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27:ブルクハルト・クンツ視点9

挿絵(By みてみん)


デール・フレッカーは俺への警戒を多少弱めてくれた気がする。


再度

「リリアン・ベニントン嬢をよろしくお願いします」

と言った時には最初のような不信感丸出しの鋭い視線ではなく

心からの願いを素直に口にする人間の真摯な視線になっていた…。



冒険者ギルドを出ると丁度ーー

冒険者ギルドへ向かって走ってきた兵士と遭遇した。


「クンツ少将でいらっしゃいますか?」

とこちらの身分確認をしてきた事から、俺の顔も知らない下っ端の新兵だという事が判る。


「そうだが、どうした?」

「伝言です」


どうやらギードは監視場所を離れられず、それでいて報告だけは先にしておくべきという判断を下して通りがかりの新兵を俺の元へ寄越す事にしたらしい。


先程デール・フレッカーには「アザール系粛正」の話を漏らしてやったが…

それはギルマス執務室に盗聴の気配が無かったからこそだ。


アザール系の一味に「アザール系の一斉粛正」の計画を知られる訳にはいかない。

(事前に知られて巧妙に潜伏されたりすると取り逃がす事になり、後々まで逆恨み勢力が噴出し続ける事になるだろう)


なので有象無象の前でアザール系関連の話をする時には

「ファムファタール」というふざけた隠語で表現する事になっている。


アザールもファタールも「運命」という意味の言葉。


「『ファムファタールの蜜が溢れる閨に誘われて囚われの身になってしまいました』と伝えるように、とのことでした」


うん。普通に解釈すれば

「淫売窟にハマって仕事も手につきません」

と職務放棄してるように聞こえる。


ギードの人間性にピッタリなので、この新兵は

「アザール系のアジトを発見してしまい、監視するなら手が足りません」

という応援要請の婉曲表現だとは全く気付いていない様子。


ギードは有能な斥候だが、少しイカレている。

女とヤル事ヤッて、出す物出して爆睡する以外だと

「常に悪夢を見る」

という男だ。

悪夢が続くと幻覚が見えるようになり幻聴まで聞こえてくるとかで

「女と一緒じゃない夜が1週間も続くと発狂します」

と真顔で申告するヤツ。


顔が良いので女好きを貫けるし、女好きが度を超えている。

それでいて悪人ではないので一応信用してはいる。


今の現状ではアザール系に気付かれず活動する必要があるため

政情をちゃんと把握できている親衛隊を連れて出向くのが正解だ。

場所が貴族街のオークウッド公爵邸前と言うなら尚更。


なので一度王城へ戻り、皇子に報告してから動く事にした…。


******************


王城で皇子に報告して

指示を受けて出向いたオークウッド公爵邸ーー。


忍んでの到着だったが、着いて早々にギードが近寄ってきた。


「お前には赤目の新人冒険者の尾行を頼んでた筈だが、どうしてこうなった?」

疑問をそのまま口にすると


「尾行対象の新人冒険者が誘拐の標的になったので、ここに居ます」

とギードが予想通りの説明をしてきた。


「定番でいくと、どうせ監禁場所は地下だろ?地下室へ降りる階段の在り方は判るか?」


「案内します」


「屋敷内の連中は?」


「制圧済みです」


「何人居た?」


「使用人が30人強、護衛騎士が10人弱、奴隷調達誘拐犯グループが5人でした」


「すごいな。それだけの人数を一人で」


「不意打ちは得意ですから」


「それじゃ、敵勢力は無力化されていると見做して踏み込んで良いんだな?」


「こちらの気配察知に引っかからないくらいに巧妙に気配隠蔽されている可能性もなくはないので、その点はご注意ください」


「分かった。俺は子供達の救助に向かう。お前は引き続き赤目の尾行を頼む。お前達は屋敷内の捜索。オークウッド公爵の有罪を決定付ける証拠品を探し出せ」

そう告げて、俺はギードに案内されて地下へ降りる階段へと来た。


聴覚訓練を受けた身なのでボソボソした小さな声も聞き取れてしまう。

精神衛生面では耳の良さは無駄に心的にダメージを蓄積させる。


だがそれを乗り越えて情報収集が必要なので

今回も耳の良さはこの件でも事情の一端を知る役に立った。


足音を忍ばせているので、地下にいる者達は俺の存在に全く気付いておらず、誰に気を使うでもなく話をしていたのだろう。


「大丈夫。私達も一緒だよ。あなた独りじゃない」


「だけど、ホント許せないよね。バルシュミーデ人達。アイツらのせいで孤児になった子も多いのに、こうやってゴロツキ使って奴隷売買させて自分達の私服を肥やそうとするなんて」


だのと言った話し声が聞こえた時点で

(…いやぁ〜マジで、アザール人、…クソだな)

と思った。


これから奴隷売買されて地獄を味わされるランドル人達に

「下手人がバルシュミーデ人じゃなくても、黒幕はバルシュミーデ人だ」

という大嘘を信じ込ませて出荷するために

「誘拐被害者の中に嘘吐き工作員を紛れ込ませておいた」

といったところだろう。

アザール人という人種が余りにも卑劣過ぎて、今更ながらやはり呆れる。


(この様子じゃ、連合国の連中が騙された理由も、これと同様に「私も同じ被害者だ!」と詐称するアザール人を誘拐被害者と接触させて「黒幕は××だ」と偽情報を刷り込んだって事か…)


益々アザール系をランドル王国内から一斉粛正して根絶やしにする事に全く罪悪感を感じなくなる。


(バルシュミーデ皇国をランドル王国のバカ王族貴族どもと同レベルの間抜け揃いだとナメきってるのか?)


俺がアザール人の真意をはかりかねて、内心で戸惑っていると


「何言ってんの?」

と疑問の声があがった。


「…アザール人冒険者とその仲間が人攫いをしてるんだよね?どうしてそこでバルシュミーデ人が出てくるの?」

と尤もな疑問が続く。


その疑問に対して、工作員らしき女の声は

「全部バルシュミーデ人が糸を引いてて、アザール系の人達は悪事をさせられてるのよ」

とアザール人を擁護するような返答をした。

(間違いなく黒だな。情状酌量の余地はない…)


「そうか、そうか、アザール人がこの国でやってる悪事は全部バルシュミーデ人のせいだって言うんだね。アンタは」


「バルシュミーデ人はすごく残虐なんだって。アイツら、ランドル人の子供を攫ってダルマにして犯して殺すのが趣味の鬼畜だって噂よ」


「そうなんだね…」


そうしたやり取りを聞いてしまうと

俺はそれ以上、黙っている必要性は感じなかった…。


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