悪意に対しても敏感に察知するようになってしまったんだろうな」

と認識しています。


そしてダンジョンに潜り続けて

空間そのものから悪意を向けられる環境に慣れるうちに

「この悪意は何処から来たものなのだろう?」

と悪意の発信源に対して関心を持つ余裕が生まれるようになりました。


その結果、俺達は

「ダンジョンに潜り続けた者達が悪意に敏感になるのは『ダンジョンの核であるダンジョンコアに宿る意識』がそういう状態だからなのではないか?」

と思うようになりました。


つまり

「俺は周囲からの悪意に敏感な性質で、精神的にキツイ」

という状態こそが

「ダンジョン」という空間属性魔物の心的状態ではないのか?

と思うのです。


ダンジョンに潜る者達のうち…ダンジョンの心的状態に共鳴させられる者達が憑座候補となり、周囲からの悪意に敏感になり、その悪意が悪夢として反映する。


それと同じ事は『時空の虚無神』なる存在にも感じます。


だから「悪夢を見る者達」である憑座候補者達こそが、「この国を愛して敵を憎む」ようにすれば、『超重力天体ブラックホール召喚』による世界の消滅は充分に防げるのではないでしょうか?


おそらく差し当たっての危機は

超重力天体ブラックホール召喚』による世界の消滅よりも

バルシュミーデ皇国軍の侵攻の方でしょう。


ドミニク殿下に言わせると

「この国の王城の地下には欲深い権力者が欲する禁忌魔道具が存在する」

との事です。


庶民はそうした魔道具の存在すら知りませんが、近隣国の一部の支配者層には密かに言い伝えとして語り継がれている話のようです。


「自分自身の複製を創造して、自分自身の記憶を与えて、自分自身を次の世代まで存在させ、活躍させる」

という支配者層の欲望を満たせる禁忌魔道具が存在しているのです。

バルシュミーデ皇王ジギスヴァルトはそれを狙っている可能性が高い。


なのでドミニク殿下は

「いっその事、禁忌魔道具をジギスヴァルトに進呈してしまえば侵略動機を大きく削いでしまえるんじゃないのか?」

と仰っていますが

「一王族がこれまで地下に封印されていた魔道具を勝手に他国へ進呈するのは常識的ではない」

ことも理解なさっておられます。


そこで俺としては

「魔道具開発の鬼才と評価されるレベッカ様に作ってもらって、それを進呈すれば良いんじゃないか」

と思ってしまった次第です。


先祖代々護ってきた魔道具を一王族の権限でどうこうできないが

同じものを作れば、それに関しては一王族の権限内でどうこうできる。


それでこの国が存続できるのなら

俺はその道に賭けてみたい。


とは言え、魔道王国時代に作られた魔道具は今の時代の魔道具師の製作技量を上回るものが多く、「同じものを作る」と言うは易いが行うのは難しい筈。


引き受けて頂けるのでしたら全面的に協力したいと思うのですが

いかがでしょう?


あと、この提案はレベッカ様にも実のあるものだと思います。


大変失礼かと存じますが

レベッカ様の夫のエリアル殿に関しては良くない噂が立っております。


レベッカ様付きの護衛の女騎士が

「エリアル様からの寵愛を受けた」

と言いふらして、レベッカ様に対しても横柄な態度をとっている。

エリアル殿がそれを容認し、女騎士を孕ませ、側室に迎えようとしている。

第一子となる、その庶子を後継者にと考えている。

といったトンデモナイ噂です。


事実は噂ほど酷くはないと思いますが

「女騎士が産んだ子供が果たして本当にエリアル殿の胤なのか?」

に関していずれ検証が必要になる事でしょう。


王城の地下宝物庫には王家の血を引く者と、その者が許可した供の者しか入れませんが、それ自体から

「宝物庫のセキュリティーに遺伝子の読み取りと分析が組み込まれている」

と分かります。


そのセキュリティーの仕組みを分析する事が

「必ずレベッカ様のためになる」

ものと俺は確信しています。


ただ宝物庫に備え付けのセキュリティー魔道具も、禁忌魔道具も共に持ち出す事ができないので、禁忌魔道具と同じものを製作して頂くには王城まで何度となく御足労頂く事になると思います。


通常時なら「夫あるうら若き夫人が夫の同伴もなく未婚の王子の元へ通う」事はできないと思いますが…

今ならエリアル殿のほうに落ち度があるので「浮気者との間に冷却期間を持ちたい」という言い訳で充分通用します。


何卒お願いできないでしょうか。

お引き受けいただく事を心から希い、良いお返事をお待ちしております。

いつでも貴女の力になりたい男。ロドニー・デューより〉


そう書かれた手紙をランドル語に翻訳しながら

(お母様が作ったと言われる「血縁関係看破魔道具」は、何のヒントもない中で作られたものじゃなかった!)

と、現実との符号を感じて…

俄かに手紙と現実との関わりの深さを実感したのだった…。



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