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挿絵(By みてみん)


牢の外に見張りがいる訳でもないので

(脱獄できる手段があればチャンスなのに…)

と、しみじみ残念に思った。


魔力を使った身体強化は「地力の2倍」(もしくは3倍)といった具合に「地力が関係する」ので、元々の身体能力が高い方がより強くなれる訳である。


(筋力トレーニングをもっと根詰めてやっておけば良かった…。今の地力じゃ身体強化しても鉄の格子を捻じ曲げたりはできない…)

と微妙に後悔しながら、牢内を見渡す。


短剣が取り上げられているので、牢屋の石壁を叩いてみる硬質な物が見当たらない。

(壁の向こうの状態を叩いた時の反響で知りたいと思ったんだけどな…)

と少しガッカリ。


(こうなってみると、ホント私って無力だったんだな…)


それでも一応、少しでもできることを模索しようと思う。

「出荷」の時が

(殺されるかも知れない時が)

迫るまでは。


王立魔法学院中等部で魔法の基礎を習ったものの…

貴族の大半が「水を出すだけ」「火を出すだけ」という程度の体外魔法しか使えない世の中。

実用として魔法攻撃を使いこなすのは難しい訳だが…


前世の記憶を思い出した身では

(でも魔法って「イメージに左右される」面も大きいと思うんだよな…)

という期待が捨てきれない。


この世界の常識として

「特別な才能がない限り体外魔法は実戦で使えない」

という物の見方が普及している。


「本当に体外魔法は実戦で使えないのか?」

を再考するべく

「思い込みの枠を壊して魔法の可能性を追求しよう」

と思っても圧倒的多数の人々が魔力を持たず

魔力がある者は王族・貴族などの少数だけ。


これまでずっと

「魔法の可能性を追求する事が出来なかった」

世界なのだと思う。


案外、魔力と素質のある人間が

「体外魔法は魔力持ちなら誰でも実戦で使える」

と思い込んで使えば

「できない事もないんじゃないのかな?」

という希望がどうしても捨てきれない。


ラノベやゲームでは魔法には「属性」があり

魔法使いの方でも「適性」がある属性の魔法しか使えないのが普通。


そんな中で私の両親は適性属性を複数持っている。


(攻略対象エリアル・ベニントンと悪役令嬢レベッカ・ルースの血を引いた血筋エリートのこの身体は質の高い魔力がふんだんに流れている…)


風と火の適性を持つ父。

闇以外の全ての適性を持つ母。


母親似の自分の姿を思い出すに

(容姿から言うなら私もお母様も「闇属性」とかが合いそうな感じなんだろうけどね)

