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挿絵(By みてみん)


ギルド会員証が首から下げるドッグタグ風のペンダント。

それにランクと名前と会員番号が記載される。


ランクに応じて素材も変化する。

G、F、E→軽銀

D→黄銅

C→青銅

B→銀

A→金

S→白金

といった具合に。


因みに軽銀は1円玉、黄銅は5円玉、青銅は10円玉の素材と似ている。

流石は和製ゲームの世界だと、そういった所で感心。


この会員証、あくまでも名前とランクと会員番号のみの記載で

性別は記載されないので登録は普通に女性として登録した。


名前の登録は略称や愛称でしてはいけない

などといった縛りがないので

リリアンの略称の一つである「リア」を名乗った。


登録したての新人冒険者はGランク。


私は依頼票が張り出されてる区画で依頼内容を物色した。

自分にも出来そうな依頼が無いか探しておこうと思ったのだ。


ファンタジー小説とかだと

「薬草採取」

のような依頼が常設されてて

新人冒険者の貴重な収入源になっていたりするのだろうが…


この国の場合

「薬草は薬材商ギルドと契約している修道院が育てている」

らしく、併設されている孤児院の子供達が栽培・収穫作業に従事している。


なので時折

「収穫作業手伝い」

の依頼が出るものの

「薬草採取」

という依頼が見当たらない。


薬草園の収穫作業手伝いの依頼は

「コワモテの冒険者が依頼を受けると孤児院の子供達が怖がるだろうから」

という理由もあって低年齢冒険者へと回される依頼だ。


といっても、こうした事情はブライトウェル辺境伯領で聞いていた事情なので、もしかしたら王都では少し事情が異なる可能性がなくもない。


時期が当てはまらないのか、その手の依頼は見当たらない。


(Gランクで受けられる依頼は…)

とGランク指定の依頼に絞って物色していくと

Gランク指定の依頼が何故か一つも見当たらない事に気付いた。


(王都は子供冒険者の数が多くて良い依頼を取り合ってる環境なのかも知れないな…)

と嫌な予感が脳裏をかすめる。


12歳から冒険者登録は出来るが15歳まではEランクまでしか昇格できない。

15歳未満の冒険者はG、F、Eランクの仕事を漁る事になる。


そして15歳以上でも登録したては全員がGランク。

Dまで昇格しない事には未成年冒険者達と低ランクの依頼を奪い合う状態から抜け出せない。


確か冒険者ギルドの昇格システムは

「Eランクまでは昇格試験による昇格ではなく、活動実績が考慮されての昇格」

だった筈だ。


つまり仕事中不真面目だったり依頼主やその他の大人にも態度の悪い連中はずっとGランクから抜け出せない。


治安の悪い土地の荒んだ空気に適応している冒険者が多い地区のギルドほど

「依頼件数を遥かに上回る数のGランク冒険者を抱え込む」

事になる。


(昇格できないとずっとGランクのままだと思うんだけど…。昇格しようにもGランクの仕事自体が奪い合いだと、どうしようもないんじゃない?)

と私は少し目眩を感じた。


「仕事がないんじゃ、王都で冒険者活動をするのには無理があるかな…」

と思わず呟きが漏れた。


それが聞こえたという事なのか…

アザール人らしき冒険者3人組が近付いてきた。


「辺境と王都では大勢の兵士が死んで戦災孤児が溢れてるんで未成年冒険者は低ランクの仕事を奪い合ってる状況だぜ。

だからそれ以外の土地へ行けば需要があるにはある。『何処へ行けば仕事にありつけるのか』って情報に興味があるなら教えてやらんでもないが、どうする?」

と訊かれた。


(あ、コレ詐欺だ)

と、その瞬間に分かった。


詐欺師特有の何とも言えない雰囲気がアザール人達にはあった。


(「仕事を得て金を稼ぐのには先行投資が必要になる」的な金を騙し取る詐欺ならまだマシだろうな。戦災孤児が溢れてる社会状況で戦災孤児をターゲットにして騙す詐欺なんて「人身売買」しか思い浮かばない。…コイツら、相当なクズだ…)


私は脳内で勝手にアザール人冒険者達を犯罪者に見立てて

張り付いた笑みを浮かべた。


「いえ。興味ありませんのでお構いなく」

とだけ言って、ソッポを向いてそそくさと逃げた。


ギルド会館から出て、直ぐに近くの古道具屋に入って、窓からギルド会館のほうを覗くと案の定アザール人冒険者達が出てきてキョロキョロと辺りを見渡していた。


(…私の後を尾ける気だったんだろうな)

と判りゾッとした。


前世でも街中で声をかけてきた詐欺師に後を尾けられそうになった事があったので、その手の犯罪者に対して鼻が利くようになっているのかも知れない。


(葉月の記憶を思い出す前なら騙されて奴隷商人に売り飛ばされていたのかも…)


頭のオカシイ図々しい詐欺師ともなると

家まで押しかけて来る事もあった。


「北方領土の返還を求める運動にご協力を」という募金詐欺はよく知られていた押しかけ詐欺だが、押しかけ詐欺は段々と手口が回りくどくなっていた。


全く面識のない赤の他人が夜中に押しかけてきて

「鍵を落としてしまったので一緒に探してください」

などと主張する手口もあった。


「(100均の)懐中電灯を貸しますから、それで良いですよね?暇じゃないんで」

と返事をしてもシツコク

「一緒に探してください」

と言い張る。


そうやってシツコク助けを要求して外へと誘き出し

「その間に仲間がネット端末を遠隔操作して犯罪に使う」

という回りくどい犯罪。


御涙頂戴の演技をする仕事の実働工作員は

当然のように情に脆そうな見た目の若者や女が多い。


先天的に良心を持たない人間は存在するが…

多くの罪人が後天的に良心を投げ捨てた人間なのだと私は思っている。


「皆が皆、自分と同じように悩み苦しみ足掻いて生きている」

という共感をあえて標的視する相手には感じない人達。


「マトモな人間になって、無防備な人達を餌食にするのをやめる」

という行為が

「仲間に対する裏切り行為だ」

と激しく思い込むのだろう。


反社会的集団に属する者達は

「クズになりきれない人間から先にクズな仲間に粛正されていく」

ような傾向がある。


だからなのだろうが

「他人の人生を狂わせるような犯罪」

を集団で行いながら、その環境に適応した者達は

「自分達の罪深さに無自覚だったり開き直っている」

ので

「後ろ暗い事などない顔で堂々と生きていたりする」

のだ。


(この国にもクズな詐欺師が居たんだな…)

と今更ながら気付いて気が滅入りそうになる。


ハァァーッと溜息を吐いて、アザール人冒険者達の姿が見えなくなるのを待ってから店を出た…。


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