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51:間話

挿絵(By みてみん)


王立魔法学院教師の1人エセル・アボットは

(リリアン・クンツの担任になれて良かった)

と内心でホッとしていた。


彼は元々は王家に仕える近衛騎士だった。

しかし今は違う。


エセルのように近衛騎士として王家に仕えた後に職を辞し

他の仕事で生計を立てている者は多い。

近衛騎士の離職率は案外高いのだ。


何せランドル王国の近衛騎士は

「顔で選ばれている」

と言われるほど見た目重視。

歳を重ねて容色が衰える頃には冷遇されまくる。

そうなる前に皆辞めていくのである。


ただーー

エセルやエセルと同年代の近衛騎士達の場合は

少し事情が違っていた。


エセルは近衛時代ドミニク王子に仕えていた。


ドミニク王子に仕えていた者達は護衛であれ侍従であれ執事であれ

皆、ドミニク王子に心酔していた。


「この王子を王太子にしないこの国はダメだ」

と本気で思っていた。


ドミニク王子が王立魔法学院を卒業と同時に婚約者と結婚して子爵となり、王籍から抜かれた時点でエセル達はランドル王国に見切りをつけてしまった。


まだ若いうちに近衛騎士を辞めた。


当時の王妃はドミニク付きだった者達を

当時の王太子サディアス付きに召し上げようとしていたが

皆嫌がった。


サディアス王太子付きの使用人達はドミニク王子付きの使用人達を見下していて、顔を合わせるたびに因縁をつけて暴力を振るっていた。

そんな連中と一緒に(しかも下に付いて)働くなどできる筈がない。

なので市井で新たな職を得る事にしたのだ。


近衛騎士を辞めて新たな職に就いて以降も、元近衛騎士らは度々集まって近況報告して連絡を取り合っていた。

子爵になった元王子ドミニクとも。


知らないうちに「愛国派」「ドミニク派」などと呼ばれるようになっていた。

露骨にではないが、密かに暗躍して政治に干渉する事があったからだ。


正式に国に属する者達が動くべき案件で動かない。

なので少しでも悲劇を軽くするために

近衛騎士でなくなった後だというのに

政略目的で動く必要があった。


決して元から政治結社を作るつもりで近衛騎士を辞めた訳では無かった。


当時の社会状況は

「色々と手遅れ」

ではあったが

「完全に諦め見捨てる」

のにも迷いが出るものだった。


国内外で

「ランドル人のフリをしたアザール人」

が犯罪を犯していて

「ランドル人という人種を標的にした国際的名誉毀損・信用毀損」

を行っていたが…


その事実に怒るランドル人も多数存在していた時代だった。


だが国の上層部自体が売国奴と成りすましで埋め尽くされているのだ。

「ランドル人のフリをしたアザール人」

に対して腹を立てて排除しようとするランドル人が

自国の権力者から

「友好国との友好にヒビを入れる売国奴」

呼ばわりされて処罰されるのだ。


そんな狂った環境の中で徐々にマトモな感性のランドル人は数を減らしていった。


国の上層部が売国奴と成りすましで埋め尽くされている病んだ国では

「敵国人を警戒・牽制する愛国者」は

「友好国との友好にヒビを入れる売国奴」

呼ばわりされて処罰されるという狂った事態。


それを見せつけられて大勢のランドル人有識者は潰されていった。

そのうち「アザール上げ」「ランドル下げ」する嘘吐きが「有識者」と持ち上げられて嘘ばかり垂れ流すようになった。


国を正常化しようと思ったら、どれだけの数のアザール系を速やかに一斉に殺さなければならなくなるか、正確な数字を出すのも恐ろしいくらいに…

ランドル王国はいつしか「ランドル人のフリをしたアザール人」及び「ランドル人のフリをする事すらやめたアザール人」に蝕まれていた…。


図らずも、ランドル王国を蝕み続けたアザール系の多くがバルシュミーデ人らに粛正されたが…

(「この手で報復する」という事ができなかった…)

という無力感が残った。


エセルは王立魔法学院高等部にリリアンが入学してきてから

彼女をよくよく観察していた。


そして

「リリアン嬢はリリアン嬢のままのようだ」

という点で安心した。


「レベッカ夫人は人体複製魔道具を正しい用途で使っていた」

のだと確信できたのだ。


レベッカは元王子ドミニクの初恋の君である。

親友のロドニー・デューが恋焦がれ続けた相手でもある。


表面だけ観察しても

「彼女は敬愛を捧げられるに相応しい女性なのか」

は分からない。


エセルは、ドミニクとロドニーが

「身勝手な悪女へと秘めた想いを捧げ続けた」

などとは思いたくない…。


なのでずっとレベッカの言動を調査し続けて

辛口に分析してきた。

内心では認めたくないと思ってもいた…。


その結果としてーー


エセルは

「彼女は敬愛を捧げられるに相応しい女性だ…」

と認めざるを得なかった。


(レベッカ・ベニントンは愛情深く、そしてとてもシンプルな人間性の人だった。一途だと言っても良い…)


彼女は貞淑な妻だった。

彼女は夫の心変わりに気が付いて苦しんでいた。

病を患っていて余命が残り少ない事を自覚していた。


バルシュミーデ皇国軍が樹海越えして襲撃してくる前に

ロドニーから

「大軍が侵攻して来ます」

と知らされていた。


そのロドニーからは

「エリアル・ベニントンは心変わりしている。貴女は彼を捨てて逃げて良い。お願いだから一緒に逃げてください」

と懇願されたが、(あのロドニーに泣かれたにも関わらず)とうとう靡かずに…


彼女は夫の戦死を望み

そして夫の訃報と共に

自死する事を選んだ。


「一生の間に1人の男しか愛せない不器用な女」

だった…。

レベッカ・マドレーン・ルース・ベニントンという貴婦人は…。



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