1 父上、僕にはスキルがありませんでした…
白神天稀@Create Berserker
@Shirakami_Amaki
様にインスピレーション頂いて書いてみたものです!
「父上、鑑定の結果、僕にはスキルがありませんでした…」
僕は絶望の淵に立っていた。長くこの地を支えているミルダルト領、アスティン=ディア=ミルダルト公爵を父に持ち、ブレシア=ディア=ミルダルト、という名前を持つ僕。まさかのスキル無しだった。6歳の誕生日である今日、人が誰しも必ず持つ『スキル』を鑑定して。何もない、前代未聞である、と聞かされた。僕には何にもない、その事実だけがただ、僕を絶望に追いやるには充分だった。
「ほーん。そっか」
父上の顔を見られない、でもきっと父上も絶望しているだろう…でも、あえて僕は口に出さなければならなかった。絶望されたとしても、縁が切れるのだとしても、最期にこれくらいは言いたかった。
「そんな!父上は最初から僕に興味が…」
もしかしたら本当に父上にとって僕はその程度だったのかもしれない。でも、父上はいつも僕を見てくれて、いつも僕の顔を見て、笑ってくれてた…
「それは良いけど、飯行くぞ」
「!?」
驚いて父上を見た。いつもの笑顔だった。まるでそれがどうしたんだ?とばかりの笑顔…
「父ちゃん金出すから。好きなもん食えよ」
時々父上は貴族らしからぬ飄々とした物言いで僕にこんなことを言ってくれる。
「スキルがないから生きる価値がない?そんなこと誰が言った?言ったやつ父ちゃんがちょっととっちめてくるぞ!」
あ、ダメだ。父上本気でとっちめに行ってしまう、まだ誰にも言われてないから!
「父上!まだ誰にも言われておりません!それより、僕はスキル無しなんですよ!?公爵家として恥ずかしくないのですか!?」
「スキルなんかなくても生きていけるだろ?無ければ周りを頼ればいい。それみっともない事かな?領を治めるって事は領民に頼ることだよ?彼らの税金があって生きていけるのに?働く人がいて、食べる人がいて、守る人がいて、色々頼って生きてるんだよ?そんなこと深く考えてたら禿げるぞ?それにハッキリ言うが、スキルがあろうがなかろうがお前は父ちゃんの息子!超愛する息子!それはしっかり覚えておけ!」
僕は、そうか…スキルとかの前に、父上の息子なんだ。もしこの先僕が公爵でなくなったとしても、僕は父上に愛されている。その事実だけは揺らがないんだ。なら吹っ切れちゃえばいい!…え?金出す?好きなもん食え?え?
「あの、父上!?どこに食べに出かけられるのですか!?」
「街のみんなに言おう、うちの息子、スキルないけど父ちゃん的には愛してるから気にしてないって!」
その後、街のみんなに父上が僕の事を語ってくれて、かえって町の人たちに可愛がられることとなり、今度領地で野球大会が開かれることになったのです。村々の皆さんも協力してくれて、貴族も平民もなしに、とっても楽しかったことを記しておきます。
一応続く予定で書いてはいますけど、これはカクヨムに登録して出すべきなのかもなぁ…