075 後始末
魔剣フラガラッハを奪われたアデューは拍子抜けするほどあっさりとランバートに投降した。
いくらアデューが相手の強さを見抜くことができないと言っても、剣を持たずにランバートに対抗するのは不可能なのは理解していたからだ。
「ここは大人しく従っておいてやろう」
捕まっていてもふてぶてしい態度を崩さないアデューはこの後の展開がわかっているのだろう。
(こいつらは長くは俺を拘束できないはずだ)
この考えは本質的には間違ってはいない。
実はウォーベックが帝都から逃亡したことで、アデューをマーガレット暗殺容疑で訴追することはかなり難しくなっていたのだ。
なにしろアデュー自身が言っていたようにアデューが関わっていたという確実な証拠がないのだ。そうなるとウォーベックから証言を引き出すしかないのだが、そのウォーベックがいない。
この時点ではアデューはウォーベックが逃亡している事を知らないのだが、仮に捕まっていたとしてもそう簡単には口を割らないと思っている。
少なくともアデューが釈放されるくらいまでは時間を稼ぐだろうと高をくくっている。
(やつが捕まらないのが一番だが、その程度の事はするだろう)
実際にウォーベックは逃亡に成功しているのでアデューの期待以上の事をしているのだが、その後の展開は思い通りにはならないのだった。
*
アデューは拘束され続けた。
マーガレット暗殺容疑での証拠が出たわけでも、自白したわけでもない。こうなると本来は拘束できる法的根拠などないのだが、拘束は続いた。
しかも他の者たちと違ってたった一人で地下牢に幽閉されていた。
「俺はレイ王家の王子だぞ!一般の法律は適用されないはずだ!いますぐ解放しろ!」
長い拘束期間にたまりかねたアデューが、地下牢に姿を見せたマーガレットに叫んだ言葉はそのまま自らに帰ってくる。
「ええ、ですから私は兄上を法律に基づかないで拘束しているんです。このまま一生ね」
「貴様、実の兄に向かって…!」
「兄上、あなたはやりすぎたんです。私を殺そうとした事も問題でしたが、独立騎士団の活動そのものが反感をかっていましたからね。父上も、他の二人の執政官も、元老院も今回の処置を認めてくれましたよ」
マーガレットは氷の執政官の名にふさわしい冷たい笑みを浮かべて、その後も叫び続けるアデューを振り返りもせずに去っていくのだった。
アデューは王族ゆえに受けていた特権を失なっただけでなく、その反動から普通の者としての権利さえ奪わた。
もともと、たった一人で治安維持を行うという超法規的組織の独立騎士団を立ち上げたアデューが法的根拠に縛られない拘束を受け続けているのは皮肉な末路だった。
…なんかこれは前話の後半にそのまま書いてもよかったかもですね。
次回は 076 解任です
次回で最終話となります。読んでくださった方ありがとうございました。