と思ってしまう。


闇属性魔法ーー。

所謂、空間属性魔法。


幻影を消滅させたり気配を消す作用の魔法は

虚無魔法、消去魔法とも呼ばれる。

ある意味、陰湿な攻防において最強だ。


超重力天体ブラックホール召喚」

が闇属性魔法として最も有名なものだが…


それは御伽話に登場する魔王の魔法でもある。

つまり現実的には誰も使う事はできないとされている。


しかし

超重力天体ブラックホール召喚」

は『アカオト3』のラスボスである『時空の虚無神』の固有魔法だ。

『時空の虚無神』に憑依ひょういされた憑座よりましは使う事ができる。


ゲームの中での「世界の滅亡エンド」は、その「超重力天体ブラックホール召喚」によるもの。

因みに『時空の虚無神』は

「憑座がいないと顕現できない」

という制限がある。


その憑座になる人物(NPC)だが…

「このキャラだ」

と固定的に定まっている訳ではない。


ある時は冒険者だったり

ある時は貴族だったり

ある時は戦闘奴隷だったりと

ストーリー分岐次第でまちまち。


敢えて

「憑座になり得る人物の特徴」

をまとめるなら

「ダンジョンに出入りした事がある」

「男性である」

という共通点がある。


そして『時空の虚空神』と呼ばれる存在の正体に関しては

作中で語られる空間設定を理解していないと理解できない。


作中では

「現象には再現性がある」

と空間設定が語られる。


「現象再現性の刷り込まれた物体は自らの置かれた環境でさえも刷り込まれた現象の再現に必要な環境へと変えようとする作用をもたらす」

といった内容。


それは

「ゴキブリを火星に大量放出して火星の環境をテラフォーミングできないものだろうか」

という発想とも共通している。


何故その「現象の再現性」が重要になるのかと言うとーー


『時空の虚空神』とは「生命の存在できない宇宙空間で肉体を持たず意識体のみで存在していた存在だ」という事。


それが隕石などの宇宙由来物質に憑依して

この世界に(この惑星に)やってきた。いわゆる宇宙意識体。


そしてダンジョンという空間属性魔物もまた

隕石などの宇宙由来物質を核として持つ魔物。


宇宙由来物質が生命の棲まう惑星内に入り込んで

許容限度を超えて存在感を増すと

「生命の存在できない宇宙空間」

という環境が惑星内で再現される方向へ向かう。


そういった世界観をベースに

「この世界が包括できるダンジョンの数、ダンジョンの面積・密度には限度がある」

という理が語られる。


世界の滅亡とは

「生命の存在できない空間が惑星内で再現される」

という

「現象遺伝子の具現化」

による万物の死なのだ。


この世界のほぼ全ての国で

「ダンジョンが発生するとダンジョン資源が収穫できて儲かる」

という認識が共有されているが…


実は

「ダンジョンは攻略できる時に攻略して世界内のダンジョン数が増え過ぎないようにした方が良い」

のだ。


ゲームを知る者が実際にこの世界で生身で生きてみるなら

「欲に目が眩んだ人達が死を引き寄せている世界だ…」

と実感してしまう世界…。


(何とか上手く体外魔法を使えないものかな…)

と自分の中から足掻きが起こる。


体外魔法は

「指先に火を出す」

「ひとくち分の飲み水を出す」

とかの

「顕現のみ」

なら私も使える。

(学院中等部では実技成績上位者だった!)


体外魔法を分析した理論としては

「魔力を掌もしくは指先に集めて体外へ押し出しながら、体内魔力と体外魔力の繋がりを保っておく」


その状態で体外に出した魔力を体外魔法仕様に魔力変換を行う。

魔力変換においてものをいうのが適性属性の有無である。


私は鉄格子に掛けられている錠前を格子から手を出して握り締め

(これを変形させて鍵を外して、その後成形してナイフに加工できないものかな)

と考えた。


中等部では地属性魔法は「土を出すだけ」だったが、高等部では地中の特定の鉱物を地表へと引き寄せたり、鉱物を成形させる。


地属性は母レベッカが最も得意としていた魔法だ。

(お母様は地面から地中鉱物を取り出していた…)


「錠前をナイフに…」

小声でボソリと呟きながら、掌から出した魔力へと変形のイメージを注いだ。


するとーー


ボトリ

と錠前がいびつな形の金属の塊になって地に落ちた。


(やっぱり私もお母様と同じで地属性の適性が他よりも高いんだ!)

と確信した。


ナイフとは似ても似つかない形状だが、とりあえず錠前は外れた。

(…これで外に出れる、んだけど…)

武器が無いと、牢屋を出たところで簡単に捕まりそうだ。


捕まる時に下手をすれば

「見せしめだ」

と斬り殺される可能性もある。


だけど、それだって嗜虐趣味の変態に切り刻まれる殺され方よりはマシなのかも知れず…


私は首をブンブン横に振って気を取り直し

(この塊をナイフに加工すれば…)

と再び地属性魔法に挑戦する。


イメージがお粗末だったのと、材料の質量自体が少量だったのが原因だろうが、武器とは言えない、ペーパーナイフができあがった。


いざ作ってみると

(アイスピックとか千枚通しみたいなのの方が殺傷力が高かったかも知れないな…)

と思ったものだが、作り直せる程に魔力の余裕があるかどうかも分からない。


残りの魔力は身体強化と切れ味補正に使うべきだと思うので

(武器はとりあえずペーパーナイフのままで良しとするとしよう)

と無理矢理納得した。


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