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挿絵(By みてみん)


侍女に持ってきてもらった若かりし日のレベッカ・ルースの書き付け。

それらは案の定日本語で書かれていた。


(うん。やっぱりお母様は私と同じ転生者だった。破滅フラグを折りまくったから夫婦仲も良好で3人も子供を産んでたんだな)

と私は独りウンウンと頷いた。


乙女ゲームの世界に転生してしまった!

と自覚した人間は皆同じ行動を取る傾向があるのか…


母もヒロインや攻略対象の名前を書き出してキャラ設定やシナリオに関して思い出した事を書き出していた事が分かった。


「魔道具に関しては何も記述が残ってないな…。やっぱり本格的に魔道具研究を開始なさったのが学院の高等部に進学して以降だったからかな?

寮生活だったろうから、魔道具関連の資料はブライトウェル城の何処かに保管なさってたのかしら?」

ブツブツと独り言がもれる。


魔道具に関する記述が無い代わりのように、魔力運用に関しての記述が残っていた。


王立学院入学前の母は魔道具よりも魔力運用に関して関心があった様子。


他には料理のレシピが豊富に書かれていて

「チェルシーの好きなもの」

「ジューンの好きなもの」

「エリンの好きなもの」

「ルシアンの好きなもの」

「ハーモンの好きなもの」

「ジェフリーの好きなもの」

「ゴドフリーの好きなもの」

「アラン用」

などといった見出しがある。


(誰かのために料理してたのね)

と分かる。


(「ゴドフリー」と「チェルシー」はレディング伯爵とその妹のチェルシー叔母様なのだろうけど…。「ジェフリー」って、まさかプレスコット伯爵のこと?後継のジェフリーお義兄様と同じ名前だったものね)


「アラン」という名前に至っては誰のことか見当もつかない。


料理自体は度々母が厨房を使い、料理人と合作して珍しいものを作ってくれていたので、レシピの料理もどんな味のものだったか判る。


「そう言えば、お母様は王立学院の中等部では調理部に入ってたと仰っていたような…」


(だから「貴族夫人が手料理をする」という行動をブライトウェル城の誰も止めなかったのね)


「私も趣味で料理してみようかな?自炊できる環境は整ってるし」


魔力運用のメモの中には

「魔力を包丁に纏わせて切れ味補正すると、何でも切れる」

と書いてあるし…


「本館の厨房から食材を分けてもらえないか、訊いてもらおう」

と思い立って早速侍女を呼びつけた。


********************


許可は簡単に降りた。

伯父は私を冷遇したい訳ではなく

「息子との接触を徹底して避けさせたい」

と思っているだけで

そうした意思は使用人にまでキッチリ伝わっているらしい。


(案外、良い人なんだなぁ)

と少し私の中で伯父ジャレットの株が上昇した。


********************


若かりし頃の母レベッカの魔力運用の主題は

「魔力は毎日使い切るくらいに使い続ける事で生産量が増え、時間が経てば回復する」

と言われている事をベースにした

「魔力量増加計画」

だった。


どうやら彼女は

自分の部屋の壁やカーテンやベッドや机や椅子や暖炉

壁掛け時計や絵画やクッションはもちろん

筆記用具や裁縫道具に至るまで

「最良の効果を発揮して、私自身の『場』を強化する作用を持つように」

といったイメージを乗せて魔力をまとわせる事を日課として繰り返していた。


「…私もお母様に倣って同じように魔力運用すれば魔力量を増やせるかな?」

と期待しつつ私もやってみる事にした。


〈魔石は魔力を蓄える性質を持つ事で知られているが、魔石以外の物質でも魔力を注がれた物質はある程度の時間、魔力を纏い続ける性質がある〉


〈「注がれた魔力をどのくらい留め続けるか?」は物によって差があり、基本的に「洗濯できる物」は洗濯される事で魔力が流れ落ちる〉


〈「魔力を媒介しているモノは水に流されやすい」ものと推測できる〉


〈室内の物質を毎日自分の魔力で満たすことを繰り返す事で「自分の魔力で空間を満たせば、空間の主導権を握れる」と実感できる〉


こういった記述が真実なら、魔力はかなり有用だ。

たとえ

「火球を自在に飛ばして魔物を狩るなど一部の天才にのみ可能」

という外部魔法未発達世界でも。


実際、父エリアルは風刃を戦闘に取り入れていた「一部の天才」。

私が同じように外部魔法を戦闘に取り入れる事もできるようになる可能性がある。


「…お母様の言ってる『空間の主導権を握れる』というのがイマイチよく分からないんだけど…。要は他人に忖度しなくても角が立たないくらいには尊重されるって事なのかな?」


自分自身を振り返ってみればーー

空間の主導権がどうのとか

そんな事を今まで一度も考えたことがなかった。


(『転生者』っていう点だけは共通してるけど、私とお母様とでは色々内面的にも格差があるんだなぁ〜…)

と改めて自分の無能さを悟った私だが…


「格差を埋める術」

がこうした書き付けの実践にある事は解った。


(手も足も出ない状態でただただ比較されて貶されるだけの頃とは違う…)


「お父様もお母様も40歳とは思えない見た目の若さだったけど、要は魔力を使った身体強化の簡易版バリアーを普段から薄く自分に施す事で老化予防になるという情報を実践して若さを保ってたのよね?

だけどそれだと、成長期に実践すると成長が停滞するわよね」

と魔力に関して疑問を持ったが


その答えはゲームの内容を思い返してみると

「身体強化を本格的に常態発動させるのは18歳以上から」

となっていたのが判る。


攻略対象の一人が王子の近衛騎士で、攻略が進むと身体強化の事は勿論、騎士団内の事情や近衛騎士としての職務上の苦労話なども聞けるようになっていた。


ゲームの知識と、同じ転生者だった先人の(母の)知恵があれば

それは生き残っていく上でのアドバンテージになる。


「平民になっても生きられるように頑張るわ」

自分に喝を入れるべく、私は握り拳を勢いよく振り上げたのだった。


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