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36:ブルクハルト・クンツ視点12

挿絵(By みてみん)


バルシュミーデ皇国から就学期の子供達が大勢ランドル王国へ入国してきている。


バルシュミーデ皇国の貧乏貴族家の次男以下の男子達は、就学期に差し掛かると将来へ向けて進路を決めなければならない。


これまでは「国立学院へ入学」「騎士団へ入団」という道が貴族家子息の主な選択肢だった。


爵位を継いで領地経営をするにしても

文官になるにしても

市井に降りて商売をするにしても

国立学院の卒業資格が役に立っていた。


騎士になるにしても

従士のまま騎士団に所属し続けるにしても

警備兵になるにしても

傭兵になるにしても

騎士団へ入団して三年以上訓練を受ける事が役に立っていた。


今ではそれに加えて

「ランドル王国の王立魔法学院へ通い、ランドル王国の文官になる」

「ランドル王国の騎士団へ入団し、ランドル王国の武官になる」

という選択肢も加わっている。


尚且つバルシュミーデ皇国の国立学院は学費有料で貴族と言えども貧乏だと通えないのに、ランドル王国の王立魔法学院は学費無料で尚且つ寮費も無料。


そんな訳でーー


ランドル人貴族の後継令嬢と婚約したバルシュミーデ人貴族令息達が入学・編入する他にも、大量のバルシュミーデ人貴族令息がランドル王国の王立魔法学院に入学・編入する事になった。


何処の国でも当てはまる事だが、普通は後継は長男。


男子が生まれなかった家では女子が家を継ぎ婿養子をとるが、その場合

「少しでも条件の良い婿を得る可能性のある娘を後継指名する」

ので、令嬢が後継の場合は長女だと決まっている訳ではない。


娘の中で一番美しくて賢い娘を後継指名するので

後継令嬢は大抵皆容姿が優れている。

それはランドル王国の王立魔法学院の女生徒にも当てはまる事。


ランドル人貴族の入学・在籍を

「バルシュミーデ貴族と婚約した後継のみ」

と限定したことで、ランドル貴族の後継令嬢達は

「売約済みの美形のみ」

の入学・在籍となった。


そのことが

「後日物議を醸すであろう」

事は学院が始まる前から予想できた。


俺としては

「絶対男子学生達から苦情が来るぞ」

と分かりきっていたのだ。


なにせランドル王国に侵攻する前からランドル王国内に入り込んで情報収集していた身だ。

この国の人達の多くがバルシュミーデ人よりも華奢で端正な容姿だという事は分かっていた。


ランドル人男性が華奢で顔が良いのを見ても、弱そうな優男にしか見えず、武の国であるバルシュミーデ基準では軽蔑しか生まれないが…

ランドル人女性が華奢で顔が良いのを見ると、女性らしさを強く感じて、自分のものにしたいという欲が生まれる。


そういった傾向を自分にも部下にも感じていたので

「容姿の優れたランドル人貴族令嬢をもっと多く入学・在籍させるべきだ」

という意見が

「男子学生から殺到するだろう」

事態は想定済みであった。


皇国側としては

「ランドル王国内の無償就学枠をバルシュミーデ人貴族で占める」

計画は絶対である。

「ランドル王国内の文官枠をバルシュミーデ人貴族で占める」

計画の前振りなのだから外せない。


本格的な王国乗っ取りの為には

就学義務者の基準変更はできないのだ。

よって

「必ず出てくる不満の解消をどうするのか」

については既に話し合われていた。


ランドル人貴族令嬢の美貌に涎を垂らすバルシュミーデ人貴族令息のために

「新王家主催の茶話会・夜会」

を開き

「未婚のランドル人貴族令嬢を招いて出会いの場を設けよう」

という対策案が採用される事になった。


王城で開催される『新王家主催の終戦記念パーティー』などもその一例であり

15歳以上のランドル人貴族令嬢を全員招く事になっている。


「リリアン嬢を必ずブライトウェル辺境伯邸へ引き取り、王城での記念パーティーへ引っ張り出すように」

と皇子殿下からも注文が来ていた。


リリアン嬢がその母親のレベッカ夫人とよく似た容姿で美人だという事は元から噂で知っていた。


「最初のうちの集まりで今後も招待する令嬢を絞り込もう」

という事も決定済み。

ブスは篩い落とされ、美人だけが今後も出会いの場へ引きずり出され続けるのだ。


バルシュミーデ人は近隣国の人々と比較しても血気盛んな者が多い。

若い雄の欲求不満を放置するとろくな事にならないのは目に見えている。


そうした事態を収束させる為にもランドル美人には是非ともその受け皿になって欲しいものだと思っているのだが…


仮にも自分の妻となったリリアン嬢が…

「他の男にいやらしい目で見られるのかも知れない」

と思うと、何故か強烈にムカついてくる。


最初に会った時はーー

冒険者ギルドのエントランスで令嬢らしからぬ格好の姿だったので、まさか自分が探していたリリアン・ベニントンその人だとは思いもしなかった。


ブライトウェル城の姿絵では、母親と同じ赤い瞳に灰褐色の髪、抜けるような白い肌だった。

少し日焼けして茶髪のカツラをかぶって古びた男子用の服を着ているだけで、おそろしく印象が変わってしまっていた。


それでも彼女を好ましいと感じた要因は容姿ではないので、彼女が冒険者活動の際にどんな格好をしていてもガッカリする事はない。


俺が彼女を好ましく感じたのは声だった。


オークウッド公爵邸の地下へ降りて地下牢の側まで来た時に聞こえた声。


アザール人工作員の女が自分達の悪事をバルシュミーデのせいにしようとする嘘を吐いた時に

「何言ってんの?」

と、無邪気な声が聞こえて、思わず聞き入った。


「…アザール人冒険者とその仲間が人攫いをしてるんだよね?どうしてそこでバルシュミーデ人が出てくるの?」

という声にも知性が感じられた。


誘拐されて、地下牢に閉じ込められて、不安になっている筈なのに…

泣きもせず、嘘に言いくるめられるのでもなく

おかしな点を冷静に追及しようとした。


そうした心的姿勢に

ヒステリックな虚勢とは違う

落ち着いた堅実な強さを感じた。


15歳とは思えない落ち着きーー。

それが彼女の存在感を好ましいものにしているのだと

改めて感じるのだった…。


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